昨日の記事で「攻防ゾーン」と書いた880円幅を、市場は上側に抜けました。日経平均は890円37銭高の6万6,216円79銭で3日ぶりに大幅反発し、終値は25日移動平均(6万5,724円53銭)・75日移動平均(6万6,154円45銭)・一目均衡表の雲の下限(6万5,879円96銭)をすべて回復——1営業日で「雲の下」から「雲の中」へ戻りました。主因は米財務省の国債買い入れ消却(バイバック)拡大を受けた日米長期金利の低下で、新発10年国債利回りは2.845%と2営業日で9bp低下、昨日の下げ主役だったソフトバンクグループがプラス寄与トップに転じ、ファーストリテイリングと2銘柄で236円53銭を押し上げました。値上がりは全体の約84%、東証33業種のうち29業種が上昇と、裾野も戻っています。ただし戻したのは2営業日の下げ3,893円83銭のうち22.9%だけ。売買代金は8兆6,034億円と前日から1兆5,117億円減っており、新規資金ではなく買い戻し主導の反発です。5日線と転換線はまだ頭上に残っています。
本日の相場概況
8月20日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に反発し、前営業日比890円37銭(1.36%)高の6万6,216円79銭で取引を終えました。3営業日ぶりの上昇で、取引時間中には上げ幅が998円90銭まで拡大し、1,000円に迫る場面もありました。
まず、前回の記事の結論を検証します。19日の記事で私たちは「6万5,900円(雲下限)より上か、6万5,000円(基準線・本日安値)より下かで状況認識を分ける」「その間の約880円が、当面の攻防ゾーンになる」と整理しました。本日の終値6万6,216円79銭は、この攻防ゾーンの上限である雲下限6万5,879円96銭を336円83銭上回りました。同じ記事で「戻りの最初の関門は6万5,600〜6万5,900円に4つの節目が集中する厚い帯」とも書きましたが、本日はこの帯を一気に通過しています。さらに「ソフトバンクグループが戻せば指数も戻る」という指摘も、同社がプラス寄与トップに転じる形で現実になりました。昨日示した弱気シグナルは、1営業日で「確定しなかった」ことになります。
日足の形は、19日とはほぼ正反対でした。寄り付きは6万5,732円79銭で、前営業日終値を406円37銭上回るギャップアップ。安値6万5,652円25銭は寄り付き直後の9時03分につけたもので、下ヒゲはわずか80円54銭です。高値6万6,325円32銭は10時08分、終値との差(上ヒゲ)は108円53銭にとどまりました。始値から終値までの実体は484円00銭の陽線で、日中値幅は673円07銭。19日の1,699円53銭、18日の1,724円24銭に対して4割弱まで縮小しており、2営業日続いた1,700円級の荒い値動きはいったん収まりました。
一日の流れを見ると、上げの大半は前場で完成しています。前引けは656円07銭(1.00%)高の6万5,982円49銭で、後場の上昇は234円30銭。上げ幅の73.7%が前場、26.3%が後場という配分です。19日は下げ幅の81.4%が前場に集中していましたから、方向は逆でも「前場に動いて後場は落ち着く」という日中パターンは共通しています。ただし19日が終盤まで安値圏で引けたのに対し、本日は後場に上値を切り上げて終わった点が違います。高値から108円53銭の位置で引けており、引け際の売り圧力は限定的でした。
裾野の広がりは、本日の反発を評価するうえで最も重要な要素です。TOPIXは47.42ポイント(1.18%)高の4,059.73と、4営業日ぶりに反発しました。始値4,033.85、高値4,060.55、安値4,031.56で、終値は高値をわずか0.82ポイント下回っただけの、ほぼ高値引けです。日中値幅は28.99ポイント(0.72%)と、19日の102.29ポイントから7割以上縮小しました。NT倍率は前日の16.28倍から16.31倍へ0.03ポイント上昇し、日経平均のほうがやや強く戻したことを示しています。ただし差はわずかで、指数と市場全体がおおむね同じ方向に動いたと見るのが妥当でしょう。
