終値だけを見れば76円55銭安という、ほとんど動かなかった一日に見えます。しかし前場には前日終値から1,031円77銭安まで売られ、そこから955円22銭を戻して引けました。TOPIXは19.08ポイント高と続伸、プライムの値上がりは939銘柄で全体の約60%、日経225の採用銘柄も148銘柄が上昇しています。本日を動かしたのは相場全体の地合いではなく決算でした。フジクラは12.82%高で単独+118円の押し上げ、レーザーテックは13.55%安、富士フイルムは16.55%安。同じ日に、同じ材料で、銘柄は真っ二つに割れました。
本日の相場概況
8月7日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比76円55銭(0.12%)安の6万5,606円71銭で取引を終えました。下落率は0.12%——数字だけなら「ほぼ変わらず」と書いてよい水準です。ところが本日の日中の値動きは、その終値からは想像できないものでした。
寄り付きは6万5,746円13銭と、前日終値を62円87銭上回るスタートでした。前日の米国市場でNYダウが464ドル安と反落したことを考えれば、これは値頃感からの買いが先行した形です。9時2分には高値6万5,990円72銭を付け、6万6,000円に手が届く場面もありました。
しかし買いが一巡すると、そこから一方的に売られます。10時42分に安値6万4,651円49銭。前日終値からの下げ幅は1,031円77銭に達し、高値からは1,339円23銭の急落となりました。売りの中心はAI・半導体関連株です。
ところが、ここが本日の底でした。後場に入ると買いが優勢となり、終値は安値から955円22銭戻して引けています。日中値幅1,339円23銭のうち、下ヒゲが955円22銭で71%。実体はわずか139円42銭の陰線で10%にすぎません。前日6日も741円の下ヒゲを付けており、2日続けて「深く売られて、深く買い戻される」足が並びました。
そして本日も、指数の数字と市場の中身は一致していません。東証プライムでは値上がり939銘柄に対し値下がりが582銘柄、変わらずが35銘柄。値上がりが全体の約60%を占めました。TOPIXは19.08ポイント(0.47%)高の4,074.93と続伸しています。日経225の採用銘柄でも値上がり148銘柄、値下がり75銘柄、変わらず2銘柄。採用225社の66%が上昇して、指数は76円下がったわけです。
前日の記事で「日経平均は株価の高い銘柄ほど影響力が大きい株価平均型の指数だ」と書きました。本日はその構造が、上下両方向から同時に働きました。押し下げた5銘柄の寄与度合計は-520円40銭、押し上げた5銘柄は+268円21銭。綱引きの結果が-76円だったというのが本日の正確な描写です。相場が方向感を失っていたのではなく、強い上昇と強い下落が同じ日に同居していたのです。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 65,606.71円 | -76.55円 (-0.12%) |
| 日経平均 高値 / 安値 | 65,990.72 / 64,651.49 | 始値 65,746.13円 (値幅1,339円) |
| TOPIX | 4,074.93 | +19.08 (+0.47%) |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,079.15 / 4,045.34 | 始値 4,063.74 |
| NYダウ (8/6終値) | 53,885.10 | -464.02 (-0.86%) |
| S&P 500 (8/6終値) | 7,709.96 | -13.59 (-0.18%) |
| ナスダック総合 (8/6終値) | 26,348.35 | -15.09 (-0.06%) |
| SOX指数 (8/6終値) | 12,048.69 | +39.81 (+0.33%) |
| 米ドル/円 | 158円30銭台 | 前日の157円80銭前後からやや円安 |
| 上海総合指数 | 3,900.35 | +21.92 (+0.57%) |
| 東証プライム 売買代金 | 約10兆8,960億円 | 前日の約9兆6,880億円から約1兆2,080億円増加 |
