前営業日に抜いたばかりの壁の下へ、たった1日で戻りました。日経平均は1,759円52銭安の6万7,460円73銭で6日ぶり大幅反落し、終値は一目均衡表の雲の中(上限6万8,487円22銭)へ逆戻り。17日に確認した733円の上抜けは、1営業日で帳消しになりました。ところが今回も、指数と市場の裾野は一致していません。TOPIXの下落率は1.05%と日経平均の2.54%の半分以下、プライムの値下がりは783銘柄で全体の50.3%——値上がり722銘柄との差はわずか61にすぎません。アドバンテスト1銘柄で指数を約376円押し下げ、下げ幅の21%を1社が作りました。材料はトランプ大統領のイラン発言による中東緊張と長期金利2.945%という約30年ぶりの高水準。指数は壁の下に戻ったが、市場の裾野はまだ半分しか崩れていない——17日と鏡合わせの構図が、符号を変えて続いています。
本日の相場概況
8月18日の東京株式市場で日経平均株価は6営業日ぶりに大幅反落し、前営業日比1,759円52銭(2.54%)安の6万7,460円73銭で取引を終えました。下げ幅は一時1,800円を超え、17日まで5営業日続いた上昇局面に明確な区切りがつきました。
まず、前回の記事の結論から検証しましょう。17日の記事で私たちは「終値6万9,220円25銭が雲上限6万8,487円22銭を733円03銭上回った」と書き、一目均衡表の上では雲を上に抜けたと確認しました。同時に、その上抜けが「指数の上昇506円と雲の低下356円の合成」であり、壁が下りてきた分も寄与していることを指摘しました。本日、終値6万7,460円73銭は雲上限6万8,487円22銭を1,026円49銭下回りました。上抜けはわずか1営業日で否定され、日経平均は雲の中に戻ったことになります。
日足の形は、17日の完全な裏返しでした。寄り付きは6万8,847円35銭で、前営業日終値を372円90銭下回るギャップダウン。終値6万7,460円73銭との差である実体は1,386円62銭の大陰線です。高値6万9,093円20銭までの上ヒゲは245円85銭、安値6万7,368円96銭までの下ヒゲはわずか91円77銭——終値が安値をたった92円上回るだけの、実質的な安値引けでした。17日は上ヒゲ5円32銭の「ほぼ高値引け」でしたから、高値引けの翌日に安値引けが来たことになります。日中値幅は1,724円24銭で、17日の733円53銭から2.35倍に拡大しました。
一日の流れにも特徴があります。前引けは1,121円71銭安の6万8,098円54銭——前場だけで1,100円超を失ったあと、後場もさらに637円81銭下げました。前場で下げ幅の64%、後場で36%という配分で、戻りらしい戻りのないまま終日売られ続けた形です。17日が「前引けは7円64銭高、上昇の大半は後場の498円81銭」だったことと比べると、売り手と買い手の主導権が完全に入れ替わった一日でした。
ただし本日の本質は、下げの中身が指数に偏っていたことにあります。TOPIXは43.89ポイント(1.05%)安の4,140.22で反落しましたが、下落率は日経平均の2.54%の半分にも届きません。始値4,169.89、高値4,192.60(9時45分)、安値4,134.56(15時6分)で、日中の値幅は58.04ポイント(1.40%)。JPXプライム150指数は24.94ポイント(1.42%)安の1,726.94で、こちらもTOPIXと日経平均の中間に収まりました。NT倍率は前日の16.54倍から16.29倍へ0.25ポイント低下——17日に0.17ポイント上昇した分を、本日それ以上に吐き出した計算です。
騰落銘柄数が、その偏りを最も明確に示します。東証プライムの値上がりは722銘柄、値下がりは783銘柄、変わらずは51銘柄(合計1,556銘柄)。値下がりは全体の50.3%にとどまり、値上がりとの差はわずか61銘柄です。日経平均が2.54%下げた日に、市場の約半数の銘柄は上がっていたことになります。17日は値上がり627・値下がり890で、値下がりが263銘柄多い状態でした。指数が0.74%上げた日に裾野は明確に弱く、指数が2.54%下げた日に裾野はほぼ拮抗——2営業日続けて、指数と個別株が逆を向いています。