騰落銘柄数も回復しました。東証プライムの値上がりは全体の約84%(概算1,300銘柄超)、値下がりは約13%(概算200銘柄前後)です。19日は値上がり362銘柄・値下がり1,155銘柄で、値下がりが74%を占めていましたから、1営業日で構図が完全に反転したことになります。東証33業種でも上昇29業種・下落4業種と、19日の上昇2業種・下落31業種からほぼ裏返りました。日経225構成銘柄では値上がり182・値下がり42・変わらず1で、構成銘柄の8割が上昇しています。
一方で、商いの中身には注意が要ります。東証プライムの売買代金は概算8兆6,034億円で、19日の約10兆1,151億円から1兆5,117億円(14.9%)の減少。売買高も概算22億5,115万株と、19日の約25億1,136万株から約2億6,021万株(10.4%)減りました。値上がり銘柄が8割を超えたのに、資金の出入りの総量は1.5兆円減っている——これは新規の買いが大量に入ったというより、売り方の買い戻しと押し目拾いで値が戻ったことを示唆します。19日の記事で「薄い買いの上を滑り落ちる相場は、材料次第で戻りも速い反面、下も速い」と書いた性質が、そのまま上方向に出たという読み方が素直でしょう。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 66,216.79円 | +890.37円 (+1.36%) 3日ぶり大幅反発 |
| 日経平均 高値 / 安値 | 66,325.32 / 65,652.25 | 始値 65,732.79円 (値幅673円・実体484円の陽線) |
| 日経平均 上ヒゲ / 下ヒゲ | 108.53円 / 80.54円 | 高値10時08分・安値9時03分。ほぼ高値圏で引け |
| 日経平均 一時の上げ幅 | +998.90円 | 高値時点。1,000円に迫る場面があった |
| 日経平均 前引け | 65,982.49円 | +656.07円。上げの74%が前場・26%が後場 |
| 日経平均 3営業日の変化 | -3,003.46円 (-4.34%) | 17日終値 69,220.25円から。2日間の下げの22.9%を戻す |
| TOPIX | 4,059.73 | +47.42 (+1.18%) 4日ぶり反発 |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,060.55 / 4,031.56 | 始値 4,033.85 (終値は高値の0.82下・ほぼ高値引け) |
| NT倍率 | 16.31倍 | 前日16.28倍から0.03ポイント上昇 |
| NYダウ (8/19終値) | 53,463.05 | +119.65 (+0.22%) |
| S&P 500 (8/19終値) | 7,707.98 | +16.22 (+0.21%) |
| ナスダック総合 (8/19終値) | 26,331.09 | +41.38 (+0.16%) |
| SOX指数 (8/19終値) | 11,738.23 | -254.24 (-2.12%) 主要指数で唯一の下落・2日続落 |
| 米VIX指数 (8/19終値) | 14.89 | -0.95 (-6.00%) 15を割り込み平静な水準に |
| 米ドル/円 | 158円45銭前後 | 前日夕方の159円25銭前後から約80銭の円高 (高値158.73/安値158.04) |
| 新発10年国債利回り (8/20) | 2.845% | -0.045%。18日の2.935% (約30年ぶり高水準) から2営業日で9bp低下 |
| 米10年債利回り (8/19終値) | 4.653% | -0.053% (5.3bp低下)。国債買い入れ消却の拡大が背景 |
| 東証プライム 売買代金 | 約8兆6,034億円 | 19日の約10兆1,151億円から1兆5,117億円 (14.9%) 減 |
| 東証プライム 売買高 | 約22億5,115万株 | 19日の約25億1,136万株から約2億6,021万株 (10.4%) 減 |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 約84% / 約13% | 19日は値上がり23%・値下がり74%。構図が反転 |
