前回の記事で「最大の焦点」とした課題が、翌営業日に決着しました。日経平均は506円45銭高の6万9,220円25銭で5日続伸し、終値で一目均衡表の雲上限6万8,487円22銭を733円03銭上抜けました。上ヒゲはわずか5円32銭の、ほぼ高値引け——上ヒゲ797円・実体97円の陰線だった前営業日の、そのまま裏返しの日足です。ところが中身は正反対でした。TOPIXは9日ぶり反落、プライムの値下がり銘柄は890で全体の57%、33業種のうち25業種が下落。キオクシア1銘柄の売買代金がプライム全体の約32%を占め、上位2銘柄だけで指数を約409円押し上げました。長期金利は一時2.930%と約30年ぶりの高さ。指数は壁を抜き、市場の裾野は逆を向いた——前営業日と正確に反対の一日です。
本日の相場概況
8月17日の東京株式市場で日経平均株価は5日続伸し、前営業日比506円45銭(0.74%)高の6万9,220円25銭で取引を終えました。5営業日連続の上昇は、8連騰となった6月11日〜22日以来です。7日終値6万5,606円71銭からの5営業日の上昇幅は3,613円54銭(5.51%)に達しました。
まず、前回の記事が残した宿題から片づけましょう。14日の記事で私たちは「129円」という数字を挙げました。終値と一目均衡表の雲上限との距離です。「この129円を終値で埋められるかどうかが次の焦点」と書きました。本日、終値6万9,220円25銭は雲上限6万8,487円22銭を733円03銭上回りました。一目均衡表の上では、日経平均は雲を上に抜けたことになります。
ただし、この決着の内訳は正確に見ておく必要があります。雲上限そのものが、前営業日の6万8,842円80銭から6万8,487円22銭へ355円58銭下がりました。733円の上抜けのうち、指数の上昇が506円、雲の低下が356円——壁が下りてきた分も寄与しているということです。とはいえ終値で雲の上に出たという事実は変わりません。
日足の形は、前営業日の完全な裏返しでした。始値6万8,882円06銭に対して終値6万9,220円25銭——実体338円19銭の陽線です。上ヒゲはわずか5円32銭で、高値6万9,225円57銭のほぼ真下で引けた「実質的な高値引け」。14日は上ヒゲ797円・実体97円の陰線でしたから、上ヒゲが実体の8.2倍だった日の翌日に、上ヒゲが実体の1.6%しかない日が来たことになります。下ヒゲは390円02銭、日中値幅は733円53銭で、14日の1,137円09銭から大きく縮みました。
一日の流れも前営業日と逆でした。寄り付きは6万8,882円06銭と168円26銭のギャップアップでしたが、前場は様子見ムードで前週末終値を挟んで一進一退。安値6万8,492円04銭は前営業日終値6万8,713円80銭を221円76銭下回り、本日空けたマドはいったん埋められました。前引けは7円64銭高の6万8,721円44銭——正午時点では、ほぼ前週末と変わらない水準だったのです。後場に入って値がさ半導体株に買いが厚みを加え、取引終盤に一段高となりました。前引けから大引けまでの498円81銭が、本日の上昇のほぼ全てです。14日が「朝が最も強く、あとは売られ続けた日」なら、本日は「午後だけで上げた日」でした。
そして本日の本質は、指数と市場の裾野が正反対を向いたことにあります。TOPIXは13.09ポイント(0.31%)安の4,184.11で9日ぶりの反落。始値4,204.36、高値4,207.16、安値4,169.75で、終値は始値を20.25ポイント下回る陰線です。14日に付けた最高値4,197.20から、連日の記録更新は途切れました。日経平均が陽線で雲を抜けた日に、TOPIXは陰線で9連騰を止めた——14日の「日経平均が陰線でTOPIXが最高値」から、符号がそっくり入れ替わったことになります。
騰落銘柄数が、その乖離を最も端的に示します。東証プライムの値上がりは627銘柄、値下がりは890銘柄、変わらずは39銘柄。値下がりが全体の57%を占め、値上がりを263銘柄上回りました。14日は値上がり1,124・値下がり401で比率2.80倍でしたから、わずか1営業日で完全に反転したことになります。東証33業種のうち上昇はわずか8業種、下落は25業種。14日の「19業種上昇」から、こちらも裏返りました。ストップ高は11銘柄、ストップ安は3銘柄です。
商いは細りました。東証プライムの売買代金は概算で8兆9,492億円となり、14日の約10兆3,156億円から約1兆3,664億円減少。7月24日以来の9兆円割れです。売買高も概算20億9,249万株と、14日の約24億4,922万株から約3億5,673万株減少しました。金額・株数がそろって減少——決算発表シーズンの通過と、市場参加者の減少が同時に効いた格好です。
この細った商いのなかで、異常な集中が起きていました。キオクシアホールディングス1銘柄の売買代金が約2兆8,420億円——プライム市場全体の約32%にあたります。東証プライムに上場する1,556銘柄の売買代金の3分の1近くを、たった1銘柄が占めたということです。同社株は前週末比15%高と急騰しました。東証グロース市場250指数は5.46ポイント(0.72%)高の763.46と続伸しています。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 69,220.25円 | +506.45円 (+0.74%) 5日続伸 |
| 日経平均 高値 / 安値 | 69,225.57 / 68,492.04 | 始値 68,882.06円 (値幅734円・上ヒゲ5円の陽線) |
| 日経平均 前引け | 68,721.44円 | +7.64円。上昇の大半は後場の498円81銭 |
| TOPIX | 4,184.11 | -13.09 (-0.31%) 9日ぶり反落 |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,207.16 / 4,169.75 | 始値 4,204.36 (終値は始値を20.25下回る陰線) |
