【8月10日】日経平均1363円高で25日線突破、リクルートHDがストップ高

2026年8月10日(月) 東京市場クローズ
日経平均 66,970.22円 +1,363.51円 (+2.08%)

先週2日間の「深い下ヒゲ」が、週明けに答えを出しました。日経平均は1,363円51銭高の6万6,970円22銭と3営業日ぶりの大幅反発。前日終値より241円87銭高い水準で安値を付けた完全な窓開けで始まり、一度も埋めずにほぼ高値引けとなりました。2営業日にわたって跳ね返され続けた25日移動平均線6万5,857円76銭を1,112円46銭も上回って引けています。きっかけは米7月雇用統計の下振れ——雇用者数が前月比2.3万人の「減少」となり、早期利上げ観測が後退しました。もう一つの主役はリクルートホールディングスのストップ高(+22.79%)です。ただしTOPIXの上昇は0.63%にとどまり、値がさ株偏重の構図もはっきり戻りました。

本日の相場概況

8月10日の東京株式市場で日経平均株価は3営業日ぶりに大幅反発し、前営業日比1,363円51銭(2.08%)高の6万6,970円22銭で取引を終えました。終値は7月15日以来、約1か月ぶりの高値です。

本日の日足は、教科書のような大陽線になりました。寄り付きは6万5,905円10銭——前営業日終値6万5,606円71銭を298円39銭上回るスタートです。そして本日の安値6万5,848円58銭は、それでもなお前営業日終値の241円87銭上にありました。つまり日中に一度も前営業日終値を割り込んでいません。窓を開けて始まり、その窓を埋めることなく一日を終えたわけです。

高値は10時53分の6万7,006円84銭6万7,000円台の回復は約3週間ぶりでした。終値6万6,970円22銭は、この高値からわずか36円62銭下日中値幅1,158円26銭のうち実体が1,065円12銭で92%を占め、上ヒゲ36円62銭・下ヒゲ56円52銭という、ほぼ丸坊主の陽線です。先週6日・7日と2日続けて「深く売られて深く買い戻される」足が並んだあとの、迷いのない一本でした。

ただし、指数の中身は先週までと様子が違います。TOPIXは25.68ポイント(0.63%)高の4,100.61と5日続伸しましたが、日経平均の2.08%に対して上昇率は3分の1以下です。東証プライムで値上がりしたのは全体の58.8%、値下がりは38.7%——先週7日の約60%とほとんど変わりません。騰落銘柄数の比率は先週と同じなのに、指数だけが2%上がったのが本日の構図です。

その差を作ったのが値がさの半導体・AI関連でした。株探によるとアドバンテストとリクルートホールディングスの2銘柄だけで日経平均を約699円押し上げています。本日の上げ幅1,363円51銭の実に51%が、たった2銘柄によるものという計算です。NT倍率は16.10倍から16.33倍へ0.23ポイント上昇し、3営業日続いた低下が止まりました。

商いは先週末から大きく減っています。東証プライムの売買代金は約8兆388億円で、7日の約10兆8,960億円から2兆8,000億円以上減少しました。2%上げた日に、商いは3割近く細った——決算発表がピークを越え、材料の出尽くした銘柄が動かなくなったことの表れです。

主要マーケット指標

指標 数値 前日比
日経平均株価 66,970.22円 +1,363.51円 (+2.08%)
日経平均 高値 / 安値 67,006.84 / 65,848.58 始値 65,905.10円 (値幅1,158円)
TOPIX 4,100.61 +25.68 (+0.63%) 5日続伸
TOPIX 高値 / 安値 4,111.35 / 4,063.49 始値 4,078.80
NYダウ (8/7終値) 54,036.93 +151.83 (+0.28%)
S&P 500 (8/7終値) 7,757.64 +47.68 (+0.62%) 最高値
ナスダック総合 (8/7終値) 26,690.62 +342.26 (+1.29%)
SOX指数 (8/7終値) 12,356.79 +308.09 (+2.56%)
米ドル/円 158円46銭 +0円69銭 (+0.44%) 円安
東証プライム 売買代金 約8兆388億円 7日の約10兆8,960億円から約2兆8,570億円減少
東証プライム 売買高 約21億2,532万株 7日の約28億7,610万株から減少
東証プライム 値上がり/値下がり 58.8% / 38.7% 7日(約60% / 約37%)とほぼ同水準
業種別騰落 (33業種) 上昇18 / 下落15 7日は上昇22 / 下落11
上昇率トップ業種 サービス業 4,354.65 +9.38% (リクルートHDの寄与大)
下落率トップ業種 石油・石炭製品 2,730.45 -4.78% (7日の上昇率トップから反転)
米VIX指数 (8/7終値) 14.90 -0.25 (-1.65%) 低位で安定
NT倍率 16.33倍 前日16.10倍から0.23ポイント上昇
日経平均 52週高値からの距離 -5,861.51円 (-8.05%) 52週高値 72,831.73 (6/22)
TOPIX 52週高値からの距離 -37.01 (-0.90%) 52週高値 4,137.62 (7/7)
注記: 米国指数は日本時間10日時点で最新となる8月7日(金)の終値です。日経平均・TOPIXの終値・始値・高値・安値および個別銘柄の株価は株探の当日確定値、売買代金・売買高・騰落比率・業種別騰落は大引け時点の市場集計値によります。ドル円は東京時間17時前後の水準です。NT倍率は日経平均÷TOPIXの計算値です。テーブルの色は日本式表記(上昇=赤/下落=緑)に従っています。

