① 先週末の日本市場の動向(8/7)
先週末7日(金)の東京市場は小幅に続落しました。日経平均は前日比76円55銭安(-0.12%)の65,606円71銭。始値65,746円13銭で寄り付いた後、ザラ場では64,651円49銭まで約1,100円幅の下落を演じましたが、そこから終値までを955円戻して引けています。高値は65,990円72銭、売買高は28億7,610万株でした。一方でTOPIXは19.08ポイント高(+0.47%)の4,074.93と上昇しており、日経とTOPIXで方向が分かれた一日です。日経を押し下げたのがAI・半導体などの値がさ株、TOPIXを押し上げたのが素材・内需といった構図が透けて見えます。
週間では日経平均が1,244円69銭高(+1.93%)と2週ぶりの反発となりました。前週末終値は64,362円02銭です。週間の値幅は8月3日(月)のザラ場安値62,703円47銭から8月5日(水)のザラ場高値66,302円52銭までの3,599円。7月最終週の4,915円からは縮小したものの、依然として1週間で5%超が動く水準にあります。TOPIXも4,003.30から4,074.93へ+71.63ポイント(+1.79%)と上昇し、日経とほぼ同じ上昇率で足並みをそろえました。「値がさ数銘柄だけが動いた週」だった7月末とは対照的に、先週は上昇の裾野がはっきり広がった週だったと整理できます。
週の流れを日ごとに追うと、月曜3日は日米の円買い協調介入を受けてのスタートとなり、5月上旬以来の円高進行を嫌気して売りが優勢、-607円12銭(-0.94%)で終えました。前週末にかけて+2,494円と急騰した反動も出た格好です。火曜4日は+202円63銭と小反発。そして水曜5日、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が6%超高となり、韓国市場の株高も追い風となって+2,342円91銭(+3.66%)の大幅高、2週間ぶりに66,000円台を回復しました。ところが木曜6日は米サンディスクの決算発表後の株安をきっかけにAI・半導体株へ戻り売り圧力が再燃し-617円18銭、金曜7日も-76円55銭と続落しています。
この週の特徴は「上値は25日移動平均線に抑えられ、下値には毎日買いが入る」という綱引きが繰り返されたことです。日中安値から終値までの戻り幅は3日が1,051円、4日が1,093円、6日が741円、7日が955円。4営業日連続で700円超の下ヒゲを引いており、押し目買い意欲の強さがはっきりと出ています。一方、週後半の日経平均は25日移動平均線(6日時点で66,093円、7日時点で65,968円72銭)に頭を押さえられました。上に25日線、下に押し目買いという挟み撃ちのなかで週を終えた、というのが先週の東京市場の実像です。
セクター別では、東証33業種のうち23業種が上昇、10業種が下落しました。値上がり率トップは非鉄金属の+10.71%で、これは後述する金・銀の急騰と直結した動きです。2位は繊維製品の+9.33%、3位はその他製品の+5.46%と続きます。一方で最下位は陸運業の-3.14%、次いで鉱業-2.97%、倉庫・運輸-2.58%と、内需ディフェンシブや資源掘削系が売られました。以下は東証33業種指数の7月31日終値から8月7日終値までの騰落率です。
| セクター(東証33業種) | 週間騰落率 | コメント |
|---|---|---|
| 非鉄金属 | +10.71% | 33業種で最上位。金・銀の急騰が直撃した最大の受益セクター |
| 繊維製品 | +9.33% | 決算を手掛かりにした個別物色が集中 |
| その他製品 | +5.46% | 任天堂・バンダイナムコなどエンタメ系の決算評価 |
| 鉄鋼 | +4.26% | 素材市況の改善期待。低PBR銘柄への見直し買いも |
| 医薬品 | +3.83% | ディフェンシブながら決算好調組に資金流入 |
| 精密機器 | +3.77% | オムロンなどの決算評価。半導体関連の一角も |
| 化学 | +3.75% | 住友ベークライト・日本触媒・ADEKAなどが牽引 |
| 情報・通信業 | +3.33% | メルカリなど。AI・半導体以外への物色分散を象徴 |
| 電気機器 | +1.43% | ルネサス・イビデンは高いがメモリー関連は軟調で伸び悩み |