| 東証グロース市場250指数 | 763.46 | +5.46 (+0.72%) 続伸 |
| NYダウ (8/14終値) | 53,732.41 | -107.58 (-0.20%) 反落 |
| S&P 500 (8/14終値) | 7,785.76 | -13.23 (-0.17%) 最高値更新の翌日に小反落 |
| ナスダック総合 (8/14終値) | 26,729.16 | -73.86 (-0.28%) |
| SOX指数 (8/14終値) | 12,417.05 | -38.95 (-0.31%) 主要4指数がそろって小反落 |
| 米ドル/円 | 159円13銭前後 | -0.21円 (-0.13%) 3営業日連続の小動き |
| 新発10年国債利回り | 一時 2.930% | 約30年ぶりの高水準。7月の「骨太ショック」時を上回る |
| 東証プライム 売買代金 | 約8兆9,492億円 | 14日の約10兆3,156億円から約1兆3,664億円減少・7月24日以来の9兆円割れ |
| 東証プライム 売買高 | 約20億9,249万株 | 14日の約24億4,922万株から約3億5,673万株減少 |
| キオクシアHD 売買代金 | 約2兆8,420億円 | プライム市場全体の約32%を1銘柄で占める |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 627銘柄 / 890銘柄 (変わらず39) | 値下がりが全体の57%・値上がりを263銘柄上回る |
| ストップ高 / ストップ安 | 11銘柄 / 3銘柄 | 14日の18銘柄 / 3銘柄から減少 |
| 東証33業種 上昇 / 下落 | 8業種 / 25業種 | 14日の19業種上昇から反転 |
| 上昇率上位5業種 | 非鉄金属 / 海運業 / ガラス・土石 / 金属製品 / 石油・石炭 | 景気敏感・素材関連が上位を占める |
| 下落率上位5業種 | パルプ・紙 / 医薬品 / 卸売業 / その他製品 / 小売業 | 医薬品は2営業日連続で下落上位 |
| 日経平均 プラス寄与上位5銘柄 | アドテスト / キオクシア / SBG / 東エレク / フジクラ | 合計で約708円の押し上げ (上げ幅506円の140%) |
| 上位2銘柄の押し上げ | アドテスト +219.64円 / キオクシア +190.07円 | 2銘柄だけで約409円・上げ幅の81% |
| 日経平均 マイナス寄与上位5銘柄 | ファストリ / ソニーG / KDDI / 日東電 / トレンド | 合計で約98円の押し下げ |
| 米VIX指数 (8/14終値) | 14.25 | -0.38 (-2.60%) 15を下回る低位が続く |
| 日経平均VI | 29.47 | -1.49 (-4.81%) 高値31.99 / 安値29.47・30割れ |
| NT倍率 | 16.54倍 | 前日16.37倍から0.17ポイント上昇 |
| 日経平均 25日線からの乖離 | +5.03% | 過熱ゾーンの目安5%をやや上回る (14日は+4.35%) |
| 日経平均 52週高値からの距離 | -3,611.48円 (-4.96%) | 52週高値 72,831.73 (6/22)。14日は-5.99% |
| 7月29日安値からの戻り | +8,771.35円 (+14.51%) | 直近安値 60,448.90 (7/29) |
マクロ・地政学の視点
本日の東京市場を動かした力は、海外要因と国内要因が正面から綱引きした形でした。順に見ていきます。
まず追い風のほうです。前週末14日の米国市場は主要4指数がそろって小反落しました。NYダウは107ドル58セント(0.20%)安の5万3,732ドル41銭、S&P500は13.23ポイント(0.17%)安の7,785.76、ナスダック総合は73.86ポイント(0.28%)安の2万6,729.16、SOX指数は38.95ポイント(0.31%)安の1万2,417.05。13日にS&P500が最高値を更新した翌日の小幅な利益確定という位置づけで、下落率はいずれも0.2〜0.3%程度にとどまっています。売り材料は中東情勢の不透明感と、8月の米消費者態度指数が市場予想を下回ったことでした。
ここが本日の妙味です。米国株は下げたのに、東京市場はその下げをポジティブに解釈しました。理由は「低調な経済指標」の中身にあります。足元の米国ではインフレ再燃なら追加利上げもありうるという警戒が相場の重石でした。8月の消費者態度指数が予想を下回ったことは、景気減速の証拠であると同時に、FRBによる早期の追加利上げ観測を後退させる材料でもあります。米国では「弱い指標=株安」と受け止められ、東京では「弱い指標=利上げ観測の後退=株高」と読み替えられた——同じ材料が太平洋を渡る間に符号を変えた格好です。
個別の追い風もありました。投資家向け説明会を実施した米サンディスクに対する市場の評価が好転し、同社株が値を戻したことで、連動性の高いキオクシアホールディングスがこれに追従しました。また前週末の米コーニングの上昇が、フジクラなど東京の電線株を押し上げる効果をもたらしています。企業の4〜6月期決算発表シーズンを通過し、総じて好業績が目立ったことが買い安心感につながった面もあるようです。
さて、ここからが向かい風です。そして本日、それは前営業日よりはるかに強くなりました。
日本の新発10年国債利回り(長期金利)は17日、一時2.930%まで上昇しました。水準としては約30年ぶりの高さです。7月の「骨太ショック」時の水準を上回り、節目の3%に一段と接近しました。注意すべきは、本日はこれといった新たな債券売りの材料が見当たらないなかでの金利上昇だったという点です。材料なしで金利が約30年ぶりの高さまで上がる——これは需給そのものが変質しつつあることを示唆します。