| 東証プライム 売買高 | 約28億7,610万株 | 前日の約26億7,117万株から増加 |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 939 / 582 | 変わらず35 (値上がりが約60%) |
| 日経225構成銘柄 騰落 | 値上がり148 / 値下がり75 | 変わらず2 (値上がりが66%) |
| 業種別騰落 (33業種) | 上昇22 / 下落11 | 上昇率トップは石油・石炭製品 |
| 日経平均VI | 29.88 | +0.10 高値31.47/安値29.88 |
| 米VIX指数 (8/6終値) | 15.15 | -0.66 (-4.17%) 低位で安定 |
| NT倍率 | 16.10倍 | 前日16.19倍から3日連続の低下 |
| ストップ高 / ストップ安 | 12銘柄 / 4銘柄 | 決算を材料にした動きが中心 |
マクロ・地政学の視点
本日の出発点は、前日の米国市場でした。NYダウは464ドル02セント安の5万3,885ドル10銭と6日ぶりに反落しています。5日続伸のあとの一服で、原油価格の上昇が警戒されたことが理由とされました。S&P500は0.18%安、ナスダック総合は0.06%安と、いずれも小幅ながらマイナス圏です。
ただし、ここに一つ重要な例外があります。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は0.33%高の1万2,048ポイントと反発していました。米国では半導体株はむしろ買われていたのです。それにもかかわらず東京市場では前場にAI・半導体関連が集中的に売られました。本日の東京市場の下げは、外部要因の輸入ではなかった——この点が、前日6日との決定的な違いです。
では何が売りを呼んだのか。答えは国内企業の決算です。前日6日の引け後にソフトバンクグループ(9984)が減益決算を発表し、本日は2.51%安。レーザーテック(6920)は27年6月期の純利益を16%増と見込んだものの市場予想の平均を下回り、ガイダンスがネガティブ視されて13.55%の急落となりました。富士フイルムホールディングス(4901)は決算失望で一時18%安、終値でも16.55%安です。エムスリー(2413)も16.89%安。前場の下げ幅1,000円超は、この個別要因の積み上がりでした。
一方、原油高は東京市場ではプラス材料として作用しました。業種別では石油・石炭製品が上昇率トップとなり、出光興産やENEOSなどが買われています。米国では警戒され、日本では買われた——同じ材料が、市場によって逆の符号を持つ典型例です。
為替はやや円安方向に振れました。ドル円は158円30銭台で、前日の157円80銭前後から50銭ほど円安が進んでいます。輸出企業にとっては追い風で、後場の下げ渋りを側面から支えた可能性があります。中国・上海総合指数も21.92ポイント高の3,900.35と0.57%上昇し、アジア市場全体の地合いは悪くありませんでした。
そして本日、市場が最も意識していたのは今晩発表される米7月雇用統計です。日本時間の21時30分、つまり東京市場の大引け後に結果が出ます。積極的な売買を見送る動きがあったと大引け報道は伝えており、後場の値動きが一方向に振れなかった背景にはこの待機ムードもありました。
市場心理の指標は、落ち着きを保っています。日経平均VIは29.88と前日から0.10ポイントの小幅上昇にとどまりました。日中は高値31.47まで上昇して外部環境の悪化を警戒する場面がありましたが、大引けにかけて低下し安値引けです。1,000円超下げた日にVIがほぼ動かなかった——これは相当に冷静な反応と言えます。米国のVIX指数も15.15と4.17%低下し、低位で安定しています。
セクター・個別銘柄の動き
売られたセクター・銘柄
本日の下落は、ほぼ完全に「決算を出した銘柄」に集中しました。33業種のうち下落したのは11業種にとどまり、売られたのは半導体製造装置や電子部品を含む一群です。
日経平均への押し下げ寄与が最も大きかったのはアドバンテスト(6857)で-178円61銭(株価3万2,190円、2.25%安)。次いでソフトバンクグループ(9984)が-115円05銭(5,552円、2.51%安)、東京エレクトロン(8035)が-83円47銭(5万4,500円、1.50%安)と続きます。この3社だけで377円13銭を押し下げました。