| 電気・ガス業 | -1.58% | 金利上昇に弱い高配当ディフェンシブが売られる |
| 不動産業 | -1.76% | 日銀の9月追加利上げ観測が重し |
| 倉庫・運輸関連 | -2.58% | 内需のなかでも資金が抜けやすい業種 |
| 鉱業 | -2.97% | WTI原油の下落を受けて資源掘削系が下落 |
| 陸運業 | -3.14% | 33業種で最下位。金利上昇と内需離れが重なる |
※週間騰落率は東証33業種指数の2026年7月31日終値から8月7日終値までの変化率(株探の業種別指数日足より算出)。上位9業種と下位5業種を抜粋しています。
② 米国市場の動向(8/7)
同じ7日(金)の米国市場は主要3指数がそろって上昇しました。ダウ工業株30種平均は151.83ドル高(+0.28%)の54,036.93ドルと反発。S&P500は47.68ポイント高(+0.61%)の7,757.64、ナスダック総合は342.26ポイント高(+1.29%)の26,690.61と、指数の性格どおりハイテク寄りほど上げ幅が大きい並びになりました。ナスダック100は348.97ポイント高(+1.19%)の29,722.30です。
上昇のきっかけは同日発表の7月米雇用統計でした。非農業部門雇用者数が市場予想の+8.0万人に反して減少し、労働市場の急速な悪化が示されたのです。これを受けて行き過ぎた早期利上げ観測が急速に後退し、長期金利が低下。金利低下を好感したハイテク株が指数を押し上げました。米10年債利回りは4.660%まで低下しています。7月31日に4.74%のピークを付けてから、じりじりと水準を切り下げてきた流れです。
半導体も戻りました。SOX指数は308.09ポイント高(+2.56%)の12,356.78。同指数は金曜に25日移動平均線の水準を上抜けており、AI・半導体株の短期的な売られ過ぎ感は解消したとみられます。ただしメモリー株は同日も軟調で、過剰投資への警戒感や株価の過熱感まで消えたとは言い切れません。恐怖指数(VIX)は0.25ポイント安(-1.65%)の14.90と、15を割り込む低水準で週を終えました。
週間ベースで見ると、先週の米国株の強さは際立っています。ダウは+2.96%、S&P500は+3.58%、ナスダック総合は+5.19%、ナスダック100は+5.12%。そしてSOX指数は週間+9.24%(11,311.07→12,356.78)と、前週の-4.30%から完全に切り返しました。VIXは15.86から14.90へ週間-6.05%です。株式評論家の富田隆弥氏によれば、NYダウは8月5日に史上最高値を5万4,744ドルまで伸ばし、同じ日にドイツDAX指数も2万6,403ポイントの最高値を付けています。米欧が最高値を更新するなかで、年初来高値から約1割下にいる日本株の出遅れが際立つ構図です。
なお、今回の4-6月期決算ではハイテク銘柄の9割が市場予想を上回ったとされています。決算シーズンが一巡したことは安心材料である一方、目先の材料難につながるという側面も持ちます。半導体製造装置最大手のアプライド・マテリアルズが13日に決算を控えており、ここが今週の半導体関連の変動要因になりそうです。
③ 時間外取引・サンデーダウ・サンデーナスダックの状況
週末の時間外(先物)市場は、米国株・日本株ともに現物を上回る水準で週を終えました。サンデーダウ(ダウ先物)は54,152ドル。金曜の現物終値54,036.93ドルに対して約+115ドル(+0.21%)です。サンデーナスダック(ナスダック100先物)は29,834.75でナスダック100比+112ポイント(+0.38%)、S&P500先物(Eミニ)は7,779.75で現物比+0.29%。いずれも小幅高で、雇用統計を消化した後も買いの流れが途切れていないことを示しています。
そして今週の見通しを考えるうえで最も重要なのが日経先物です。大阪取引所ナイトセッションの日経225先物(9月限)は66,310円で、日中終値比650円高。金曜の現物終値65,606円71銭と比べると703円高(+1.07%)の水準にあります。ミニ9月限は66,295円、CME日経平均先物(NKD)は66,345円で、いずれも66,300円前後に収れんしています。2週間前は先物が現物を1,400円下回るという逆の状況でしたが、今週は逆に700円の上方乖離を抱えて週明けを迎えます。