商いは大きく膨らみました。東証プライムの売買代金は概算で10兆1,564億円となり、17日の約8兆9,492億円から約1兆2,072億円(13.5%)増加。2営業日ぶりに10兆円台を回復しました。売買高も概算22億1,462万株と、17日の約20億9,249万株から約1億2,213万株増加しています。金額・株数がそろって増加した下げ——17日の「金額・株数がそろって減少した上げ」とは、出来高の裏付けの向きが逆です。下落局面で商いが膨らむのは、実際に持ち高を落とす動きが伴っていたことを示唆します。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 67,460.73円 | -1,759.52円 (-2.54%) 6日ぶり大幅反落 |
| 日経平均 高値 / 安値 | 69,093.20 / 67,368.96 | 始値 68,847.35円 (値幅1,724円・実体1,387円の大陰線) |
| 日経平均 上ヒゲ / 下ヒゲ | 245.85円 / 91.77円 | 終値は安値を92円上回るだけの実質安値引け |
| 日経平均 前引け | 68,098.54円 | -1,121.71円。下げの64%が前場・36%が後場 |
| TOPIX | 4,140.22 | -43.89 (-1.05%) 下落率は日経平均の半分以下 |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,192.60 / 4,134.56 | 始値 4,169.89 (高値9:45・安値15:06) |
| JPXプライム150指数 | 1,726.94 | -24.94 (-1.42%) TOPIXと日経平均の中間 |
| NT倍率 | 16.29倍 | 前日16.54倍から0.25ポイント低下 (17日の上昇分を吐き出す) |
| NYダウ (8/17終値) | 53,459.78 | -272.63 (-0.51%) |
| S&P 500 (8/17終値) | 7,745.06 | -40.70 (-0.52%) |
| ナスダック総合 (8/17終値) | 26,644.91 | -84.25 (-0.32%) |
| SOX指数 (8/17終値) | 12,621.00 | +203.95 (+1.64%) 米半導体だけは大幅高 |
| 米VIX指数 (8/17終値) | 15.82 | +1.57 (+11.02%) 5営業日ぶりに15台へ上昇 |
| 米ドル/円 | 159円74銭前後 | 朝方159円41銭から円安方向。株安でも円買いは限定的 |
| 新発10年国債利回り | 2.935% (一時 2.945%) | +0.015%。1996年9月以来 約30年ぶりの高水準を連日更新 |
| 米30年債利回り | 5.31% | 約19年ぶりの高水準。日米同時の長期金利上昇 |
| 東証プライム 売買代金 | 約10兆1,564億円 | 17日の約8兆9,492億円から約1兆2,072億円(13.5%)増加・2営業日ぶり10兆円台 |
| 東証プライム 売買高 | 約22億1,462万株 | 17日の約20億9,249万株から約1億2,213万株増加 |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 722銘柄 / 783銘柄 (変わらず51) | 値下がりは全体の50.3%・差はわずか61銘柄 |
| 最大のマイナス寄与 | アドバンテスト | 1銘柄で日経平均を約376円押し下げ (下げ幅の21.4%) |
| 日経平均 25日線からの乖離 | +2.43% | 17日の+5.03%から2.60ポイント縮小・過熱の目安5%を大きく下回る |
| 日経平均 一目均衡表の雲 | 上限 68,487.22 / 下限 65,879.96 | 終値は上限を1,026.49円下回り雲の中へ逆戻り |
| 日経平均 52週高値からの距離 | -5,371.00円 (-7.37%) | 52週高値 72,831.73 (6/22)。17日は-4.96% |
| 7月29日安値からの戻り | +7,011.83円 (+11.60%) | 直近安値 60,448.90 (7/29)。上昇局面自体は維持 |
マクロ・地政学の視点