下落率で目を引くのはレーザーテック(6920)の13.55%安(3万7,460円、5,870円安)です。寄与度は-78円71銭。27年6月期の見通しが市場予想に届かず、ガイダンスがネガティブに受け止められました。富士フイルムホールディングス(4901)は16.55%安(3,236円、642円安)で寄与度-64円56銭。決算内容が失望を呼び、日中は一時18%安まで売られています。エムスリー(2413)は16.89%安(1,530円)、寄与度-25円02銭でした。
このほかキオクシアホールディングス(285A)が2.07%安で-23円70銭、ディスコ(6146)が5.11%安で-21円12銭、SCREENホールディングス(7735)が4.42%安で-16円22銭。村田製作所(6981)、TDK(6762)、京セラ(6971)、信越化学工業(4063)、太陽誘電(6976)、アマダ(6113)も押し下げ役に並びました。古河電気工業(5801)やJX金属(5016)も売られています。
指数の外では三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)やトヨタ自動車(7203)も安く、主力の一角が下げた点は押さえておくべきでしょう。押し下げ上位5銘柄の寄与度合計は-520円40銭に達しました。この5銘柄がなければ、本日の日経平均は400円以上の上昇だった計算になります。
買われたセクター・銘柄
上昇したのは22業種です。上昇率トップは石油・石炭製品で、原油価格の上昇を受けて出光興産やENEOSが買われました。その他製品(任天堂、バンダイナムコ)、卸売業(三井物産、三菱商事)も高く、資源・内需・エンタメという、AI相場の主役から遠いセクターが揃って買われたのが本日の特徴です。
個別で圧倒的だったのがフジクラ(5803)の12.82%高(5,185円、589円高)です。寄与度は+118円47銭で、単独で日経平均を118円押し上げました。決算内容が好感され、本日の下げ幅を76円に抑えた最大の功労者です。前日6日には売られた銘柄でしたから、1日で評価が反転したことになります。
次いでバンダイナムコホールディングス(7832)が10.50%高(5,398円、513円高)で寄与度+51円59銭。前日に続く上昇で、上方修正の評価が持続しています。ファーストリテイリング(9983)は0.53%高ながら株価が高いため+33円79銭、KDDI(9433)が2.76%高で+32円18銭、リクルートホールディングス(6098)が2.49%高で+32円18銭と続きました。KDDIは今期最終が3%増で2期連続の最高益更新見通し、リクルートは27年3月期の業績予想を引き上げています。
さらにコナミグループ(9766)が3.80%高で+25円81銭、大塚ホールディングス(4578)が4.40%高で+17円93銭、ファナック(6954)が1.63%高で+17円60銭、テルモ(4543)が2.64%高で+16円36銭、ソニーグループ(6758)が2.62%高で+15円92銭。ブリヂストン(5108)と任天堂(7974)はともに5.26%高で、それぞれ+14円08銭、+13円48銭を寄与しました。三菱商事(8058)、三井物産(8031)、ホンダ(7267)、日立製作所(6501)、日本製鉄(5401)、NTT(9432)も堅調です。中小型ではレゾナック・ホールディングス(4004)やロート製薬(4527)が値を飛ばしました。
商いは前日から大きく膨らみました。東証プライムの売買代金は約10兆8,960億円で、前日の約9兆6,880億円から約1兆2,080億円増加しています。売買高も約28億7,610万株と前日の約26億7,117万株を上回りました。指数がほとんど動かなかった日に、商いだけが1兆円以上増えた——これは決算を材料にした銘柄間の資金の入れ替えが激しかったことを意味します。ストップ高は12銘柄、ストップ安は4銘柄で、ストップ高がストップ安の3倍でした。
テクニカル分析
トレンド
本日の日足は実体139円42銭の小陰線に、955円22銭の長い下ヒゲが付いた形です。上ヒゲは244円59銭。下ヒゲが実体の6.9倍という極端な比率で、売り込まれた水準に厚い買いが控えていることを示す足型になりました。前日6日も741円19銭の下ヒゲでしたから、2日連続で「長い下ヒゲ」が並んだことになります。