つまり月曜の寄り付きは、金曜終値65,607円ではなく66,300円前後からのスタートというのが現時点の市場の見立てです。これは25日移動平均線65,968円72銭を上に抜けた水準にあたり、先週ずっと上値を抑えられてきた関門をいきなり突破して始まる計算になります。窓を開けて始まった後にそこを維持できるかどうかが、今週の最初の焦点です。
為替は落ち着いています。ドル円は7日のNY市場で157円78銭。前週末の157円58銭からは20銭の円安にとどまり、7月末の協調介入以降は155円台〜158円台のレンジ内で膠着しています。円高が一段と進めば輸出企業の採算に響きますが、いまのところ先物が上方に乖離していることからも、市場は当面この水準を許容していると読めます。下表・下図では、まず金曜終値の通常指標(ダウ・S&P500・ナスダック)を示し、その後に時間外のサンデーダウ・サンデーナスダック等の先物、続いてVIX・為替・商品などの指標を並べています。
| 指標 | 水準 | 変化 | コメント |
|---|---|---|---|
| ダウ平均(金終値) | 54,036.93ドル | +0.28% | 反発。8/5には史上最高値を更新。週間+2.96% |
| S&P500(金終値) | 7,757.64 | +0.61% | 続伸で最高値圏を維持。週間+3.58% |
| ナスダック総合(金終値) | 26,690.61 | +1.29% | 雇用統計の下振れで金利低下。ハイテク主導で週間+5.19% |
| サンデーダウ(ダウ先物) | 54,152ドル | ダウ比 +0.21% | 現物を約115ドル上回る。買いの流れは途切れず |
| サンデーナスダック(NQ) | 29,834.75 | NQ100比 +0.38% | 半導体の戻り基調が時間外でも継続 |
| S&P500先物(Eミニ) | 7,779.75 | 指数比 +0.29% | 現物をやや上回る水準で週末を通過 |
| 日経225先物(大取ナイト) | 66,310円 | 現物比 +1.07% | 日中終値比+650円。CME先物は66,345円 |
| VIX(恐怖指数) | 14.90 | -1.65% | 15割れの低水準。週間-6.05%と警戒感は後退 |
| ドル円 | 157.78円 | 週間 +0.20円 | 協調介入後は155〜158円のレンジで膠着 |
| WTI原油(NY終値) | 78.18ドル | 週間 -7.67% | ホルムズ海峡の再開観測で70ドル台後半へ低下 |
| 金(NY終値) | 4,340.70ドル | 週間 +7.20% | 急騰。時間外では4,400ドル近辺まで水準を切り上げ |
| 銀(NY終値) | 63.33ドル | 週間 +9.97% | 金以上の急騰。非鉄金属セクター+10.71%の背景 |
| 米10年債利回り | 4.660% | -8bp | 雇用統計の下振れで低下。7/31の4.74%がピーク |
| BTC/USD | 64,758ドル | 週間 +0.25% | 6.4万ドル台で小動き。株高への追随は限定的 |
| 日経225(金終値) | 65,606.71円 | -0.12% | 小反落。ただし週間は+1,244円(+1.93%)と2週ぶり反発 |
※サンデーダウ・サンデーナスダック等は金曜の時間外取引終了時点(米東部時間17時)の値であり、週明けの実際の寄り値とは乖離する可能性があります。日経225先物は大阪取引所ナイトセッション(9月限)終値。金・銀はCOMEXの8月7日日足終値で、時間外の最終取引値とは差があります。

④ 週末の国際情勢ハイライト
| 項目 | リスクレベル | 状況・影響 |
|---|---|---|
| 中東(ホルムズ海峡) | 中〜高 | 再開協議に進展も、イランは阻止法を推進。原油は70ドル台後半へ低下 |
| 為替介入 | 高 | 7/31に日米協調介入。お盆期間の再介入も思惑視される |
| 米Fed(ウォーシュ議長) | 中〜高 | インフレ指標が強ければ利上げ用意。雇用統計下振れで警戒は後退 |
| 日銀 | 中〜高 | 協調介入を受け9月の追加利上げ観測が上昇。8/10に「主な意見」 |
| 米インフレ指標 | 高 | 12日にCPI、13日にPPI。上振れなら米国株安の公算 |
| 貴金属市況 | 中 | 金+7.20%、銀+9.97%の急騰。非鉄金属セクターを押し上げ |