背景は二つあります。第一に日銀の利上げ観測です。前週以降、9月の金融政策決定会合で政策金利が引き上げられるとの観測が広がっていました。第二に財政要因です。財務省は8月末に2027年度予算に関する各省庁からの概算要求を締め切ります。積極財政政策を推進する高市早苗政権のもと、片山さつき財務相は成長分野や危機管理投資に関して要求額の「シーリング(上限)」を設けない方針を7月末の段階で示しています。すでに防衛省が過去最大規模の概算要求をする方針で調整に入ったと報じられており、8月は例年、概算要求に関する報道が相次ぐ時期です。
市場関係者からは「各省庁からの大規模な概算要求に関する報道が相次げば、財政悪化シナリオがハヤされることになるだろう。円債売りの加速に伴う金利上昇が株式相場の圧迫要因となる可能性が意識されている」(国内証券)との声が出ています。財政要因と利上げ観測の「コンボ」による金利上昇は、欧州主要国でも発生しており、安直な財政出動に債券売りで歯止めを掛けようとする「債券自警団」が世界各国のマーケットで躍動する余地が広がりつつある、という文脈です。これは日本固有の問題ではなく、グローバルな現象として捉えるべきでしょう。
そしてこの金利上昇が、本日のTOPIX反落と値下がり銘柄890という数字の背景にあります。金利上昇は、将来キャッシュフローの割引率を上げることで、成長期待に依存する銘柄と、内需のディフェンシブ銘柄の双方に重石となります。下落率上位にパルプ・紙、医薬品、卸売業、小売業といった内需・ディフェンシブが並んだのは、この力学と整合的です。日経平均は値がさ半導体5銘柄が708円押し上げたことで陽線を保ちましたが、その5銘柄を除いた東京市場は、金利上昇に押されて静かに下げていた——これが本日の実像です。
為替は3営業日連続で膠着しました。ドル円は159円13銭前後で、前営業日比0.21円(0.13%)のドル安・円高です。米国では追加利上げ観測が後退(ドル安要因)、日本では9月利上げ観測と長期金利上昇(円高要因)——本来なら円高に振れておかしくない組み合わせですが、実際の値動きはわずかでした。160円の節目を前にした介入警戒と、根強い円売り需要が拮抗していると考えるのが自然でしょう。3営業日続けてほとんど動かない為替は、次の材料でどちらかに振れやすい状態が溜まっていることも意味します。
ボラティリティ指標は落ち着きました。日経平均VIは29.47で前日比1.49ポイント(4.81%)の低下。30の節目を割り込みました。ただし日中の動きには含意があります。高値は31.99で、イラン情勢の不透明感や国内長期金利の上昇を警戒し、午前の時間帯は前週末の水準を上回って推移していました。株価の下値が堅いことが確認されるにつれ警戒ムードが後退し、取引終了時に低下幅を広げた——安値29.47がそのまま終値です。米VIX指数は8月14日終値で14.25と前日比0.38ポイント(2.60%)低下。日経平均VIは米VIXの2.07倍で、14日の2.17倍から縮小しましたが、依然として日本株固有のリスクプレミアムは大きい状態です。
なお中東・イラン情勢の先行き不透明感は引き続き残っています。業種別で石油・石炭が上昇率5位、非鉄金属が上昇率トップに入っている点は、資源価格への警戒が背景にある可能性を示唆します。参考までに17日の中国・上海総合指数は55.4771ポイント高の3,982.6535と上昇しました。
セクター・個別銘柄の動き
買われたセクター・銘柄
東証33業種のうち上昇はわずか8業種、下落は25業種でした。上昇率の上位5業種は(1)非鉄金属、(2)海運業、(3)ガラス・土石、(4)金属製品、(5)石油・石炭。景気敏感・素材関連が上位を占める顔ぶれで、14日に下落率4位だった非鉄金属が本日は上昇率トップに逆転しました。海運業は14日の上昇率2位から2営業日連続で上位です。
指数への寄与は本日、極端なまでに半導体主導でした。プラス寄与度上位5銘柄はアドバンテスト、キオクシアホールディングス、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、フジクラで、5銘柄の押し上げ効果は合計で約708円。本日の上げ幅506円45銭の140%にあたります。とりわけアドバンテストが+219円64銭、キオクシアが+190円07銭で、この2銘柄だけで約409円71銭——上げ幅の81%を稼ぎました。残る1,500銘柄超が正味で200円分を押し下げた計算になります。
本日の主役はキオクシアホールディングスです。前週末比15%高と急騰し、後場に上げ幅を拡大しました。売買代金は約2兆8,420億円で、プライム市場全体の約32%。市場の3分の1近い資金が1銘柄に吸い込まれたことになります。材料は米サンディスクの投資家向け説明会後の市場評価の好転で、同社株が値を戻すなかキオクシアもこれに追従しました。14日に「サンディスクの13%超急伸を受けた買い」と書いた流れが、週明けにさらに増幅された形です。同社は東証プライムの値上がり率でも4位に入りました。
アドバンテストは最高値近辺で頑強に推移し、プラス寄与度トップ。フジクラが買われ、ソフトバンクグループも堅調でした。フジクラの上昇は、前週末の米コーニングの上昇を受けた電線株全般への買いが背景です。イビデン、東京エレクトロンも上値を追いました。14日にマイナス寄与の1位・2位だったイビデンと東エレクが、本日はそろって上昇——半導体セクター内部の主導株が日替わりで入れ替わる構図は本日も続いています。
素材・重工では三菱重工業が買いを集め、JX金属も物色人気。SUMCOも上昇しました。非鉄金属が上昇率トップとなった背景にはJX金属などの上昇があります。
そして本日、今後の相場を考えるうえで見逃せない動きがありました。ホンダが一時3%を超す上げとなり、年初来高値に接近したことです。直近で証券会社の目標株価引き上げが相次いでいる銘柄で、4〜6月期決算を経て内需系や自動車・化学などバリューセクターの一角において、好業績銘柄を中心に再評価の動きが相次ぐことも想定されています。過剰流動性相場が続くなかでの金利上昇は、バリュー株には追い風という整理です。金利上昇はグロースに逆風だが、バリューには順風——本日の相場を押し下げた要因が、別のセクターにとっては買い材料になりうる点は覚えておく価値があります。