| 日経225構成銘柄 値上がり/値下がり | 182銘柄 / 42銘柄 (変わらず1) | 構成銘柄の約8割が上昇 |
| 東証33業種 上昇/下落 | 29業種 / 4業種 | 下落は鉄鋼・銀行業・保険業・倉庫運輸関連 |
| 最大のプラス寄与 | ソフトバンクグループ | 1銘柄で日経平均を約128円72銭押し上げ (19日は約485円の押し下げ) |
| プラス寄与 上位2銘柄合計 | 約+236円53銭 | ソフトバンクG+ファーストリテイリング。上げ幅の26.6% |
| 日経平均 25日線からの乖離 | +0.75% | 19日の-0.70%から1.45ポイント改善・25日線を回復 |
| 日経平均 一目均衡表の雲 | 上限 68,445.73 / 下限 65,879.96 | 終値は下限を336.83円上回り「雲の中」へ復帰 |
| 日経平均 52週高値からの距離 | -6,614.94円 (-9.08%) | 52週高値 72,831.73 (6/22)。19日の-10.31%から改善し調整局面の目安を下回る |
| 7月29日安値からの戻り | +5,767.89円 (+9.54%) | 直近安値 60,448.90 (7/29)。19日の+8.07%から拡大 |
マクロ・地政学の視点
本日の反発を作ったのは、ほぼ一点、金利です。19日の下げが「米半導体株安・世界的な金利上昇・SBGの資金調達観測・中東情勢」という4つの材料の重なりだったのに対し、本日の上げは金利低下という単一の材料に集約されます。順に見ていきます。
起点は米財務省による国債買い入れ消却(バイバック)の拡大です。バイバックとは、財務省が既発の国債を市場から買い戻して消却する仕組みで、市場に出回る国債の量を減らし、需給を改善させる効果があります。その限度額の引き上げが伝えられたことで、19日の米国市場では長期債が買われ、10年債利回りは4.653%へ5.3bp低下しました。18日の4.706%、17日の4.724%からの2営業日連続の低下です。
この動きは日本の債券市場にも波及しました。新発10年国債利回りは20日に2.845%で、前日比0.045%の低下。19日も2.890%と0.045%低下していましたから、2営業日で合計9bpの低下です。18日の2.935%は1996年9月以来 約30年ぶりの高水準でしたから、そのピークから素直に押し戻された格好になります。19日の記事で「金利は日銀の政策と財政に紐づく構造的な材料で、一過性で戻る性質のものではない」と書きましたが、本日の低下は日銀の政策変更によるものではなく、米国発の需給要因が伝播したものです。構造的な水準そのものが下がったわけではない——ここは切り分けて評価する必要があります。
金利低下が株価を押し上げる理屈は、19日に説明した理屈の裏返しです。長期金利は将来の利益を現在価値に割り引く際の分母にあたるため、金利が下がれば、遠い将来の利益に価値の大半を置く高PER銘柄ほど現在価値が回復します。19日に金利上昇で最も売られた銘柄群が、本日は最も買い戻された——ソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、アドバンテスト、キオクシアがプラス寄与の上位を占めたのは、この理屈どおりの並びです。
もっとも、米国株の上げ自体は小幅でした。19日のNYダウは119ドル65セント(0.22%)高の5万3,463ドル05セント、S&P500は16.22ポイント(0.21%)高の7,707.98、ナスダック総合は41.38ポイント(0.16%)高の2万6,331.09。いずれも0.2%前後の小幅高にとどまっています。本日の日経平均の1.36%高は、米国株の上げ幅を大きく上回りました。19日に日経平均が3.16%下げ、米国株が0.2%前後しか下げなかったことの反動と考えれば整合的で、日本株側の振れ幅が米国株より一貫して大きい状態が続いています。