移動平均線との位置関係を確認します。5日移動平均線は6万5,060円57銭で、本日終値はこれを546円14銭上回りました。75日移動平均線は6万5,309円32銭で、終値は297円39銭上。この中期線は2日連続で終値ベースの維持に成功しています(安値6万4,651円49銭の時点では割り込んでいました)。
一方、上値では25日移動平均線6万5,968円72銭に362円01銭届いていません。ただし前日の乖離は410円51銭でしたから、距離はわずかながら縮まりました。13週移動平均線は6万6,146円09銭で、539円38銭下です。
本日、テクニカル上で最も注目すべきは一目均衡表の雲下限との攻防です。雲下限(先行スパン)は6万5,430円24銭。本日の安値6万4,651円49銭はこれを778円75銭も下回りましたが、終値6万5,606円71銭では176円47銭上に回復しています。前日は安値が雲下限の21円手前で止まりました。本日はいったん雲の中に沈み、引けまでに這い上がった——同じ水準を、2日続けて別の形で確認した格好です。基準線6万5,416円74銭も雲下限のすぐ下(差はわずか13円50銭)にあり、6万5,417円〜6万5,430円は極めて厚い節目を形成しています。
中期の位置も見ておきます。本日終値は7月1日の終値7万474円96銭から4,868円25銭(6.91%)安。200日移動平均線は5万7,399円36銭で、終値はこれを14.30%上回っています。長期の上昇トレンドは崩れていません。
サポートとレジスタンス
以下の水準は、確定日足300本から算出した8月7日終値時点の計算値です。
- 第1サポート: 6万5,430円〜6万5,417円 — 一目均衡表の雲下限と基準線がわずか13円差で重なる帯です。終値の176円下。2日連続でこの水準が意識されており、当面の最重要ラインと考えられます。
- 第2サポート: 6万5,309円 — 75日移動平均線。終値の297円下です。2日連続で終値ベースの維持に成功しています。
- 第3サポート: 6万5,061円〜6万4,651円 — 5日移動平均線と本日の安値の帯です。本日の下げが止まった実績のある水準で、さらに下には25日ボリンジャーバンド-1σの6万3,721円が控えます。
- 第1レジスタンス: 6万5,969円〜6万5,991円 — 25日移動平均線と本日の高値が22円差で重なる帯です。終値の362円上。2日続けてこの水準に跳ね返されており、最初の関門になります。
- 第2レジスタンス: 6万6,146円 — 13週移動平均線。終値の539円上です。6万5,969円〜6万6,146円が厚い抵抗帯を形成しています。
- 第3レジスタンス: 6万8,217円〜6万8,999円 — 25日ボリンジャーバンド+1σと一目均衡表の雲上限が重なる帯で、約2,600円上にあります。
オシレーターと移動平均
オシレーターは改善の方向を維持しました。最も明確なのがMACDです。MACDは-684.88、シグナルは-870.39で、ヒストグラムは+185.51。前日の+110.17からさらに75.34拡大しました。前日成立したゴールデンクロスが、本日は幅を広げて継続していることになります。ただしMACD本体はまだゼロラインを大きく下回っており、「下降局面の底打ち初期」の段階であることに変わりはありません。
RSI(14日)は49.81で、前日の50.05からごくわずかに低下しました。ちょうど中立の50付近で、買われ過ぎ(70以上)にも売られ過ぎ(30以下)にも当たりません。9日ベースは52.31です。2日続けて50前後に貼り付いているのは、上下の力が拮抗している状態を素直に反映しています。
ストキャスティクスは高い位置を保ちました。ファースト%K(9日)は88.11で、前日の89.42からほぼ横ばい。買われ過ぎとされる80を2日連続で上回っています。スロー%D(9日)は79.99で、前日の66.31から13.68ポイント上昇し、80の目前まで来ました。遅行する指標が短期指標に追いついてきた形で、上昇の中盤に典型的に見られる並びです。
NT倍率(日経平均÷TOPIX)は16.10倍で、前日の16.19倍から0.09ポイント低下しました。8月5日の16.39倍から3日連続の低下です。値がさ株偏重の歪みは着実に是正されつつあります。ただし本日もその是正は「裾野が広がった」形ではなく、値がさ半導体株が下げたことによるものでした。