■ 中東・ホルムズ海峡
中東情勢は依然として読みにくい状態が続いています。ホルムズ海峡を巡る協議には進展があり、近く海峡が再開される可能性があるとの米国当局者の見方が伝わりました。その一方で、イランが米国船舶のホルムズ海峡通過を阻止する法律を推進しているとの報道もあり、方向は定まっていません。ただしケイン統合参謀本部議長が出口戦略を模索する必要があるとトランプ政権幹部らに訴えているとも報じられており、いずれ事態は沈静化に向かう可能性が高いとみられています。
原油はこの再開観測に素直に反応しました。WTI原油は8月7日のNY終値で78.18ドル。前週末の84.67ドルから週間-7.67%の下落です。週中には75ドル台まで下げる場面もありました。7月中旬には92ドル台を付けていたことを思えば、大きな水準訂正です。原油が70ドル台にとどまる限り、目先は株式市場の波乱要因にはなりにくいと考えられます。逆に言えば、ホルムズ海峡の話が再びこじれた場合には、原油高→インフレ再燃→金利上昇という連鎖が復活するリスクは残ります。国内では鉱業セクターが週間-2.97%と下位に沈んでおり、原油安の影響がすでに出ています。
■ 為替介入とドル円
7月末の出来事の整理から始めます。7月31日、日米両政府が円買いの為替協調介入を実施したと正式に発表しました。政府が介入について具体的に言及するのは異例で、両国が過度な円安を阻止するスタンスを明確に打ち出した形です。ドル円はわずか4営業日で164円近くから155円前半まで下値を切り下げ、8月3日には155円21銭まで下落しました。これは4月末の介入時安値155円03銭にあと18銭という水準です。
その後は急落の反動で買い戻しが入り、原油高や米長期金利の高止まりを支えにじり高となって、7日には158円39銭まで戻す場面もありました。しかし同日の米雇用統計を受けて金利差縮小観測が浮上し、156円68銭まで急反落した後、157円78銭で週の取引を終えています。介入警戒と金利差縮小観測が交錯した、値幅の大きい一週間でした。
今週については、介入後のドル円の戻りが限定的にとどまっている点が重要です。市場参加者が減少するお盆休み期間での再度の介入も思惑視されており、当面は円の上値を探る動きになりやすい。国内株式市場にとっては、上値を抑制する要因として意識しておく必要があります。フィスコは今週のドル円予想レンジを155円00銭〜160円00銭としています。
■ 米Fed(ウォーシュ議長)とインフレ指標
先週の相場を動かした最大の材料は金融政策の見通しでした。直近の報道では、ウォーシュFRB議長が「今後数週間のうちに公表されるインフレ指標が強い内容となり、市場で利上げ観測が強まれば、政策金利を引き上げる用意がある」と発言したと伝わっており、今週予定される消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)への警戒感が高まっていました。
ところが7日の雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外に減少したことで、この構図は大きく変わりました。いくらインフレを重視するとはいえ、労働市場が急速に悪化している局面で早期利上げに踏み切るハードルは上がります。過度な懸念は大きく後退し、株式市場の先行きに対する安心感は強まっているという評価です。フィスコによれば、12日発表の米7月CPIは前年比+3.4%(6月+3.5%)、コア指数は同+2.5%(同+2.6%)と伸びがやや鈍化する見通し。想定通りならドル買いを弱める材料になります。
■ 日銀と9月利上げ観測
今回の協調介入実施を受けて、9月の日銀金融政策決定会合における追加利上げの実施可能性は高まったとの見方が広がっています。円安是正を国際的に約束した以上、金融政策の側からも円を支える必要が出てくるという理屈です。今週は8月10日(月)の朝に7月30〜31日開催分の「主な意見」が公表されます。政策委員がどの程度まで踏み込んだ議論をしていたかを確認する材料であり、タカ派的な内容であれば金利上昇・銀行株高・不動産株安という反応が出やすい局面です。実際、先週の東証33業種では不動産業が-1.76%、電気・ガス業が-1.58%と、金利上昇に弱いセクターがすでに売られています。
■ 金・銀の急騰と非鉄金属セクター