そして米半導体は依然として戻っていません。19日のSOX指数は254.24ポイント(2.12%)安の1万1,738.23と、18日の4.98%安に続く2日続落でした。主要3指数がそろって上げるなかで、半導体だけが下げたことになります。17日の1万2,621.00から2営業日で882.77ポイント(7.00%)下落しており、金利低下の恩恵は米半導体にはまだ及んでいないのが実情です。それでも東京市場では半導体関連の一角が買い戻されました——アドバンテストが約82円06銭、キオクシアが約70円40銭のプラス寄与となった一方、東京エレクトロンは約64円36銭のマイナス寄与で、セクター内でも明暗が分かれています。
為替は円高方向に振れました。米ドル/円は東京時間夕方で158円45銭前後と、前日夕方の159円25銭前後から約80銭の円高です。本日の高値は158円73銭、安値は158円04銭でした。国債買い入れ消却の発表を受けたドル売りが背景とされ、158円台では値ごろ感からのドル買いも入ったと伝えられています。注目すべきは、円高が進んだ日に輸送用機器(自動車)が上昇率上位に入ったことです。通常なら円高は輸出企業の逆風ですが、本日は「売られすぎ」銘柄への買い戻しが為替要因を上回ったと報じられています。これも、本日の上げが業績評価の変更ではなく、水準訂正の性格を持つことを示す材料です。
ボラティリティ指標も落ち着きました。米VIX指数は19日終値で14.89と、前日比0.95ポイント(6.00%)低下し、15を割り込んでいます。18日は15.84でしたから、日本株が3.16%下げた19日に、米国市場の警戒感はむしろ後退していたことになります。19日の記事で「日本株は全面安になったが、グローバルなリスク回避はまだ起きていない」と書いた見立ては、その後の米国市場の値動きで裏づけられました。本日の反発は、米国側から見れば「日本株が独自に下げすぎた分の修正」という位置づけになります。
セクター・個別銘柄の動き
買われたセクター・銘柄
本日は東証33業種のうち29業種が上昇しました。上昇率上位に並んだのは輸送用機器、電気・ガス業、医薬品、不動産業です。19日に上昇したのが医薬品と海運業の2業種だけだったことを思えば、買われる範囲は1営業日で大きく広がりました。医薬品は19日・20日と連続で上昇業種に入っており、ディフェンシブへの資金は抜けていません。
プラス寄与のトップはソフトバンクグループでした。160円(3.06%)高の5,387円となり、1銘柄で日経平均を約128円72銭押し上げています。19日は603円安・約485円の押し下げでマイナス寄与トップでしたから、丸1日で立場が入れ替わりました。ただし戻したのは前日の下げ603円のうち160円、率にして26.5%にすぎません。1兆円規模の社債発行観測という材料自体が消えたわけではない点は、押さえておく必要があります。
2位はファーストリテイリングで、1,340円高の7万6,280円、約107円81銭の押し上げ。上位2銘柄の合計は約236円53銭で、本日の上げ幅890円37銭の26.6%をこの2社が作りました。19日はマイナス寄与上位10銘柄で下げ幅の66.1%を説明できたことと比べると、本日は特定銘柄への集中度がむしろ低い——上げが広く分散していたことがわかります。
3位以下はアドバンテスト(340円高の3万5,360円・約82円06銭)、キオクシアホールディングス(3,000円高の5万2,950円・約70円40銭)、リクルートホールディングス(405円高の1万6,145円・約40円73銭)と続きます。アドバンテストは19日に840円安・約202円74銭のマイナス寄与2位、キオクシアは7,200円安・12.60%安でしたから、いずれも前日の急落銘柄がそのまま買い戻された形です。ただしキオクシアの戻りは前日の下げ7,200円に対して3,000円(41.7%)、アドバンテストは840円に対して340円(40.5%)で、半値戻しにも届いていません。
値上がり率ではクオンツ総研が15.71%高で上位に立ち、松屋が11.97%高、住友金属鉱山が10.87%高と続きました。松屋は19日にも値上がり銘柄として名前が挙がっており、2営業日続けて買われています。日経の大引け報道では「売られすぎ銘柄への買い戻し」が主題として扱われ、自動車や建設に買いが広がったと伝えられました。