マクロ・地政学の視点

本日の上昇は、ほぼ完全に外部要因の輸入でした。出発点は先週末7日の米7月雇用統計です。非農業部門雇用者数は前月比2万3,000人の「減少」——市場予想は増加でしたから、方向自体が逆でした。

この結果を、市場は「悪い数字」ではなく「金利が上がらない材料」として受け取りました。9月の利上げ観測が後退し、米金利が低下。金利低下はバリュエーションの高いハイテク株にとって最も分かりやすい追い風です。ナスダック総合は342.26ポイント(1.29%)高の2万6,690と3日ぶりに反発し、S&P500は47.68ポイント(0.62%)高の7,757.64で最高値を更新しました。NYダウも151.83ドル(0.28%)高の5万4,036ドル93セントと反発しています。

そして本日の東京市場にとって決定的だったのがSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の2.56%高308.09ポイント上昇の1万2,356.79です。先週7日の記事で「米国では半導体株が買われているのに東京では売られている」という乖離を指摘しましたが、本日その乖離は一気に埋まりました。アドバンテスト、東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック——先週売られた銘柄がそのまま買い戻されています。

為替も追い風でした。ドル円は158円46銭と、前営業日の157円77銭から69銭の円安。前場は158円20銭前後で推移し、大引けにかけてさらにドル高・円安方向に振れました。米利上げ観測の後退は本来ドル安要因ですが、日米金利差の水準そのものが依然大きく、円買いには向かわなかった形です。輸出企業の採算改善期待が、株買いを側面から支えました。

一方、金利低下は金融株には逆風として働いています。33業種のうち保険業と銀行業がそろって下落し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は1.52%安の3,510円でした。不動産業・建設業も安く、指数を押し上げた材料が、同じ日に別のセクターを押し下げたことになります。

もう一つ目を引いたのが石油・石炭製品の4.78%安です。この業種は先週7日には上昇率トップでした。原油高を材料に買われた銘柄が、わずか1営業日で下落率トップに転じています。資源関連から半導体・AI関連への資金の移動が、本日はかなり明確な形で起きました。市場心理が「守り」から「攻め」に切り替わったときに典型的に見られる動きです。

市場心理の指標も落ち着いています。米VIX指数は14.90と0.25ポイント(1.65%)低下し、15を割り込んで引けました。警戒水準とされる20を大きく下回っており、7月末の急落局面から市場は完全に平静を取り戻したと言える水準です。

セクター・個別銘柄の動き

買われたセクター・銘柄

上昇したのは18業種です。上昇率トップはサービス業で9.38%高の4,354.65——業種別指数が1日で9%動くのは異例です。精密機器、非鉄金属、鉱業も上位に入りました。

そのサービス業の上昇を、ほぼ一銘柄で作ったのがリクルートホールディングス(6098)です。3,000円高(22.79%高)の1万6,165円でストップ高。7日の取引終了後に発表した27年3月期第1四半期決算にあわせ、通期の業績予想を大幅に上方修正しました。売上高を4兆300億円から4兆2,300億円(前期比14.4%増)へ、最終利益を6,230億円から7,550億円(同51.9%増)へ引き上げています。米求人サイト「インディード」を含むHRテクノロジー部門が想定を上回って推移したことが理由です。最終利益を2割超も上積みする修正ですから、ストップ高は理屈の通った反応でした。