本日の下げには、性質の異なる2つの材料が同時に効きました。地政学リスクと金利です。順に見ていきます。
第一が中東情勢です。トランプ大統領が「米国はイランとの合意の延長を求めない」と述べたことで、中東の緊張が一段と高まるとの見方が広がりました。前日にかけては米国とイランの覚書(MOU)の期限交渉が停滞し、イランによるタンカー拿捕が伝わったとも報じられています。これらが重なり、原油の供給途絶が長期化するとの懸念が市場に持ち込まれました。リスク回避の売りが東京市場に出たのが本日の朝の構図です。
ここで注意しておきたいのは、この材料が株式にとって一方向ではないことです。原油高は資源・エネルギー関連には追い風になります。実際、前場の時点で上昇率上位には海運業、鉱業、石油・石炭製品が並びました。値下がり銘柄が全体の半分にとどまった背景の一つが、ここにあります。中東リスクは「全面安の材料」ではなく、「セクターを選別する材料」として作用したと見るのが実態に近いでしょう。
第二が、そして本日の下げの本丸が金利です。新発10年国債利回りは一時2.945%まで上昇し、1996年9月以来、約30年ぶりの高水準を連日で更新しました。17日終値の水準から0.015%の上昇で、2.935%で引けています。17日の記事で「一時2.930%と約30年ぶりの高さ」と書いた水準を、本日さらに上回ったことになります。背景には日本の財政悪化への懸念と、日銀が早ければ9月にも利上げに動くとの観測があります。インフレへの対応上、日銀がより積極的な利上げを迫られるとの見方が、債券市場で強まっている状況です。
金利上昇は米国でも同時進行しています。米30年債利回りは5.31%まで上昇し、約19年ぶりの高水準に達しました。日米の長期金利がそろって上昇する局面——これが本日の東京市場が置かれた金利環境です。
では、なぜ金利上昇が半導体株を直撃したのでしょうか。理屈は単純です。長期金利は将来の利益を現在価値に割り引く際の分母にあたります。金利が上がれば、遠い将来の利益ほど割引が強くかかり、現在価値が小さくなる。半導体・AI関連のように「将来の高成長」を織り込んで高いPERがついている銘柄ほど、この影響を強く受けるわけです。本日はまさに「PERの高さが意識された」売りが出ました。指数寄与度の高い値がさ半導体株が集中的に売られた結果、日経平均だけが突出して下げた——日経平均2.54%安に対しTOPIX1.05%安という乖離の正体が、これです。
ここに本日最大の皮肉があります。17日の米国市場では、SOX指数が203.95ポイント(1.64%)高の1万2,621.00と大幅高だったのです。NYダウは272ドル63セント(0.51%)安、S&P500は40.70ポイント(0.52%)安、ナスダック総合は84.25ポイント(0.32%)安と主要3指数が下げるなかで、半導体だけが逆行高していました。米半導体が1.64%上げた翌日に、日本の半導体が売り主導で指数を1,759円押し下げた——本日の売りは、米半導体セクターへの評価変更ではなく、国内金利という別の要因で起きたことがここから読み取れます。17日は「同じ材料が太平洋を渡る間に符号を変えた」と書きましたが、本日はそもそも材料が別物だったわけです。
為替は、この金利環境を素直に反映しました。米ドル/円は夕方時点で159円74銭前後。朝方8時時点の159円41銭から円安方向に振れています。株価が2.5%下げた日に円が買われず、むしろ売られたのは、日銀の利上げ観測よりも米金利の上昇と原油高によるドル買いが上回ったためです。円安は輸出企業には支援材料であり、これもTOPIXの下げが日経平均より浅かった一因と考えられます。
米VIX指数は17日終値で15.82、前日比1.57ポイント(11.02%)の上昇となりました。5営業日ぶりに15台を回復しましたが、絶対水準としてはなお低位です。パニック的な水準ではないことは押さえておくべきでしょう。
セクター・個別銘柄の動き
売られたセクター・銘柄
本日の下げは半導体関連への集中砲火でした。前場時点で下落率上位に並んだのは電気機器、非鉄金属、金属製品で、金利上昇に弱い高PER業種と、素材系が混在する構図です。