売られたセクター・銘柄
下落したのは鉄鋼、銀行業、保険業、倉庫・運輸関連の4業種だけです。この顔ぶれには一貫性があります。銀行と保険は、長期金利の低下がそのまま収益見通しの下押しになる業種です。19日の記事で「金利上昇は銀行にとって本来は収益改善要因だが、景気後退懸念が上回ると売られる」と書きましたが、本日は金利が下がったことで、教科書どおりに売られました。市場全体の8割超が上昇するなかで金融株が下げたという事実は、本日の相場が「金利低下トレード」だったことを、これ以上ないほど明確に示しています。
マイナス寄与のトップは東京エレクトロンで、640円(1.17%)安の5万4,020円、約64円36銭の押し下げでした。19日も1,720円安・約172円97銭のマイナス寄与3位でしたから、2営業日続けて売られています。前日のSOX指数2.12%安が、半導体製造装置に直接効いた形です。
2位以下はイビデン(565円安の1万9,150円・約37円88銭)、京セラ(74円安の3,567円・約19円85銭)、村田製作所(126円安の7,205円・約10円14銭)、レーザーテック(280円安の3万4,930円・約3円75銭)と続きます。マイナス寄与の上位5銘柄がすべて半導体・電子部品関連で、合計しても約136円。19日のマイナス寄与上位10銘柄が約1,410円だったことと比べると、売り圧力の規模は10分の1以下に縮んでいます。
整理すると、本日のセクター構図は「金利低下で恩恵を受ける高PER・内需・不動産が買われ、金利低下が逆風になる銀行・保険が売られ、米半導体安を引きずる装置株が取り残された」という三層構造でした。19日が「ディフェンシブと海運だけが残る全面安」だったのに対し、本日は明確な選別を伴う反発です。無差別に買い戻されたわけではないという点は、この反発の質を測るうえで重要な観察になります。
テクニカル分析
トレンド
本日の上げで、中期のトレンド指標が復旧しました。順に確認します。
まず25日移動平均は6万5,724円53銭(推定であり確定値ではありません)で、終値6万6,216円79銭はこれを492円26銭上回りました。25日線からの乖離率は+0.75%——19日の-0.70%から1.45ポイントの改善で、1営業日で25日線の上に戻ったことになります。75日移動平均も6万6,154円45銭で、終値はこれを62円34銭上回っています。ただし差は62円——翌営業日に小幅安となるだけで再び割り込む距離であり、回復したというより「ぎりぎり届いた」水準です。
一方で、短期の指標はまだ頭上に残っています。5日移動平均は6万7,387円60銭で、終値はこれを1,170円81銭(1.74%)下回ったままです。19日に2,479円54銭下回っていた状態からは半分以下に縮まりましたが、依然として5日線の下にあります。5日線は8月13〜17日の高値圏の終値を含んでおり、これらが計算から外れるにつれて下がってくる性質があります。
200日移動平均は5万8,163円91銭(推定)で、終値はこれを8,052円88銭上回っています。長期の上昇トレンドは19日に続き無傷です。また52週高値7万2,831円73銭(6月22日)からの下落率は9.08%となり、19日に到達した「調整局面」の目安である10%安を、1営業日で下回りました。ただし目安をわずか0.92ポイント下回っただけで、技術的な圏外脱出とまでは言えない距離です。
サポート・レジスタンス
本日の最大の変化は、一目均衡表の雲への復帰です。本日時点の雲は上限6万8,445円73銭、下限6万5,879円96銭(推定であり確定値ではありません)。終値6万6,216円79銭は、雲の下限を336円83銭上回りました。17日は雲の上、18日は雲の中、19日は雲の下、そして本日は再び雲の中——4営業日で3つの局面を往復したことになります。
一目均衡表の解釈では、雲の中は方向感が定まらない中立ゾーンとされます。19日に確認した「雲の下抜け=弱気シグナル」は、1営業日で解除された格好ですが、強気に転じたわけではありません。19日の記事で「17日の強気シグナルが2営業日で否定されたばかりだから、本日の弱気シグナルもまた、確定するまでは仮のものとして扱うのが妥当」と書いた通りの展開になりました。