もう一方の主役がアドバンテスト(6857)の6.43%高(3万4,260円、2,070円高)です。高値引けで、日中は一度も失速しませんでした。先週7日には押し下げ寄与トップ(-178円61銭)だった銘柄が、1営業日で押し上げ役の筆頭に回ったことになります。東京エレクトロン(8035)は4.13%高(5万6,750円)、ディスコ(6146)は7.77%高(6万2,980円)。株探によればプラス寄与の上位はアドバンテスト、リクルートHD、東京エレクトロンの3銘柄でした。

先週の急落銘柄の戻りも印象的です。レーザーテック(6920)は5.69%高(3万9,590円、2,130円高)。7日に「増益見通しでも市場予想に届かない」という理由で13.55%下げた銘柄が、翌営業日には5%を超えて買い戻されましたフジクラ(5803)は7.62%高(5,580円)と2営業日続伸、古河電気工業(5801)は2.49%高(3,952円)ですが日中高値4,251円からは大きく押し戻されています。

電線・半導体以外にも買いは広がりました。テルモ(4543)が8.53%高(2,575円50銭)、NIPPON EXPRESSホールディングス(9147)が7.21%高(5,575円)、信越化学工業(4063)が2.78%高(6,286円)、TDK(6762)が1.91%高(3,045円)、ソニーグループ(6758)が1.16%高(3,764円)。決算を評価された銘柄が素直に買われる地合いでした。

売られたセクター・銘柄

下落したのは15業種です。下落率トップは石油・石炭製品の4.78%安、次いで保険業、不動産業、銀行業、建設業が並びました。金利低下の恩恵を受けにくい、あるいは金利低下が逆風になるセクターが下位に集中しています。

マイナス寄与の上位はKDDI、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリングの3銘柄でした(株式新聞)。KDDI(9433)は5.07%安(2,830円、151円安)。7日には2.76%高で押し上げ役だった銘柄が、本日は一転して5%安です。ディフェンシブ性の高い通信株から資金が抜け、リスクを取る側に回った——本日の相場の性格を最もよく表した動きと言えます。

同じ文脈でセコム(9735)が7.30%安(6,340円、499円安)と大きく下げました。日中高値6,796円から安値6,312円まで売られており、下げ幅は7%を超えますソフトバンクグループ(9984)は1.22%安(5,484円)、ファーストリテイリング(9983)は0.74%安(7万8,720円)。ファストリは下落率こそ小さいものの株価が高いため、指数への押し下げは相応にありました。

先週の急落銘柄では富士フイルムホールディングス(4901)が2.29%安(3,162円)と続落しています。7日に16.55%安となった銘柄が、全面高の日にも戻れなかった点は覚えておく価値があります。レーザーテックが5.69%戻したのと対照的で、市場は2つの急落を別物として扱っているということです。

主力の一角も動きませんでした。トヨタ自動車(7203)は1円高の2,981円で実質変わらず日立製作所(6501)は前日比0円の5,620円日経平均が1,363円上げた日に、日本を代表する製造業2社が動かなかった——本日の上昇が「相場全体の押し上げ」ではなく「特定セクターへの資金集中」だったことが、ここに端的に表れています。

テクニカル分析

トレンド

本日の日足は実体1,065円12銭の大陽線で、上ヒゲはわずか36円62銭、下ヒゲは56円52銭です。日中値幅1,158円26銭に対して実体が92%を占める、ほぼ丸坊主の陽線になりました。加えて安値6万5,848円58銭が前営業日終値6万5,606円71銭を241円87銭上回る——完全な窓(マド)を空けたまま埋めずに引けた形です。買い方の意思が明確に出た足型と言えます。

移動平均線との位置関係は、1日で大きく改善しました。最も重要なのが25日移動平均線6万5,857円76銭の突破です。7日終値はこの線の362円下にあり、2日続けて跳ね返されていました。本日の終値は1,112円46銭(1.69%)上——1営業日で1,474円ぶんの位置改善です。

他の線も軒並みクリアしました。5日移動平均線6万5,703円63銭を1,266円59銭上回り75日移動平均線6万5,417円93銭を1,552円29銭上回っています。7日には297円しかなかった75日線との距離が、5倍以上に広がりました13週移動平均線6万6,211円58銭も758円64銭上回り、これは7月中旬以来の回復です。200日移動平均線は5万7,499円97銭で、終値はこれを16.47%上回っています。短期・中期・長期のすべての線の上に立ったことになります。