ボリンジャーバンドでは、25日ベースの中心線が6万5,968円72銭、+1σが6万8,216円53銭、-1σが6万3,720円91銭です。本日終値は中心線をやや下回る位置にあります。日経平均VIは29.88と0.10ポイントの上昇にとどまり、2日連続で平常レンジとされる30を下回って引けました。日中高値は31.47、安値は29.88で、安値引けです。
なお、本項の移動平均線・一目均衡表・ボリンジャーバンド・RSI・ストキャスティクス・MACDの各数値は、株探が公表する確定日足300本から当サイトが算出した計算値です。移動平均線については株探が公表するカイリ率と整合することを確認していますが、オシレーター類および一目均衡表は算出方法(平滑化の手法や先行スパンのずらし方)によってチャートツールごとに表示値が異なる場合があり、推定であり確定値ではありません。売買判断にあたっては必ずご自身のチャートツールで実数値をご確認ください。
市場心理
本日の市場心理を一言で表すなら「選別」です。前日6日が「指数だけが下がった日」だったとすれば、本日は指数がほとんど動かないまま、中身が激しく入れ替わった日でした。
その証拠が売買代金の増加です。日経平均の変動率は0.12%——ほぼゼロです。それなのに東証プライムの売買代金は前日から約1兆2,080億円増えて10兆8,960億円に達しました。指数が動かない日に商いが1兆円以上増えるのは、投資家が「相場全体をどうするか」ではなく「どの銘柄を持つか」を判断していた証拠です。決算シーズンの本質が、そのまま数字に出ました。
個別の値動きの幅を見れば、その激しさは一目瞭然です。上昇側ではフジクラ12.82%高、バンダイナムコ10.50%高、任天堂とブリヂストンが5.26%高。下落側ではエムスリー16.89%安、富士フイルム16.55%安、レーザーテック13.55%安。同じ日に、10%を超える上昇と下落が同時に発生しました。ストップ高12銘柄・ストップ安4銘柄という数字も、方向は違えど「動いた」銘柄が多かったことを示しています。
もう一つ注目したいのが、日経平均VIがほとんど動かなかったことです。日中に1,000円超下げた日に、VIはわずか0.10ポイントの上昇。日中高値31.47を付けたあと、大引けにかけて低下して安値引けとなりました。市場は前場の急落を「相場の崩壊」とは受け取らなかったということです。実際、その判断は正しく、955円が戻りました。
ただし、注意すべき点もあります。本日の急落銘柄は、いずれも決算そのものが悪かったわけではない点です。レーザーテックは純利益16%増の見通しを示しました。それでも市場予想に届かなかったという理由で13.55%下げました。「増益でも売られる」——これは前日にサンディスクで見た「好決算でも売られる」現象と同じ構図です。株価に織り込まれた期待の水準が、実績ではなく予想との差で評価される局面に入っています。
本日、記憶しておくべき数字を挙げるなら「-520円40銭と+268円21銭」でしょう。押し下げ上位5銘柄と押し上げ上位5銘柄の寄与度です。この2つがぶつかった結果が-76円55銭でした。ニュースの見出しは「日経平均76円安」と報じますが、その裏では800円近い綱引きが起きていたのです。静かな終値ほど、中身を見る価値があります。
翌営業日の注目ポイント
- 米7月雇用統計(今晩21時30分) — 本日最大の待機材料です。先行指標は弱く、7月のADP雇用統計は4.4万人増と1月以来の低水準、ISM非製造業の雇用指数は47.4と節目の50を割り込みました。下振れすれば利下げ期待から金利低下・ハイテク株高、上振れすればドル高・円安という、方向によって波及経路が変わる材料です。結果を東京市場が消化できるのは10日(月)の一日だけという点が、今回はとりわけ重要になります。
- 雲下限6万5,430円と75日線6万5,309円の維持 — 本日は日中に雲下限を778円下回りながら、終値で176円上に回復しました。この2本と基準線6万5,417円が集まる6万5,300円〜6万5,430円の帯が、下値の最終防衛ラインです。終値でここを割り込むと、7月末からの戻り相場のシナリオを見直す必要が出てきます。
- 25日線6万5,969円の回復 — 2日続けて跳ね返された水準です。本日の高値6万5,991円もほぼ同じ位置にあり、ここを終値で上抜けるかどうかが上値追いの分岐点になります。届かない日が続けば、上値抵抗として定着していきます。