ここで注目したいのが雲の形状変化です。翌営業日の雲は上限6万7,955円17銭、下限6万5,879円96銭と推定されます。下限は動きませんが、上限は本日の6万8,445円73銭から490円56銭低下します。雲の厚みが2,565円77銭から2,075円21銭へ、約490円薄くなるということです。雲が薄くなる局面は、価格が雲を抜けやすくなるとされます。上下どちらにも抜けやすいという意味であり、方向を示すものではない点には注意が必要です。
他の一目指標では、転換線は6万7,129円87銭で前日から変わらず、終値はこれを913円08銭下回っています。19日に1,803円45銭下回っていた状態から半減しましたが、まだ回復していません。一方基準線6万5,028円57銭(推定)に対しては、終値が1,188円22銭上。19日に297円85銭差まで迫った「最後の砦」からは、明確に距離を取り戻しました。
上値のメドを整理すると、(1)転換線6万7,129円87銭、(2)5日線6万7,387円60銭、(3)18日終値6万7,460円73銭、(4)8月12日終値6万7,524円06銭、(5)翌営業日の雲上限6万7,955円17銭という順です。6万7,100〜6万7,550円のわずか424円の幅に4つの節目が集中しており、ここが次の関門になります。本日終値からは913円〜1,307円の距離です。
下値では、(1)75日線6万6,154円45銭(終値の62円下)、(2)雲下限6万5,879円96銭、(3)25日線6万5,724円53銭、(4)本日安値6万5,652円25銭、(5)19日安値6万5,133円98銭、(6)基準線6万5,028円57銭が並びます。6万5,650〜6万5,880円の228円の幅に3つが集まっており、この帯を終値で維持できるかが、本日の反発を「底入れの一歩」と呼べるかどうかの分かれ目になります。
オシレーター
RSI(14日)は49.3と推定され、19日の46.1から3.2ポイント上昇しました。RSI(9日)は48.4で、19日の43.3から5.1ポイントの上昇です。いずれも中立の50をわずかに下回る水準にあり、買われ過ぎ(70)にも売られ過ぎ(30)にも遠い状態です。19日の記事で「売られ過ぎだから反発すると主張できる水準ではない」と書きましたが、本日の反発はRSIの示唆とは関係なく、金利という外部材料で起きたことになります。裏を返せば、オシレーターは上下どちらにも余地を残したままで、指標面からは方向の手がかりが得られない局面です。なおこれらのRSIは推定であり確定値ではありません。
MACDは199.5、シグナル線は10.8と推定され、その差(ヒストグラム)は+188.7。MACDがシグナルを上回る状態は維持されています。ただし19日のMACD257.7・シグナル-36.4・ヒストグラム+294.1から、株価が890円上げた日にもヒストグラムは105.4縮小しました。MACD本体が258から200へ低下する一方、シグナル線が-36から+11へ上昇して追い上げているためです。19日の記事で「現在のペースが続けば、数営業日でデッドクロスが成立する計算」と書きましたが、本日の反発をもってしてもこの流れは止まっていません。MACDは過去の値動きの平均から作られる遅行指標であり、8月中旬の高値圏からの下落がまだ計算に効いているためです。デッドクロスを回避するには、数日以内に一段の上昇が必要という関係になります。
位置関係も確認しておきます。52週高値7万2,831円73銭からの距離は6,614円94銭(9.08%)。一方7月29日の直近安値6万448円90銭からの戻りは5,767円89銭(9.54%)です。19日時点の+8.07%から1.47ポイント拡大しました。52週高値までの距離と7月末安値からの戻り幅が、9%台でほぼ拮抗している——相場が上下のちょうど中間にいることを、この2つの数字が示しています。
市場心理
本日の市場心理を一言で表すなら、「安心ではなく、安堵」です。順に根拠を挙げます。