一目均衡表では、雲の中に完全復帰しました。雲下限(先行スパン)は6万5,629円96銭で、終値はこれを1,340円26銭上回っています。7日には安値がこの水準を778円割り込む場面がありましたから、2営業日で状況は一変しました。ただし雲上限は6万8,999円19銭と、終値の2,028円97銭上にあります。本日の上昇をもってしても、まだ雲を抜けたわけではありません基準線6万5,416円75銭も上回り、転換線は6万3,727円87銭と大きく下に位置しています。

中期の位置も確認しておきます。本日終値は7月1日の終値7万474円96銭から3,504円74銭(4.97%)安で、7月29日の直近安値6万448円90銭からは6,521円32銭(10.79%)の戻りです。52週高値7万2,831円73銭(6月22日)までは5,861円51銭(8.05%)の距離があります。

サポートとレジスタンス

以下の水準は、確定日足から算出した8月10日終値時点の計算値です。

  • 第1サポート: 6万5,858円〜6万5,848円 — 25日移動平均線と本日の安値がわずか9円差で重なる帯です。終値の1,112円下。本日突破したばかりの線ですから、ここを終値で割り込むと「突破の失敗」と評価されます。
  • 第2サポート: 6万5,704円〜6万5,630円 — 5日移動平均線と一目均衡表の雲下限の帯です。さらに6万5,607円には前営業日終値(窓の下端)があり、6万5,607円〜6万5,704円は窓埋めラインとして意識されやすい水準になります。
  • 第3サポート: 6万5,418円〜6万5,417円 — 75日移動平均線と一目均衡表の基準線が1円差でほぼ完全に重なる帯です。終値の1,552円下。先週7日・6日と2日連続で下値を支えた実績のある、最も厚い節目です。
  • 第1レジスタンス: 6万6,212円 — 13週移動平均線。本日終値はすでにこの758円上にありますが、押し戻された場合の最初の受け皿にもなります。
  • 第2レジスタンス: 6万7,007円〜6万7,982円 — 本日の高値と25日ボリンジャーバンド+1σの帯です。終値の36円上〜1,011円上。本日の高値をすぐに上抜けるかどうかが、上昇の持続性を測る最初の物差しになります。
  • 第3レジスタンス: 6万8,999円 — 一目均衡表の雲上限。終値の2,029円上です。ここを終値で上抜けて初めて「雲を抜けた」と言えます。さらに上には7万105円(25日ボリンジャーバンド+2σ)が控えます。

オシレーターと移動平均

オシレーターは全面的に改善しました。MACDは-472.94、シグナルは-790.90で、ヒストグラムは+317.96。前営業日の+185.51から132.45も拡大しています。8月6日に成立したゴールデンクロスは3営業日連続で幅を広げました。MACD本体も-684.88から-472.94へ211.94改善しており、ゼロラインまで残り473ポイントです。ただし依然としてマイナス圏にあり、「下降局面からの底打ち」の段階であることは変わりません。

RSI(14日)は54.16で、前営業日の49.81から4.35ポイント上昇しました。2営業日ぶりに50を上抜けています。9日ベースは58.92。買われ過ぎとされる70にはまだ距離があり、上値余地は残っていると読める水準です。

一方、ストキャスティクスは明確な過熱圏に入りました。ファースト%K(9日)は99.44——理論上の上限100にほぼ張り付いています。前営業日の88.11から11.33ポイント上昇しました。スロー%D(9日)は88.58で、前営業日の79.99から8.59ポイント上昇し、買われ過ぎの目安80を明確に超えています。RSIが中立圏なのにストキャスティクスが天井圏という組み合わせは、「短期は過熱、中期はまだ余裕」という状態を示します。短期的な一服が入りやすい位置です。

NT倍率(日経平均÷TOPIX)は16.33倍で、前営業日の16.10倍から0.23ポイント上昇しました。3営業日続いた低下が止まり、4営業日ぶりの上昇です。値がさ半導体株の急騰がそのまま反映された形で、先週進んだ「歪みの是正」は本日でいったん巻き戻りました。

ボリンジャーバンドでは、25日ベースの中心線が6万5,857円76銭、+1σが6万7,981円51銭、+2σが7万105円27銭、-1σが6万3,734円01銭です。本日終値は中心線と+1σのほぼ中間にあります。バンドの内側にとどまっており、統計的な過熱感はまだ出ていません