東証プライムの値上がり率上位10傑は(1)プロシップ、(2)FIG、(3)ギフティG、(4)キオクシア、(5)Appier、(6)IBJ、(7)シナネンHD、(8)日東紡、(9)アイスタイル、(10)山一電機という並びで、プロシップが値上がり率トップ。日東紡績が大幅高となりました。ストップ高は11銘柄で、14日の18銘柄からは減少しています。
個別材料株では、決算を手掛かりにした買いが続きました。
- JDSC [東証G] — 27年6月期は営業益48%増を計画。
- アトラスT [東証G] — 26年12月期営業益予想を引き上げ、初配当を実施へ。
- レントラクス [東証G] — 第1四半期営業利益2.4倍で上期計画を大幅超過。
- エンバイオH [東証S] — 4〜6月期経常益14倍をポジティブ視。
- エニマインド [東証G] — 法人ブランド支援好調で6月中間期最終益3.1倍。
- アクシスC [東証G] — 27年6月期最終益73%増・6円増配計画を評価。
- LiNKX [東証G] — AXベースモダナイゼーション好調で今期営業益57%増を計画。
- ギフティG [東証P] — 上期好決算と自社株買いを評価し、値上がり率3位。
- IBJ [東証P] — 26年12月期業績予想および配当予想を上方修正し、値上がり率6位。
- 日精蝋 [東証S] — 上期決算を踏まえて通期業績予想を上方修正。
売られたセクター・銘柄
下落率の上位5業種は(1)パルプ・紙、(2)医薬品、(3)卸売業、(4)その他製品、(5)小売業でした。内需・ディフェンシブが並ぶ顔ぶれで、医薬品は14日の下落率トップに続いて2営業日連続で上位。14日に上昇率トップだった「その他製品」が、本日は下落率4位に逆戻りしました。ゲーム・エンタメ関連の資金が1営業日で出入りする回転の速さは、13日→14日→17日と3営業日続いています。
メガバンクが冴えない値動きでした。三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループがともに軟調です。ここは解釈に注意が必要な部分でしょう。長期金利が約30年ぶりの高水準まで上昇した日に、その最大の受益者であるはずのメガバンクが売られた——教科書どおりなら銀行株は買われるはずの日です。考えられる理由は、金利上昇が「日銀の正常化」ではなく「財政悪化による国債売り」として受け止められた可能性、あるいはすでに織り込み済みで利益確定が優先された可能性です。いずれにせよ、金利上昇が単純な銀行株買いにつながらなかったことは、本日の重要な観察事実として記録しておくべきでしょう。
日経平均の押し下げ役はファーストリテイリング(-24円14銭)で、以下ソニーグループ(-22円12銭)、KDDI(-17円70銭)、日東電工(-16円93銭)、トレンドマイクロ(-16円73銭)と続きます。マイナス上位5銘柄の押し下げ効果は合計で約98円。プラス上位5銘柄の約708円に対して14%にすぎません。14日は「プラス471円対マイナス178円(38%)」でしたから、本日は上下の非対称が一段と極端になったことになります。ソニーGは14日にプラス寄与4位だった銘柄で、1営業日でマイナス2位へ。トレンドマイクロは14日のストップ安に続いて2営業日連続でマイナス寄与上位です。
ハイテク・IT関連では下げが目立ちました。NECが大きく利食われ、日立製作所の下げも目立ちます。任天堂も売りに押されました。NECは14日に上昇した銘柄で、任天堂も14日は「その他製品」上昇の主役の一角でした。半導体の中核5銘柄以外のハイテクは、本日ほぼ全面的に売られたと言えます。
個別で最も痛烈だったのはアルバックです。ストップ安に売り込まれ、値下がり率2位。27年6月期の最終益予想が11%増にとどまり、物足りなさが意識されました。半導体製造装置という「本日最も買われたセクター」に属しながらストップ安という点が象徴的です。半導体だから買われるのではなく、AI・メモリーの中核と目される銘柄だけが買われている——セクター内の選別は、もはや選別というより分断に近い水準に達しています。
値下がり率トップは日本電子でした。コムチュアも大幅安で、今期純利益を下方修正したことが嫌気されています。日機装、GMOペイメントゲートウェイ、GMOインターネットグループの下げも目立ちました。東証プライムの値下がり率上位10傑は(1)日本電子、(2)アルバック、(3)日機装、(4)GMO-PG、(5)コムチュア、(6)弁護士ドットコム、(7)GMOインターネット、(8)エアトリ、(9)トレンドマイクロ、(10)恵和という並びです。弁護士ドットコムは14日に値上がり率4位だった銘柄で、ここでも1営業日での反転が起きています。
値上がり627・値下がり890という数字を、もう一度置いておきます。指数は506円上げましたが、あなたの保有銘柄が下がっていた確率のほうが高い一日でした。14日とは正反対です。
テクニカル分析
トレンド
本日の日足は実体338円19銭の陽線です。上ヒゲはわずか5円32銭、下ヒゲは390円02銭、日中値幅は733円53銭。上ヒゲが実体に占める割合は1.6%にすぎず、実質的な高値引けと言えます。14日は「実体97円・上ヒゲ797円(実体の8.2倍)の陰線」でしたから、2営業日で日足の形が完全に反転しました。下ヒゲ390円が実体を上回っている点も特徴で、前場に一度下押しした後に切り返した一日の流れを、そのまま形にしています。
マドの状況は整理が必要です。本日は168円26銭のギャップアップで始まりましたが、安値6万8,492円04銭が前営業日終値6万8,713円80銭を221円76銭下回り、本日のマドはその日のうちに埋められました。3営業日連続のマド空けでしたが、埋め戻されたのは今回が初めてです。一方で14日に空けた502円58銭のマド(6万8,308円59銭〜6万8,811円17銭)は、本日の安値が入り込んだことで上から319円13銭分が埋まり、残り183円45銭が未埋めのまま残りました。13日のマド(482円11銭)は依然として手つかずです。14日時点で「985円分のマドが未埋めで積み上がっている」と書いた状態は、本日の下押しで一部解消されました。