第一に、裾野は明確に戻りました。値上がりが全体の約84%、33業種中29業種が上昇、日経225構成銘柄の8割が上昇——19日の「値下がり74%・31業種安」から完全に反転しています。19日の記事で「本格的なリスクオフなら値下がりは70〜80%に達する」と書いた基準を裏返せば、値上がり84%は本格的なリスクオンの数字です。市場全体の値付けが下がった19日の下げに対して、本日は市場全体の値付けが戻ったと評価できます。
第二に、米国側の警戒感も後退しました。米VIX指数は19日終値で14.89と、6.00%低下して15を割り込んでいます。日本株が3.16%下げたまさにその日に、米国市場の恐怖指数は下がっていたのです。19日の下げが日本固有の事情によるものだったことを、この事実が改めて裏づけます。
それでも「安心」ではなく「安堵」と表現する理由が3つあります。
ひとつは戻りの浅さです。18〜19日の2営業日で失った3,893円83銭に対し、本日戻したのは890円37銭——22.9%にすぎません。4分の1にも届いていないのです。17日終値6万9,220円25銭からは、なお3,003円46銭(4.34%)下にあります。急落の翌日に2〜3割を戻すのは自律反発としてごく標準的な動きであり、この戻り幅だけで下落局面の終了を語ることはできません。
ふたつめは商いの細りです。売買代金は8兆6,034億円と、19日の10兆1,151億円から1兆5,117億円(14.9%)減少しました。値上がり銘柄が8割を超えた日に、売買代金が15%も減る——これは「売り物が引っ込んだので値が戻った」という需給の説明が最も素直です。本格的な買いが入る局面では、売買代金は増えます。18〜19日の10兆円台という商いの水準からは、明確に一段落ちたことになります。
みっつめは上げ幅の縮小過程です。取引時間中の高値6万6,325円32銭は10時08分につけたもので、上げ幅は一時998円90銭ありました。そこから引けにかけて108円53銭を削っています。1,000円に迫った時点で戻り待ちの売りが出たという報道もあり、上値では依然として売り物が控えていることがうかがえます。ただし削られたのは上げ幅の10.9%にとどまり、大きく押し戻されたわけでもありません。
総合すると、本日の市場心理は「下げ止まったことへの安堵はあるが、上値を買い上がる確信はない」という状態です。金利という明確な材料に反応して売り方が買い戻し、押し目買いも入ったが、新規資金の流入までは確認できない——自律反発の域を出ていないというのが、数字に照らした本日の評価になります。
翌営業日の注目ポイント
翌営業日は8月21日(金)で、通常どおりの取引日です。連休や休場の予定はありません。ただし週末を控えた金曜日であり、週末のリスクを避けるポジション調整が出やすい日柄である点は意識しておきたいところです。注目点を4つ挙げます。
第一に、6万5,650〜6万5,880円の帯を終値で維持できるか。これが最大の焦点です。本日安値6万5,652円25銭、25日線6万5,724円53銭、雲下限6万5,879円96銭が228円の幅に3つ集中しています。ここを終値で割り込むと、本日の反発は「雲の中への一時的な戻り」として片づけられ、再び雲の下が視野に入ります。逆に維持できれば、19日の雲下抜けは「だまし」だったという評価が固まります。本日終値からは337円〜565円の距離で、1日の値幅で十分届く範囲です。
第二に、75日線6万6,154円45銭を守れるか。本日の終値は75日線をわずか62円34銭上回っただけで、小幅安になるだけで再び割り込む距離です。大引けのコメントでも、25日線・75日線近辺のサポートが注目点として挙げられていました。この2本の間、6万5,724円〜6万6,154円の430円が、当面の下値ゾーンになります。
第三に、20日の米国市場、とりわけSOX指数が下げ止まるかです。SOX指数は18日-4.98%、19日-2.12%と2営業日で7.00%下落しており、主要3指数が上げた19日も唯一下げました。本日の東京市場では半導体関連が買い戻された一方、東京エレクトロンがマイナス寄与トップと明暗が分かれています。SOXが3日続落すれば、日本の半導体株の買い戻しは続きにくいでしょう。米長期債利回りが4.6%台の低下基調を保てるかも併せて確認したいところです。