なお、本項の移動平均線・一目均衡表・ボリンジャーバンド・RSI・ストキャスティクス・MACDの各数値は、確定日足から当サイトが算出した計算値です。オシレーター類および一目均衡表は算出方法(平滑化の手法や先行スパンのずらし方)によってチャートツールごとに表示値が異なる場合があり、推定であり確定値ではありません。売買判断にあたっては必ずご自身のチャートツールで実数値をご確認ください。

市場心理

本日の市場心理を一言で表すなら「安心して攻めた日」です。ただし、その「攻め」にははっきりした偏りがありました。

まず、安心の根拠は明確です。米雇用統計が下振れて利上げ観測が後退し、S&P500は最高値を更新、SOX指数は2.56%高VIXは15を割り込み、外部環境に不安材料が見当たりませんでした。加えて先週2日続けて6万5,400円前後で下値が支えられた実績があります。「下は堅い」と「上は追い風」が同時に揃ったのが本日でした。窓を開けて始まり、一度も埋めずに高値引け——この足型は、押し目を待った投資家が結局買えなかった一日だったことを意味します。

しかし、偏りも見逃せません。日経平均が2.08%上げた一方でTOPIXは0.63%値上がり銘柄の比率は58.8%と先週7日の約60%からむしろ低下しています。そしてアドバンテストとリクルートHDの2銘柄だけで上げ幅の51%トヨタは1円高、日立は変わらずでした。「相場全体が上がった」のではなく「一部の値がさ株が急騰した」——これが本日の正確な描写です。

商いの減少も、この見立てを裏づけます。売買代金は7日の約10兆8,960億円から約8兆388億円へ、2兆8,000億円以上減りました指数が2%上げた日に商いが3割近く細るのは、買い手の裾野が広がっていないことの表れです。決算発表が一巡し、材料の出た銘柄だけが動く局面に入りました。

興味深いのはディフェンシブ株の売られ方です。KDDIが5.07%安、セコムが7.30%安。どちらも業績が急変したわけではありません。リスクを取る側に資金を移すために、守りの資産が現金化された——教科書どおりのリスクオンの動きです。ただし裏を返せば、新規の資金が入ったのではなく、既存の資金が場所を移しただけとも読めます。売買代金が減ったことと整合します。

本日、記憶しておくべき数字を挙げるなら「2.08%と0.63%」でしょう。日経平均とTOPIXの上昇率です。3倍を超える差があります。ニュースの見出しは「日経平均1,363円高」と報じますが、TOPIX連動型の資産を持つ投資家の実感は0.63%です。指数の華やかさと、自分の資産の変動率は別物——先週7日とは逆向きに、同じ教訓が繰り返されました

翌営業日の注目ポイント

カレンダー(重要): 明日8月11日(火)は「山の日」で、東京市場の現物取引は休場です。本日8月10日(月)の翌営業日は8月12日(水)になります。つまり本日の大陽線を受けた最初の売買は、中1日空けた12日ということです。その間、11日の米国市場は通常どおり動きますから、12日の東京市場は海外1営業日ぶんの材料をまとめて織り込むスタートになります。さらに12日には米7月消費者物価指数(CPI)が発表予定(日本時間では12日夜)で、東京市場の大引け後です。加えて今週後半は13日〜16日のお盆期間にあたり、参加者の減少で値動きが荒くなりやすい点にもご留意ください。本日ポジションを増やした方は、「休場をはさんで動かせない1日がある」ことを前提に持ち高を点検しておくことをおすすめします。
  • 25日線6万5,858円を終値で維持できるか — 本日1,112円上回って突破した最重要ラインです。本日の安値6万5,848円がこの線とわずか9円差にあり、ここを終値で割り込めば「だまし」となります。逆に上に張り付けば、7月中旬から続いた下落トレンドの転換が確定に近づきます。
  • 窓(6万5,607円〜6万5,905円)を埋めに来るか — 本日開けた298円39銭の窓です。窓を空けたまま上昇が続けば「上放れ」数日内に埋めれば一過性の急騰と評価が分かれます。中1日空くぶん、12日の寄り付きがどちらに窓を開けるかが最初のヒントになります。
  • 米7月CPI(12日発表予定) — 本日の上昇の起点は「雇用統計下振れ→利上げ観測後退」でした。CPIが上振れれば、この前提そのものが崩れます。逆に落ち着けば、金利低下・ハイテク株高の流れが継続しやすくなります。東京市場が結果を織り込むのは13日(木)です。
  • 11日の米国市場、特にSOX指数 — 東京が休場のあいだに動きます。SOXは7日に2.56%高と急伸しており、この勢いが続くか一服するかで12日の東京の半導体株の初動が決まります。本日の上昇の大半が半導体・AI関連によるものだった以上、ここが最大の変数です。
  • ストキャスティクスの過熱ファースト%Kが99.44、スロー%Dが88.58と明確な買われ過ぎ圏です。短期的な一服・調整が入りやすい位置にあります。ただしRSI(14日)は54.16と中立圏で、中期の余地はまだ残っています。この2つのズレをどう読むかが、12日以降の判断の分かれ目です。
  • リクルートHD(6098)のストップ高の続き — 上方修正を受けた22.79%高です。12日に買い気配で始まるようなら、上方修正の織り込みはまだ途中。逆に利益確定売りに押されれば、サービス業指数の9.38%高も一過性だったことになります。単独でTOPIXのサービス業指数を9%動かした銘柄ですから、影響は小さくありません。
  • NT倍率16.33倍の行方 — 4営業日ぶりに上昇しました。この上昇が続くなら日経平均連動型、反落するならTOPIX連動型が優位になりやすい地合いです。本日は日経平均が2.08%、TOPIXが0.63%——ご自身の保有資産がどちら寄りかで、体感はまったく変わります。
  • ドル円158円台の方向 — 本日は158円46銭と円安方向に振れました。CPIの結果次第では大きく動きます。円安は輸出企業の追い風ですが、160円に近づけば介入警戒が高まる水準でもあります。