移動平均線はすべて上向きで、終値はそのすべての上にあります。5日移動平均線6万8,147円38銭を1,072円87銭(1.57%)上回り、25日移動平均線6万5,906円13銭を3,314円12銭(5.03%)上回り、13週相当(65日)移動平均線6万6,560円50銭を2,659円75銭(4.00%)上回り、75日移動平均線6万5,897円60銭を3,322円65銭(5.04%)上回り、200日移動平均線5万7,905円21銭を1万1,315円04銭(19.54%)上回っています。
ここで本日はっきりと過熱側に振れた指標があります。25日移動平均線からの上方乖離率が5.03%となり、市場で過熱ゾーンの目安とされる5%をやや上回りました。14日は4.35%でしたから、1営業日で0.68ポイント拡大したことになります。一方で5日線からの乖離は1.91%から1.57%へ縮小しました。短期(5日)の過熱は解消に向かい、中期(25日)の過熱は進行している——時間軸によって過熱の度合いが逆方向に動いているのが現在の姿です。
そして本日最大のテクニカル上の出来事は、一目均衡表の雲を終値で上抜けたことです。雲上限(先行スパンA)は6万8,487円22銭、終値6万9,220円25銭はこれを733円03銭(1.07%)上回りました。14日は「高値では765円上抜けたのに終値では129円下」という結果でしたが、本日は高値も安値も終値も、すべてが雲上限より上です。本日の安値6万8,492円04銭ですら、雲上限を4円82銭上回っていました。一日を通して一度も雲の中に戻らなかったということになります。
ただし前述のとおり、雲上限そのものが6万8,842円80銭から6万8,487円22銭へ355円58銭低下しています。733円の上抜け幅のうち、指数の上昇による寄与が506円45銭、雲の低下による寄与が355円58銭——約半分は壁が下りてきたことによるものです。一目均衡表のシグナルとしては有効ですが、「相場が力ずくで壁をこじ開けた」と読むのはやや過大評価でしょう。なお雲下限(先行スパンB)は6万5,726円60銭で変わらず、転換線は6万6,236円34銭(前営業日6万6,155円86銭から80円48銭上昇)、基準線は6万5,028円57銭で横ばい。転換線が基準線の上にある強気配列は維持されています。
フィボナッチ的な節目も明確に通過しました。6月22日の史上最高値7万2,831円73銭から7月29日の直近安値6万448円90銭までの下げ幅1万2,382円83銭に対し、3分の2戻し水準は6万8,704円12銭。14日の終値はこれをわずか9円68銭上回っただけでしたが、本日は516円13銭上回りました。「かろうじて超えた」から「明確に超えた」へ変わっています。次のフィボナッチ節目は78.6%戻しの7万181円80銭で、終値の961円55銭上です。
中期の位置も更新されました。7月29日安値からの戻りは8,771円35銭(14.51%)。52週高値7万2,831円73銭(6月22日)までは3,611円48銭(4.96%)で、14日時点の5.99%から1.03ポイント縮まり、初めて5%を切りました。ただし本日の高値6万9,225円57銭は、7月10日の高値6万9,374円86銭に149円29銭届いていません。14日の高値6万9,608円24銭は7月10日高値を上抜けていたので、日中高値のレベルでは、本日は14日に及ばなかったことになります。終値では大幅に上、高値では届かず——この2営業日は、まったく違う形で同じ価格帯を通過しました。次に控える日中高値の節目は7月6日の7万384円59銭です。
サポートとレジスタンス
以下の水準は、確定日足から算出した8月17日終値時点の計算値です。
- 第1サポート: 6万8,704円〜6万8,492円 — 3分の2戻し水準6万8,704円12銭と本日の安値6万8,492円04銭の帯です。終値の516円〜728円下。本日の安値は雲上限のわずか4円82銭上にあり、この帯を割り込むことは、そのまま雲の中への逆戻りを意味します。
- 第2サポート: 6万8,487円 — 一目均衡表の雲上限。終値の733円下です。本日の上抜けが本物かどうかを判定する最重要ラインで、終値でここを割り込めば「ダマシ」となります。雲上限は日々変動する点にも注意が必要です。
- 第3サポート: 6万8,309円〜6万8,057円 — 14日のマド下端(13日終値)と25日ボリンジャーバンド+1σの帯です。終値の911円〜1,163円下。+1σは統計的な強気圏の下限にあたり、ここを割ると14日・13日のマド埋めが本格的に意識されます。
- 第4サポート: 6万8,147円〜6万6,561円 — 5日移動平均線と13週相当(65日)移動平均線の帯です。終値の1,073円〜2,660円下。5営業日で3,614円上げた後の押し目として、最初に意識される中期の支持帯になります。
- 第5サポート: 6万5,906円〜6万5,727円 — 25日移動平均線と一目均衡表の雲下限が180円幅で重なる帯です。終値の3,314円〜3,494円下。ここを終値で割り込めば、上昇トレンドそのものの再評価が必要になります。
- 第1レジスタンス: 6万9,226円〜6万9,375円 — 本日の高値6万9,225円57銭と7月10日の高値6万9,374円86銭です。終値の5円〜155円上。本日の高値は終値のわずか5円32銭上で、ごく小幅な上昇で更新できる距離。7月10日高値を終値ベースで上回れるかが次の関門です。
- 第2レジスタンス: 6万9,608円 — 14日の高値。終値の388円上です。14日に付けた上ヒゲの先端にあたり、ここを超えられれば「上ヒゲの否定」として強気材料になります。逆に届かない日が続くと、14日の上ヒゲが戻り天井の目印として定着します。