先週の見落とせない動きが貴金属です。NY金は8月7日終値で4,340.70ドル、週間+7.20%。時間外では4,400ドル近辺まで水準を切り上げました。銀はさらに強く、63.33ドルで週間+9.97%です。米雇用統計の下振れによる金利低下と、協調介入が示した通貨政策の不確実性が、実物資産への資金シフトを促した格好です。
この動きは日本株にもそのまま波及しました。東証33業種で値上がり率トップとなった非鉄金属の+10.71%は、この貴金属高が直接の背景です。今週は住友金属鉱山の決算が予定されており、市況高がどこまで業績に織り込まれるかが注目されます。なお、ウクライナ情勢と米中通商協議については、今週末の一次ソースに新規の材料が確認できなかったため本稿では扱っていません。
⑤ 今週(8/10〜8/14)の日本市場の見通し
以上を踏まえた今週の東京市場の見通しです。まず前提として、8月11日(火)は山の日の祝日で東京市場は休場です。したがって今週の取引は10日(月)・12日(水)・13日(木)・14日(金)の4営業日となります。注意したいのは米国市場は11日も通常取引を行う点で、11日のニューヨークで大きな動きがあれば、12日(水)の東京市場は寄り付きで一気に織り込むことになります。水曜寄り付きの窓リスクは今週特有の論点です。加えて14日(金)はオプションSQ算出日にあたり、週末にかけては需給主導の振れが出やすくなります。
テクニカル面を確認します。金曜終値65,606円71銭は5日移動平均65,060円57銭と75日移動平均65,309円32銭を上回り、25日移動平均65,968円72銭のわずか下という位置です。25日線との差はわずか362円しかありません。200日移動平均は57,399円36銭とはるか下方にあり、長期の上昇トレンド自体は崩れていません。年初来高値は6月22日の72,831円73銭で、そこからの下落率は約9.9%。年初来安値は3月31日の50,558円91銭です。ボリンジャーバンドは+1σが68,262円88銭、-1σが63,674円56銭となっています。
ただし、今週の起点として実質的に効くのは金曜終値ではなく大取ナイトセッションの66,310円です。この水準はCME先物66,345円、8月5日のザラ場高値66,302円52銭とほぼ完全に重なっており、複数の指標が「週明けの基準は66,300円前後」という同じ答えを示しています。しかもこの水準は25日移動平均線65,968円72銭の上にあります。先週ずっと頭を押さえてきた25日線を、週明けは窓を開けて上抜いた状態でスタートする計算です。
以上から、金曜終値65,607円を起点に、上値想定67,200円(+2.4%)/基本シナリオ66,300円(+1.1%)/下値想定63,800円(-2.8%)を今週の想定レンジとします。金曜終値基準では下方向に厚く見えますが、これは先物が示す月曜寄り付き想定66,300円を起点に置き直すと+1.4%・-3.8%となり、なお下方に重心を置いた設定です。米CPI(12日)・PPI(13日)の上振れリスクを下方バンドに配分した結果と考えてください。なお参考までに、フィスコの今週の日経平均予想レンジは下限63,000円〜上限68,000円とされています。

■ 上値想定 67,200円:出遅れ修正シナリオ
上値のメドを67,200円に置く根拠は、日経225先物のピボット分析でS2(第2上値抵抗)が67,223円にあること、そして7月23日のザラ場高値67,022円37銭がその手前に位置していることです。この67,000〜67,200円のゾーンは7月下旬に何度も上値を抑えられた価格帯であり、突破できるかどうかが「調整終了」を判定する分水嶺になります。さらに上には7月22日のザラ場高値67,592円20銭、ボリンジャーバンド+1σの68,262円88銭が控えています。
このシナリオを支える材料は明確です。第一に米欧株の最高値更新に対する日本株の出遅れ。NYダウが8月5日に5万4,744ドル、DAXが2万6,403ポイントとそろって最高値を更新したのに対し、日経平均は年初来高値から約1割下にいます。この差は放置されにくい。第二にSOX指数が25日線を上抜けたことで、AI・半導体の売られ過ぎ状態が解消し、日本の半導体関連にも戻りの余地が生まれています。第三に4-6月期決算の内容が総じて良好だったこと。上期・通期の業績予想を上方修正する企業が相次いでおり、業績面の下支えは効いています。