- フジクラ(5803)の上昇が続くか — 本日単独で+118円47銭を寄与した最大の押し上げ役です。12.82%高という上げ幅は大きく、10日に利益確定売りが出れば指数の重石に変わります。逆に高値圏を保てば、決算評価が本物だったことになります。
- レーザーテック・富士フイルムの下げ止まり — 増益予想でも予想に届かず売られたレーザーテックと、決算失望で16%超下げた富士フイルム。週明けにこの2銘柄が下げ止まれば、本日の急落は決算の一過性の反応と結論づけられます。売りが続くようなら、期待の織り込み過剰がより広範な問題である可能性を検討すべきでしょう。
- 今夜の米国市場、特にSOX指数 — 前日は0.33%高と反発しました。米国の半導体株が堅調なのに東京の半導体株が売られるという本日の構図が、雇用統計を経てどう変化するか。この乖離が埋まる方向なら、10日の東京市場は半導体株の買い戻しから始まります。
- ドル円158円台の方向 — 本日は158円30銭台と、前日の157円80銭前後から円安方向に振れました。雇用統計の結果次第では大きく動きます。円安は輸出企業の追い風ですが、160円に近づけば介入警戒が高まる水準でもあります。
- NT倍率16.10倍の行方 — 3日連続で低下しました。この流れが続く限り、日経平均よりTOPIX連動型の資産のほうが優位になりやすい地合いです。指数の見出しではなく、自分の保有内容がどちら寄りかを確認しておく価値があります。
戦略展望
本日最も重要な事実は、日経平均が76円しか動かなかった日に、個別株では10%を超える上昇と下落が同時に起きていたことです。指数の静けさと、中身の激しさ——この落差を理解しているかどうかで、本日の相場の評価はまったく変わります。
テクニカル面では、下値の確認が2日続けて行われた点が収穫です。前日は安値が雲下限の21円手前で止まり、本日は雲下限を778円割り込みながら終値で176円上に戻しました。6万5,300円〜6万5,430円の帯(75日線・基準線・雲下限)に、明確な買い手がいることが2度確認されたことになります。加えてMACDのヒストグラムは+110.17から+185.51へ拡大し、ゴールデンクロスは幅を広げています。下げた日にテクニカルが改善するという構図が、2日続きました。
ただし上値も重いままです。25日線6万5,969円には2日連続で跳ね返されました。本日の高値6万5,991円がほぼこの水準ですから、相場は6万5,300円〜6万6,000円の700円幅のレンジに収まりつつあると見ることもできます。方向が出るとすれば、そのきっかけは今晩の雇用統計になる可能性が高いでしょう。
投資判断の観点では、本日は「銘柄選択がすべてだった日」です。フジクラやバンダイナムコを持っていれば大きな利益、レーザーテックや富士フイルムを持っていれば大きな損失。日経平均の-0.12%という数字は、どちらの投資家の実感とも一致しません。決算シーズンの最中は、指数を見ても自分の損益は分かりません。
リスク側で最も注意すべきは、カレンダーの窮屈さです。今晩の雇用統計を、東京市場は週末をはさんで10日(月)の一日だけで消化し、翌11日(火)は山の日で休場となります。結果が大きく振れた場合、10日の値動きは荒くなりやすく、その後2日間ポジションを動かせません。週末をまたいでリスクを取る量については、いつもより慎重に考えたい局面です。
もう一つのリスクは、「増益でも売られる」現象の広がりです。レーザーテックは純利益16%増の見通しを示しながら、市場予想に届かないという理由で13.55%下げました。前日のサンディスク、本日のレーザーテック——2日続けて同じパターンが出ています。期待が株価に織り込まれ過ぎた銘柄では、良い数字が良い反応を生みません。保有銘柄の決算前には、業績そのものよりも「市場のコンセンサスがどこにあるか」の確認が効きます。
最後に、いつもの確認です。本日、日経平均は0.12%下落しました。しかしTOPIXは0.47%上昇し、プライムの約60%の銘柄が値上がりしました。そして押し下げ上位5銘柄と押し上げ上位5銘柄の間では800円近い綱引きが起きていました。指数の数字ではなく、自分の資産の実際の変動率で相場を測る——静かな終値の日ほど、この習慣は事実を正しく見せてくれます。
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