- 第3レジスタンス: 7万円〜7万208円 — 心理的節目の7万円と25日ボリンジャーバンド+2σの7万207円84銭です。終値の780円〜988円上。14日時点では+2σが7万3円25銭で7万円とほぼ完全に一致していましたが、標準偏差の拡大により+2σが7万208円へ切り上がり、208円の幅を持つ帯に変わりました。
- 第4レジスタンス: 7万182円〜7万385円 — 78.6%戻しの7万181円80銭と7月6日の高値7万384円59銭です。終値の962円〜1,164円上。その先には52週高値7万2,831円73銭(6月22日)が控えます。
オシレーターと移動平均
MACDはプラス圏に定着しました。14日の記事で「プラス圏に浮上した直後に押し戻されるとダマシとなるため、翌営業日以降の定着を見たい」と書いた点は、クリアされた形です。MACDは+401.03で、前営業日の+193.40から207.63の改善。2営業日でほぼ倍増しました。シグナルは-242.08で、前営業日の-402.86から160.78改善しています。ヒストグラムは+643.11で、前営業日の+596.25から46.86拡大し、8月6日のゴールデンクロス以降7営業日連続で幅を広げています。シグナルがゼロを回復するにはあと242.08ポイントで、14日時点の402.86から距離が4割縮まりました。現在のペースなら数営業日で到達する計算になります。
一方、短期のオシレーターは再び過熱側に振れました。RSI(9日)は89.88で、前営業日の81.29から8.59ポイント上昇。14日にいったん低下した短期RSIが、本日は90に迫る水準まで戻りました。80超は明確な過熱圏であり、90近辺は歴史的にも高い水準です。
中期のRSI(14日・単純)は65.45で、前営業日の64.97から0.48ポイントの小幅上昇にとどまりました。ワイルダー式では60.86です。買われ過ぎとされる70にはあと4.55ポイント。短期RSIが8.59ポイント上昇した日に、中期RSIは0.48ポイントしか動かなかった——本日の上昇が、中期のモメンタムをほとんど押し上げていないことを示す数字です。
ストキャスティクスは指標間で方向が割れました。ファースト%K(9日)は94.25と前営業日の87.05から7.20ポイント上昇した一方、スロー%K(ファースト%D)は91.37と93.06から1.69ポイント低下、スロー%Dは93.88と95.29から1.41ポイント低下しました。最も反応の速い指標だけが上昇し、平滑化された指標は低下を続けている——いずれも90超の高水準にあり、上値余地は数値上ほとんど残っていません。
ボリンジャーバンドでは、25日ベースの中心線が6万5,906円13銭、+1σが6万8,056円98銭、+2σが7万207円84銭、-1σが6万3,755円27銭です(標準偏差2,150円86銭)。本日終値は+1σを1,163円27銭上回り、14日の788円64銭から乖離をさらに拡大させました。+2σまでは987円59銭です。標準偏差は2,078円09銭から2,150円86銭へ72円77銭拡大しており、バンドは開き続けています。バンドが開いている局面は、トレンドが出ている証拠であると同時に、反転時の値幅も大きくなりやすい点に留意が必要です。
NT倍率(日経平均÷TOPIX)は16.54倍で、前営業日の16.37倍から0.17ポイントの大幅上昇となりました。14日は0.01ポイント、13日は0.05ポイントの上昇でしたから、本日の0.17は突出しています。日経平均が0.74%上昇する一方でTOPIXが0.31%下落した結果で、値がさ株偏重が数字にそのまま表れました。NT倍率の急上昇は、指数の上昇が一部銘柄に依存していることの端的な指標です。
日経平均VIは29.47で前日比4.81%低下し、30の節目を割り込みました。日中高値31.99から引けにかけて低下幅を広げ、安値がそのまま終値となっています。米VIX指数14.25の2.07倍で、14日の2.17倍からは縮小しました。指数が上昇し、変動率の予想も低下した——14日の「上昇中に警戒が高まった」動きとは逆で、本日の上昇のほうが市場に素直に受け入れられたことを示します。
なお、本項の移動平均線・一目均衡表・ボリンジャーバンド・RSI・ストキャスティクス・MACDおよびフィボナッチ戻し水準の各数値は、確定日足から当サイトが算出した計算値です。オシレーター類および一目均衡表は算出方法(平滑化の手法や先行スパンのずらし方)によってチャートツールごとに表示値が異なる場合があり、推定であり確定値ではありません。売買判断にあたっては必ずご自身のチャートツールで実数値をご確認ください。
市場心理
本日の市場心理を一言で表すなら「指数が壁を抜けた日に、市場の裾野は逆を向いた」です。
14日の記事で、私たちは「129円」という数字を挙げ、「この129円を終値で埋められるかどうかが次の焦点」と書きました。本日、その答えは出ました。終値は雲上限を733円上抜け、しかも一日を通して一度も雲の中に戻らなかったのです。テクニカルの教科書どおりなら、これは中期のトレンド転換シグナルです。
ところが、この日の市場は、指数が示すほど強くありませんでした。それどころか、14日とは正反対に弱かったのです。数字を並べます。値上がり627・値下がり890(値下がりが57%)、33業種中25業種が下落、TOPIXは9日ぶり反落、売買代金は7月24日以来の9兆円割れ、売買高も約3億5,673万株減少、ストップ高は18から11へ減少。裾野の広がりを示す指標が、ほぼ例外なく悪化しました。14日に「値がさ半導体への極端な集中という懸念は明確に緩和された」と書きましたが、その緩和はわずか1営業日で終わり、集中は以前より極端な形で戻ってきたことになります。
その極端さを示すのが「32%」という数字です。キオクシアホールディングス1銘柄の売買代金約2兆8,420億円が、プライム市場全体の約32%を占めました。1,556銘柄が上場する市場で、1銘柄が資金の3分の1近くを吸い込んだのです。さらにアドバンテストとキオクシアの2銘柄だけで日経平均を約409円押し上げ——上げ幅506円の81%です。プラス寄与上位5銘柄の押し上げ効果708円は、上げ幅の140%。つまり、この5銘柄を除いた日経平均は本日下落していたことになります。