第四に、金利低下が続くか、それとも一時的な押し戻しに終わるかです。新発10年国債利回りは2営業日で9bp低下して2.845%となりましたが、これは米財務省の国債買い入れ消却という需給要因が波及したもので、日銀の政策や日本の財政見通しが変わったわけではありません。本日の上げが金利低下という単一材料に依存していた以上、金利が再び上昇に転じれば、本日の買い戻しはそのまま巻き戻される可能性があります。銀行・保険が本日下落した4業種に含まれていたことは、裏を返せば金利が反転すれば、今度はこの2業種が支えに回るということでもあります。
戦略展望
本日の890円高をどう位置づけるか。結論から言えば「弱気シグナルの解除であって、強気シグナルの点灯ではない」——これが数字に照らした評価です。順に確認します。
回復した指標を並べると、25日線・75日線・雲の下限、そして52週高値からの10%安ラインです。19日に「短期から中期までのほぼすべてが崩れた」と書いた状態からは、明確に改善しました。基準線6万5,028円57銭からは1,188円22銭上に距離を取り戻し、200日線5万8,163円91銭からは8,052円88銭上。長期トレンドは引き続き無傷です。
しかし回復していない指標も3つ残っています。第一に5日線6万7,387円60銭で、終値はなお1,170円81銭下。第二に転換線6万7,129円87銭で、913円08銭下。第三に雲の上限6万8,445円73銭で、2,228円94銭下です。短期の勢いを示す指標は、まだ一つも回復していないことになります。
そのうえで、楽観に傾きすぎるべきでない理由が3つあります。
ひとつは戻り幅の小ささです。2営業日で失った3,893円83銭のうち、戻したのは22.9%。急落後の自律反発としては標準的な範囲であり、この水準では下降トレンドの中の戻りと、底入れ後の反発を区別できません。区別がつくのは、6万7,100〜6万7,550円に集中する転換線・5日線・18日終値の帯を回復してからです。
ふたつめは材料の単一性です。本日の上げは、金利低下というひとつの材料にほぼ全面的に依存しています。19日の下げが4つの材料の重なりだったことと対照的です。そしてその金利低下は、米財務省の需給対策が波及したものであり、日本の構造要因が改善したわけではありません。19日に指摘した「約30年ぶりの長期金利水準が株式のバリュエーションの前提を動かす」という論点は、9bpの低下では解消しません。2.845%は依然として歴史的な高水準です。
みっつめは商いとMACDです。売買代金は1兆5,117億円減少し、MACDのヒストグラムは890円高の日にも105.4縮小しました。需給とモメンタムの両面で、本日の上げは「勢いを取り戻した」と言える裏づけを欠いています。数営業日以内にデッドクロスが成立する計算に変わりはありません。
局面の整理としては、6万5,650〜6万5,880円(本日安値・25日線・雲下限)より上を保てるか、6万7,100〜6万7,550円(転換線・5日線)を回復できるか——この2つの帯で状況認識を分けるのが素直な組み立てです。その間の約1,250円が、当面のレンジになります。下の帯を割れば「反発は自律反発どまり」、上の帯を回復すれば「調整は終了」という読み方です。
最後に、この4営業日を振り返っておきます。17日に雲の上、18日に雲の中、19日に雲の下、20日に再び雲の中。4営業日で強気シグナルと弱気シグナルが1回ずつ点灯し、いずれも1〜2営業日で否定されました。この頻度でシグナルが反転する相場では、単一のテクニカルシグナルに大きく賭けるのは合理的ではありません。方向が定まるまでは、雲の中という中立ゾーンにいるという認識を保つのが妥当でしょう。19日に「確定するまでは仮のものとして扱う」と書いた姿勢は、本日の反発に対しても等しく適用されます。
なお本記事の数値は、当日確定分については公表値を、テクニカル指標については当サイトの計算による推定値を用いています。推定値は確定値ではありません。投資判断にあたっては、必ずご自身のチャートツールと最新の情報でご確認ください。
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