主役はアドバンテストでした。同社1銘柄で日経平均を約376円押し下げ——本日の下げ幅1,759円52銭の21.4%を、たった1社が作ったことになります。17日には同社がプラス寄与度トップとして+219円64銭を稼いでいましたから、1営業日で寄与が約596円分反転した計算です。17日に「アドバンテストは最高値近辺で頑強」と書いた銘柄が、本日は下げの主犯になりました。
東京エレクトロン、キオクシアホールディングスがこれに続きました。キオクシアは17日にプライム市場全体の約32%にあたる約2兆8,420億円の売買代金を集め、前週末比15%高と急騰した銘柄です。その翌日にマイナス寄与の上位へ回った——17日の記事で指摘した「半導体セクター内部の主導株が日替わりで入れ替わる構図」が、今度は下げ方向で現れた形です。1銘柄に市場の3分の1近い資金が集中した翌日に、その銘柄が反転するというのは、集中の裏側にあるリスクをそのまま示しています。
イオンなど内需系の一角も朝方から売られました。寄り付き段階で日経平均は372円安のスタートで、そこから一貫して水準を切り下げたのが本日の値動きです。
買われたセクター・銘柄
値上がり銘柄が722あったことを忘れてはいけません。原油高を追い風に、前場時点では海運業、鉱業、石油・石炭製品が上昇率上位を占めました。中東リスクによる供給懸念が、そのまま資源・輸送関連の買い材料になった形です。
大引けにかけては商社株が買われました。三菱商事、三井物産が代表格です。商社は資源価格との連動性が高く、原油高の直接的な受益者にあたります。ディフェンシブ性の高い医薬品では武田薬品工業が上昇しました。17日には医薬品が下落率上位2位だったことを考えると、リスク回避局面でディフェンシブに資金が戻るという、教科書どおりの動きが出たといえます。
ソフトバンクグループは前場時点でプラス寄与トップ、1銘柄で約122円の押し上げでした。オリンパスも堅調に推移しています。半導体関連が総崩れとなるなかで、値がさ株のすべてが売られたわけではない——ここも本日の下げが「全面安」ではなく「選別売り」だったことを示す事実です。
整理すると、本日のセクター構図は「金利上昇で高PER半導体を売り、原油高で資源・商社・海運を買う」という、明確な資金の付け替えでした。市場全体から資金が抜けたのではなく、市場の中で移動した。売買代金が1兆2,072億円増えながら値下がり銘柄が半分にとどまったという、一見矛盾する2つの数字は、この付け替えで説明がつきます。
テクニカル分析
トレンド
本日の下げで、短期のトレンド指標は明確に悪化しました。5日移動平均は6万8,245円49銭で、終値6万7,460円73銭はこれを784円76銭(1.15%)下回りました。5日線割れは、直近の上昇局面が始まって以来はじめてのことです。
一方で、中期以上のトレンドはまだ壊れていません。25日移動平均は6万5,862円25銭、75日移動平均は6万5,989円91銭、200日移動平均は5万7,995円94銭(いずれも推定であり確定値ではありません)。終値はこの3本すべてを上回っています。25日線までの距離は1,598円48銭、75日線までは1,470円82銭。1日で1,759円下げてなお、中期の下値支持まで1,500円前後の余裕があるという位置関係です。
むしろ注目すべきは過熱の解消です。25日線からの乖離率は+2.43%で、17日の+5.03%から2.60ポイント縮小しました。17日の記事では「過熱ゾーンの目安5%をやや上回る」と書きましたが、本日の下げでその過熱は解消されています。下げが一日で完結するなら、テクニカル的にはむしろ健全な調整の形です。
サポート・レジスタンス
本日の最大の変化は一目均衡表に現れました。本日時点の雲は上限6万8,487円22銭、下限6万5,879円96銭(推定であり確定値ではありません)。終値6万7,460円73銭は、この雲の内部に位置しています。上限までは1,026円49銭、下限までは1,580円77銭——雲の厚み2,607円26銭のうち、やや上寄りの位置です。
17日に「終値で雲上限を733円03銭上抜けた」と確認した状態から、わずか1営業日で雲の中へ戻ったことになります。一目均衡表の解釈では、雲の中は「方向感のない中立ゾーン」とされます。17日に得た「雲の上=強気」というシグナルは、本日いったん取り消されたと見るのが素直でしょう。翌営業日の雲は上限6万8,445円73銭、下限6万5,879円96銭と推定され、上限が41円49銭だけ下がります。壁の位置はほぼ動かないということです。