ではなぜ裾野が弱かったのか。本日の答えは、はっきりしています。長期金利です。新発10年債利回りは一時2.930%と約30年ぶりの高さまで上昇し、7月の「骨太ショック」時を上回りました。しかも本日はこれといった新たな債券売り材料がないなかでの上昇です。9月の日銀利上げ観測と、8月末の概算要求に向けた財政悪化懸念が、材料なしでも金利を押し上げる地合いを作っている——下落率上位に医薬品・小売業・卸売業・パルプ紙といった内需・ディフェンシブが並んだのは、この力学の直接の帰結でしょう。
ここで本日最も示唆的だった観察を挙げるなら、メガバンクの下落です。長期金利が約30年ぶりの高さまで上昇した日に、三菱UFJもみずほも冴えない値動きでした。金利上昇の最大の受益者が売られた——これは、市場がこの金利上昇を「景気拡大に伴う正常化」ではなく「財政懸念による国債売り」として受け止めている可能性を示唆します。前者なら銀行株は買われ、後者なら株式市場全体のリスクプレミアムが上がる。本日の市場は、後者に近い反応をしたことになります。
もう一つ、アルバックのストップ安も記憶しておく価値があります。半導体製造装置という「本日最も買われたセクター」に属しながら、27年6月期の最終益予想11%増が物足りないとしてストップ安。キオクシアが15%高、アルバックがストップ安——同じ「半導体」という括りの中で、これほど極端な差がついたのです。「半導体が買われている」という説明は、もはや粗すぎて実態を表していません。AI・メモリーの中核と目される数銘柄だけが買われ、それ以外は決算の内容で容赦なく売られている——これが本日の物色の実態です。
そしてこの構図は、当面続く可能性が高いと見られています。4〜6月期の決算発表シーズンを通過し、明日以降は市場全体の売買代金がさらに減少する恐れがあります。流動性が低下するなか、アルゴリズムに基づいて運用するシステマティックファンドによる値がさ半導体株の売買の影響が、一層際立つことになりそうだと指摘されています。薄い商いのなかで機械的な売買が指数を動かす——本日の「後場だけで498円上げた」動きは、まさにその予兆と読むこともできるでしょう。
本日、記憶しておくべき数字を挙げるなら「32%」と「2.930%」の二つです。前者は1銘柄が市場の資金をどれだけ吸い込んだかを示し、後者は約30年ぶりの金利水準を示します。指数を押し上げているのは前者、裾野を押し下げているのは後者。この二つの数字が同じ日に並んだことが、本日の日経平均とTOPIXが逆方向に動いた理由のすべてです。
翌営業日の注目ポイント
- 雲上限6万8,487円を終値で維持できるか — 本日の焦点が「抜けるか」だったのに対し、翌営業日の焦点は「居座れるか」に変わります。終値6万9,220円25銭は雲上限の733円03銭上。本日の安値6万8,492円04銭ですら雲上限の4円82銭上でした。終値でこの線を割り込めば「ダマシ」となり、雲上限は再び強固な天井として意識されます。2〜3営業日この上で引け続ければ、上抜けは本物と評価してよいでしょう。
- 長期金利と5年債入札 — 本日の最大の重石であり、翌営業日は入札という具体的なイベントが控えます。新発10年債利回りは一時2.930%と約30年ぶりの高さで、節目の3%が目前。3%を明確に超えるようなら、株式のバリュエーションに対する見直し圧力が一段と強まる可能性があります。材料なしで金利が上がる地合いである点にも注意が必要です。
- TOPIXが下げ止まるか — 9日ぶりの反落で連騰が途切れ、終値4,184.11は14日の最高値4,197.20を13.09ポイント下回りました。25日移動平均線4,043.49からの乖離は3.48%と、日経平均の5.03%より1.55ポイント低い水準です。TOPIXが再び上昇に転じれば裾野の回復、続落なら「値がさ株だけの相場」が鮮明になる——日経平均より、むしろTOPIXの動きが相場の質を教えてくれる局面です。
- キオクシア集中の持続性 — 1銘柄でプライム売買代金の約32%、前週末比15%高という状態は、持続可能な水準ではありません。この銘柄が失速した場合、日経平均は支えを失うことになります。アドバンテストとの2銘柄で上げ幅の81%を稼いだ以上、この2銘柄の値動きが翌営業日の指数をほぼ決めると考えてよいでしょう。
- 25日線乖離5.03%の過熱 — 過熱ゾーンの目安とされる5%を上回りました。5営業日で3,613円54銭(5.51%)の上昇という速度も、短期的な調整を呼びやすい水準です。ただし5日線からの乖離は1.91%から1.57%へ縮小しており、短期と中期で過熱の方向が逆。値幅調整ではなく日柄調整で解消する可能性もあります。
- 短期オシレーターの高水準 — RSI(9日)は81.29から89.88へ8.59ポイント上昇し、90に迫りました。ストキャスティクスのファースト%Kは94.25、スロー%Kは91.37、スロー%Dは93.88といずれも90超。数値上の上値余地はほとんど残っていません。一方でRSI(14日)は65.45と70に届いておらず、MACDはプラス圏で拡大中。短期は限界、中期は途上という組み合わせです。
- NT倍率16.54倍の一段の上昇 — 前営業日から0.17ポイント上昇と、14日の0.01ポイント・13日の0.05ポイントを大きく上回りました。値がさ株偏重が加速していることの指標です。NT倍率がさらに上昇するなら日経平均だけが上がる相場、低下に転じるなら裾野の回復——相場の質を一つの数字で測る指標として有効です。
- バリュー株再評価の広がり — ホンダが一時3%超上昇し年初来高値に接近しました。4〜6月期決算を経て、内需系や自動車・化学などバリューセクターで好業績銘柄の再評価が相次ぐことも想定されています。過剰流動性相場での金利上昇は、バリュー株には追い風という整理であり、本日の相場を押し下げた金利が、別のセクターの買い材料になりうる点は注目に値します。