実現の条件は、①12日の米CPIが予想通り前年比+3.4%程度まで鈍化し、利上げ観測が再燃しないこと、②ドル円が157円台を維持し追加の円高が進まないこと、③13日のアプライド・マテリアルズ決算が半導体関連の追い風になること、の3点です。
■ 下値想定 63,800円:インフレ指標上振れシナリオ
下値のメドは日経225先物のピボットB2(第2下値支持)63,843円とボリンジャーバンド-1σの63,674円56銭が重なるゾーンに置きます。ここに至るまでには二つの関門があります。手前にあるのが25日移動平均線65,968円72銭、その下が先物ピボットB1の64,696円と8月7日のザラ場安値64,651円49銭が重なる64,650〜64,700円のゾーンです。先週の東京市場が4営業日連続で下ヒゲを引いた事実を踏まえれば、この64,700円近辺は押し目買いが厚い水準とみておくのが妥当でしょう。
警戒すべきシナリオは主に三つです。第一に米CPI・PPIの上振れ。ウォーシュFRB議長が「インフレ指標が強く、市場で利上げ観測が強まれば政策金利を引き上げる用意がある」と明言している以上、指標の上振れはそのまま米国株安につながる公算が大きい状況です。しかも東京市場は11日が休場のため、12日夜のCPIの結果を13日(木)の寄り付きでまとめて織り込むことになります。第二に追加の円買い介入で、参加者が減るお盆期間はむしろ介入の効きが良い時期でもあります。第三にメモリー株の弱さ。SOX指数が反発した金曜もメモリー関連は軟調で、過剰投資への警戒感が完全には消えていません。AI・半導体の上値が重ければ指数全体の上値も抑制されます。
加えて、14日のオプションSQに絡む需給の振れも下方向のリスクになり得ます。お盆休みで機関投資家の売買ボリュームが低下するなかでのSQは、少ない出来高で価格が振らされやすい組み合わせです。
■ 基本シナリオ 66,300円:25日線奪回後のもみ合い
最も可能性が高いとみるのが、66,300円前後を中心としたもみ合いです。すでに述べた通り、大取ナイトセッション66,310円、CME先物66,345円、8月5日のザラ場高値66,302円52銭という三つの水準がこの価格帯に集中しています。ここは25日移動平均線65,968円72銭のすぐ上でもあり、テクニカル的に意識されやすい位置です。
展開のイメージは、月曜に現物終値から約700円の窓を開けて上昇してスタートし、25日線を上抜けた状態を維持できるかを確認する、というものです。火曜は休場、水曜は米CPIの発表当日で、東京の日中は結果を待つ様子見になりやすい。木曜はCPIの結果を寄り付きで織り込む一日となり、ここが今週最大の変動ポイントです。金曜はSQと米小売売上高を控え、需給主導の動きになります。
物色面では、AI・半導体関連への一極集中が沈静化し、物色の裾野が広がる展開が想定されます。先週の東証33業種で23業種が上昇し、非鉄金属・繊維製品・その他製品・鉄鋼・医薬品といった非ハイテクが上位を占めたのは、その予兆と読めます。主力企業の決算発表は先週までで大方一巡しており、ここからは決算内容を吟味した選別物色が優勢となりそうです。今週の国内決算は損害保険各社のほか、住友金属鉱山、アシックス、荏原、楽天グループ、東京海上などが予定されています。またお盆休みは個人投資家の影響度が強まる時期でもあり、低位株や材料株に突飛高・乱高下が出やすい点は頭に入れておきたいところです。
■ 今週の注目イベント
- 8/10(月):日銀金融政策決定会合の「主な意見」(7/30〜31開催分、8:50)、6月国際収支(8:50)、月間対外及び対内証券売買契約等の状況、7月景気ウォッチャー調査(14:00)。シンガポール・南アフリカ市場休場。米決算はファーガソン・エンタープライゼス。
- 8/11(火):国内市場休場(山の日)。米7月中古住宅販売件数(23:00)、豪州準備銀行(RBA)が政策金利を発表、米3年国債入札。米決算はコアウィーブ、スーパー・マイクロ・コンピューター。日本が休みの間に米国が動く点に注意。
- 8/12(水):7月マネーストックM2(8:50)、7月工作機械受注(15:00)、10年物価連動国債入札、米国7月消費者物価指数(CPI、21:30)、米7月月次財政収支、米10年国債入札。海外決算はテンセント。タイ市場休場。