他の一目指標では、転換線は6万7,081円88銭、基準線は6万5,028円57銭(推定であり確定値ではありません)。終値は転換線を378円85銭上回っており、この線はまだ守られています。転換線が直近の下値支持として最初に意識される水準です。
下値のメドを整理すると、(1)転換線6万7,081円88銭、(2)本日安値6万7,368円96銭、(3)25日線6万5,862円25銭、(4)雲下限6万5,879円96銭という顔ぶれになります。25日線と雲下限が17円72銭差でほぼ重なっているのが特徴で、6万5,900円近辺は複数のテクニカル指標が集中する厚い支持帯を形成しています。上値では(1)雲上限6万8,487円22銭、(2)本日始値6万8,847円35銭、(3)17日終値6万9,220円25銭が順に意識されるでしょう。
オシレーター
RSI(14日)は53.5と推定され、17日の60.9から7.4ポイント低下しました。RSI(9日)は55.0で、17日の68.5から13.5ポイントの大幅低下です。いずれも中立圏の50〜60に収まり、買われ過ぎ(70以上)からも売られ過ぎ(30以下)からも遠い水準にあります。1,759円という下げ幅の割に、オシレーターは中立へ戻っただけ——直前まで上昇が続いていたため、下落分が過去の上昇分と相殺された形です。なおこれらのRSIは推定であり確定値ではありません。
MACDは418.8、シグナル線は-111.7と推定され、その差(ヒストグラム)は+530.5。MACDがシグナルを上回る状態は維持されています。本日1日の下げでは、中期の勢い判断を反転させるには至っていないということです。ただしMACD自体は本日の下げで急低下しており、この状態があと数日続けばデッドクロスが視野に入ります。
位置関係も確認しておきます。52週高値7万2,831円73銭(6月22日)からの距離は5,371円00銭(7.37%)で、17日の-4.96%から2.41ポイント拡大。一方7月29日の直近安値6万448円90銭からの戻りは、なお7,011円83銭(11.60%)あります。7月末の急落からの回復局面そのものは、本日の下げでも維持されていると評価できます。
市場心理
本日の市場心理を一言で表すなら、「恐怖」ではなく「利益確定と資金の付け替え」でしょう。根拠は3つあります。
第一に、値下がり銘柄が全体の50.3%にとどまったこと。本格的なリスクオフなら、値下がりは70〜80%に達します。722銘柄が上昇した市場を、パニックとは呼べません。第二に、米VIXが15.82と、上昇したとはいえ依然として低位であること。20を超えていない水準は、市場が本格的な混乱を織り込んでいないサインです。第三に、株安の日に円が買われず、むしろ159円74銭まで円安に振れたこと。典型的なリスクオフでは安全通貨としての円が買われますが、本日はそうなりませんでした。
とはいえ、警戒すべき点もあります。売買代金が1兆2,072億円増えるなかでの下げは、実際にポジションが動いたことを意味します。薄商いのなかでずるずる下げたのではなく、明確な意思をもって売られたということです。また戻りらしい戻りがないまま実質安値引けとなった点は、引け際に押し目買いが入らなかったことを示しています。17日の「後場だけで498円上げた」買い意欲は、本日は姿を見せませんでした。
最も重い意味を持つのは金利です。長期金利2.945%という約30年ぶりの水準は、多くの市場参加者が経験したことのない領域です。中東リスクは事態次第で数日で剥落しうる材料ですが、金利は日銀の政策と財政に紐づく構造的な材料で、一過性で戻る性質のものではありません。本日の下げのうち、どこまでが剥落する材料でどこからが残る材料か——ここが今後の焦点になります。
翌営業日の注目ポイント
翌営業日は8月19日(水)で、通常どおりの取引日です。連休や休場の予定はありません。注目点を4つ挙げます。