- 流動性低下とシステマティックファンド — 売買代金は7月24日以来の9兆円割れで、決算シーズン通過により、明日以降さらに減少する恐れがあります。流動性が低下するなか、アルゴリズム運用のシステマティックファンドによる値がさ半導体株の売買の影響が一層際立つと指摘されています。薄商いのなかの機械的な売買は、値動きを増幅しやすい点に留意してください。
- ジャクソンホール会議(27〜29日) — 各国中銀総裁や政策当局者、経済学者が一堂に会します。FRBのウォーシュ議長の発言内容に市場の関心が向かいますが、議長の抑制的な情報発信スタイルゆえ、投資家は一定の緊張感を強いられるとの見方です。その前段階での世界的な金利上昇が放置されるかどうかが、今後10日間の相場環境を左右します。
- ドル円3営業日連続の膠着 — 159円13銭前後で前日比0.21円のドル安・円高。米利上げ観測後退と日本の金利上昇という、本来なら円高に振れる組み合わせでも動きませんでした。160円の節目を前にした介入警戒が上値を抑える一方、3営業日の膠着はエネルギーの蓄積でもあります。次の材料でどちらかに振れやすい状態です。
戦略展望
本日の相場を評価するには、指数のシグナルと市場の実態を、はっきり分けて見る必要があります。14日とまったく同じ作業ですが、符号が逆です。
指数のシグナルは、明確に強気でした。終値で一目均衡表の雲上限を733円上抜け、一日を通して一度も雲の中に戻らなかった。上ヒゲわずか5円32銭のほぼ高値引け。MACDはプラス圏に定着し、ヒストグラムは7営業日連続で拡大。3分の2戻し水準を516円上回り、52週高値までの距離は初めて5%を切りました。テクニカル指標だけを並べれば、これは中期のトレンド転換を確認した日です。
他方、市場の実態は明確に弱かった。値上がり627・値下がり890、33業種中25業種が下落、TOPIXは9日ぶり反落、売買代金は9兆円割れ。プラス寄与上位5銘柄の708円が上げ幅506円の140%ということは、その5銘柄を除けば日経平均は下落していたということです。
この二つをどう統合するか。私見では、雲の上抜けというシグナルは有効だが、その強度は割り引いて評価すべきだと考えます。理由は三つあります。第一に、733円の上抜けのうち約半分(355円58銭)は雲上限自体の低下によるもので、相場が力ずくで壁を破ったわけではありません。第二に、上昇の81%を2銘柄が稼いだ——指数の上抜けは、実質的に2銘柄の上抜けです。第三に、TOPIXは同じ日に反落しており、市場全体では雲の上抜けに相当する事象は起きていません。
したがって当面の判断基準は「雲上限6万8,487円の上に、終値で居座り続けられるか」に置くのが妥当でしょう。2〜3営業日この上で引け続ければ、上抜けは本物と評価してよい。逆に翌営業日にでも終値で割り込むようなら、本日の陽線は薄商いのなかで値がさ株が作った一時的な形だったことになります。上抜けが確認されれば次の目標は7月10日高値6万9,375円、14日高値6万9,608円、そして7万円=+2σの帯。割り込めば+1σの6万8,057円、5日線の6万8,147円が次の支持です。
リスク側の中心は、もはや明確に金利です。新発10年債利回りが一時2.930%と約30年ぶりの高さに達し、節目の3%が目前にあります。材料なしでも上昇する地合いで、8月末の概算要求に向けた報道が相次げば、財政悪化シナリオがさらに意識される可能性があります。翌営業日の5年債入札は、その温度を測る最初の機会です。金利上昇が「景気拡大に伴う正常化」なら株式にとって中立以上ですが、「財政懸念による国債売り」ならリスクプレミアムの上昇を通じて株価の重石となります。本日メガバンクが売られたことは、市場が後者寄りに解釈している可能性を示唆しており、この点は翌営業日以降も銀行株の値動きで検証できます。
需給面では流動性の低下が構造的な論点になります。売買代金は7月24日以来の9兆円割れで、決算シーズンの通過により、今後さらに細る恐れがあります。薄い商いのなかで、アルゴリズム運用のシステマティックファンドによる値がさ半導体株の売買が指数を振り回す——本日の「前引けは7円高、大引けは506円高」という後場一辺倒の値動きは、その典型例と言えるでしょう。この環境では、指数の日中の値動きから相場全体の強弱を読み取ることが一段と難しくなります。
過熱感については両論あります。25日線乖離は5.03%と目安の5%を超え、RSI(9日)は89.88、ストキャスティクスは3指標とも90超——短期の数値上の上値余地はほぼ尽きています。一方で5日線乖離は1.91%から1.57%へ縮小し、RSI(14日)は65.45で70に未達、MACDはプラス圏で拡大中、シグナルのゼロ回復まで242ポイント。短期は限界、中期はまだ途上という組み合わせです。値幅を伴う調整ではなく、横ばいで日柄を消化しながら中期指標が追いつくのを待つ——これが最も素直な想定でしょう。
そして物色の面では、一つの可能性を頭に入れておきたいところです。金利上昇はグロース株には逆風ですが、バリュー株には追い風です。ホンダが一時3%超上昇して年初来高値に接近し、証券会社の目標株価引き上げが相次いでいることは、その兆候かもしれません。4〜6月期決算を経て、内需系や自動車・化学などバリューセクターで好業績銘柄の再評価が相次ぐことも想定されています。本日の相場を押し下げた金利上昇が、次の主役を作る可能性——値がさ半導体への集中がここまで極端になっている以上、その反対側で何が起きているかを見ておく価値はあるでしょう。
最後に、いつもの確認です。本日、日経平均は0.74%上昇し、TOPIXは0.31%下落しました。値下がり銘柄は890で全体の57%。14日は「値上がり7割超」の日で、本日は「値下がり6割弱」の日です。ところが日経平均は、14日が陰線、本日が陽線でした。指数の日足と、市場の実態が、2営業日続けて逆を向いたことになります。指数の数字ではなく、自分の資産の実際の変動率で相場を測る——この習慣の価値は、14日に続いて本日も、いつもより大きかったと言えます。
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