- 8/13(木):7月国内企業物価(8:50)、英4-6月期GDP(15:00)、ユーロ圏6月鉱工業生産(18:00)、米国7月生産者物価指数(PPI、21:30)、米新規失業保険申請件数、米30年国債入札。米決算はアプライド・マテリアルズ、タペストリー。日経225先物・オプションの最終売買日。
- 8/14(金):オプションSQ算出日、週間対外及び対内証券売買契約等の状況(8:50)、7月投信概況(15:00)、ユーロ圏4-6月期GDP改定値、米国7月小売売上高(21:30)、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数(23:00)、米6月企業在庫。
- 今週の国内決算:損害保険各社、住友金属鉱山、アシックス、荏原、楽天グループ、東京海上ホールディングスなど。主力の決算発表は先週までで大方一巡しています。
- 通期の変動要因:米CPI・PPIの結果、ドル円155〜158円レンジからの放れ、お盆期間の追加介入警戒、ホルムズ海峡再開協議の行方、金・銀の高値持続。8月15日(土)は終戦の日です。
■ 戦略・スタンス
今週は「窓開け上昇に飛びつかず、25日線の攻防を見極める」を基本スタンスとします。先物が現物を700円上回っている以上、月曜は上に窓を開けて始まる公算が大きい。しかしそこは先週ずっと頭を押さえられてきた25日移動平均線65,968円のすぐ上であり、寄り付き直後の高値がその日の高値になるパターンは先週すでに何度も見た形です。まずは66,300円前後で寄り付いた後、25日線を終値で上回った状態を維持できるかを確認するのが順序として正しい対応でしょう。
具体的な組み立ては次の4点です。①AI・半導体関連は13日のアプライド・マテリアルズ決算を確認してから。SOX指数が25日線を回復したとはいえ、メモリー株の弱さは続いています。②非鉄金属・素材は貴金属市況が支え。金+7.20%・銀+9.97%という週間の動きは一過性とは言い切れず、住友金属鉱山の決算がひとつの試金石になります。③金利敏感セクターは日銀の「主な意見」次第。10日朝の公表内容がタカ派なら銀行株が買われ、不動産・電気ガスなど高配当ディフェンシブが売られる展開になりやすい。④SQ週の需給には逆らわない。お盆で薄商いのなかのSQは、ファンダメンタルズと無関係な値動きを生みます。
リスク管理としては、VIXが14.90と15を割り込んでいる現状は「安心」ではなく「サプライズに脆い」局面と捉えるのが安全です。7月29日に20.66まで跳ねた記憶はまだ新しく、同じことが12日のCPIで起こる可能性は十分にあります。また今週は11日(火)が休場で、米国の2営業日分の材料を12日または13日にまとめて織り込むという構造上のリスクを抱えています。連休をまたぐポジションのサイズは平常週より抑えめにしておくのが無難でしょう。
最後にもう一点。先週の東京市場が4営業日連続で700円超の下ヒゲを引いたという事実は、押し目待ちの資金が相当量待機していることの裏返しです。株式評論家の富田隆弥氏も「秋相場をにらんで、ここからは押し目買いやもたつき買いを検討する局面」との見方を示しています。上値を追う相場ではないが、下げたところは拾われる。そういう地合いを前提に、突っ込みを売らないことを今週の心得としておきたいところです。
チャート(TradingView)
日経225(INDEX:NKY)・ドル円(FX:USDJPY)・S&P 500(FOREXCOM:SPXUSD)の主要チャートです。本文の数値と合わせてご確認ください。
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免責事項:本記事は情報提供のみを目的としたものであり、特定の銘柄や取引手法を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。記載内容は執筆時点での公開情報をもとに作成しており、その正確性・完全性を保証するものではありません。相場の想定レンジはあくまで筆者の見解であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資には元本割れのリスクが伴います。


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