戦略展望

本日最も重要な事実は、先週2日間かけて確認した下値の堅さが、正しかったと証明されたことです。6日は741円の下ヒゲ、7日は955円の下ヒゲ。6万5,400円前後(75日線・一目均衡表の基準線)で買い手が待っていたという読みは、本日の1,363円高で裏づけられました。長い下ヒゲは「売られた事実」ではなく「買い戻された事実」を示す——先週の記事で書いたとおりの展開です。

テクニカル面では、ほぼすべての指標が改善しました。25日線を1,112円上回って突破し、5日線・75日線・13週線・200日線のすべてを上回っています。MACDのヒストグラムは3営業日連続で拡大し、RSIは2営業日ぶりに50を回復。一目均衡表でも雲の中に完全復帰しました。短期のトレンドは、明確に上向きに転じたと評価してよい状態です。

ただし、慎重に見るべき点が3つあります。第一にストキャスティクスの過熱です。ファースト%Kは99.44と、これ以上ないほど上限に近い水準にあります。短期の反動が出やすい位置です。第二に雲上限6万8,999円がまだ2,029円上にあること。本日の大陽線をもってしても、中期のトレンド転換を語るには早すぎます。第三に買い手の裾野の狭さ——2銘柄で上げ幅の51%、売買代金は3割近く減少、値上がり銘柄比率はむしろ低下しました。

投資判断の観点では、本日は「乗り遅れた人が最も焦る形」でした。窓を開けて始まり、押し目を作らず、高値引け。買いたい水準まで下がってこなかった一日です。こういう日の翌営業日に慌てて飛び乗ると、高値づかみになりやすいことは経験則として知られています。しかも今回は、次の売買まで中1日空きます11日の海外市場の動きを見てから判断できる——これは急かされないという意味で、むしろ有利な条件です。

リスク側で最も注意すべきは、本日の上昇の前提が「米利上げ観測の後退」という一点に集約されていることです。12日の米7月CPIが上振れれば、この前提は直ちに揺らぎます。半導体・AI関連は金利感応度が高く、金利が戻れば真っ先に売られる側です。本日買われた銘柄の多くは、「業績が良くなったから買われた」のではなく「金利が下がったから買われた」——リクルートHDのような明確な業績材料を持つ銘柄とは、性質が異なります。

最後に、いつもの確認です。本日、日経平均は2.08%上昇しました。しかしTOPIXは0.63%です。値上がり銘柄は全体の58.8%にとどまり、トヨタは1円高、日立は変わらずでした。指数の数字ではなく、自分の資産の実際の変動率で相場を測る——先週7日は「日経平均は下がったのにTOPIXは上がった日」、本日は「日経平均だけが大きく上がった日」でした。方向は逆でも、教訓は同じです。

チャート

日経225 (INDEX:NKY)

米ドル/円 (FX:USDJPY)

S&P 500 (FOREXCOM:SPXUSD)

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