第一に、雲上限6万8,487円22銭を再び上抜けられるか。これが最大の焦点です。終値でここを回復できれば、本日の下げは「雲上抜け後の押し目」という位置づけになります。回復できないまま雲の中で数日を過ごすようなら、17日の上抜けは「だまし」だったという評価に傾くでしょう。本日終値からは1,026円49銭の距離——1日で埋めるにはやや遠い水準です。翌営業日の雲上限は6万8,445円73銭とわずか41円しか下がりませんから、壁が下りてくる助けはほとんど期待できません。
第二に、転換線6万7,081円88銭を守れるか。終値はこの線を378円85銭上回っているだけで、本日の安値6万7,368円96銭からもさほど遠くありません。ここを割り込むと、次の支持は6万5,900円近辺(25日線と雲下限が重なる帯)まで1,200円ほど空きます。下値の空白地帯に入るかどうかの分水嶺です。
第三に、長期金利の動向です。2.945%を上回って上昇が続くなら、半導体をはじめとする高PER銘柄への売り圧力は継続します。逆に金利が落ち着けば、本日売られた銘柄には反発余地があります。17日の米SOX指数が1.64%高だったことを踏まえれば、本日の日本の半導体売りには、業績以外の要因が大きく含まれていたと考えられるためです。日銀の9月利上げ観測に関する報道・要人発言にも注意が必要でしょう。
第四に、18日の米国市場の反応です。中東情勢と原油価格、米長期金利(30年債5.31%)のさらなる上昇の有無、そして米半導体株が17日の逆行高を続けられるか。とりわけSOX指数の動きは、翌日の日本の半導体株を直接左右します。
またアドバンテスト・東京エレクトロン・キオクシアの3銘柄の動きは、そのまま日経平均の方向を決めるでしょう。本日アドバンテスト1銘柄で約376円動いたという事実は、裏を返せば、この銘柄が戻せば指数も戻るということでもあります。
戦略展望
本日の1,759円安をどう位置づけるか。現時点では「上昇局面のなかの調整」の範囲内と見るのが、数字に照らした素直な読みです。順に確認します。
終値は25日線を1,598円、75日線を1,470円、200日線を9,464円上回っています。7月29日安値からの戻りは、なお11.60%残っています。MACDはシグナルを上回ったままで、RSIは中立圏。崩れたのは5日線と雲上限という短期の指標だけです。25日線乖離率が+5.03%から+2.43%へ下がったことは、むしろ短期的な過熱の解消にあたります。
加えて下げの内訳が偏っていることも重要です。アドバンテスト1銘柄で下げ幅の21.4%、値下がり銘柄は半分の50.3%、TOPIXの下落率は日経平均の半分以下。市場全体が売られたのではなく、指数寄与度の高い一部の銘柄が売られたのが本日です。この種の下げは、原因となった銘柄が戻れば指数も戻りやすいという性質を持ちます。
ただし楽観に傾きすぎるべきではない理由も2つあります。
ひとつは金利の構造性です。約30年ぶりの長期金利水準は、株式のバリュエーションの前提そのものを動かします。高PER銘柄が指数の中核を占める日経平均にとって、金利上昇は繰り返し重石になりうる材料です。日銀の9月利上げ観測が現実味を帯びるほど、この圧力は強まります。
もうひとつは集中のリスクです。17日にキオクシア1銘柄がプライム売買代金の約32%を占めたこと、本日アドバンテスト1銘柄が下げ幅の21.4%を作ったこと。2営業日連続で、たった1銘柄が市場全体の説明変数になっています。これは指数の値動きが特定銘柄に極端に依存している状態であり、上下どちらにも振れやすい構造を意味します。本日の値幅1,724円は17日の733円の2.35倍——変動そのものが大きくなっている点は意識しておくべきでしょう。
局面の整理としては、6万8,487円(雲上限)より上か、6万7,082円(転換線)より下かで状況認識を分ける、というのが素直な組み立てです。その間の約1,400円は、一目均衡表が「中立」と呼ぶゾーンにあたります。17日に上抜けたばかりの壁の下で、市場がどちらを選ぶか——方向が決まるまでは、17日の強気シグナルも本日の弱気シグナルも、どちらも仮のものと扱うのが妥当です。
なお本記事の数値は、当日確定分については公表値を、テクニカル指標については当サイトの計算による推定値を用いています。推定値は確定値ではありません。投資判断にあたっては、必ずご自身のチャートツールと最新の情報でご確認ください。
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