米SOX指数の3日続伸とアルファベットのAI投資計画引き上げを受け、AI・半導体関連への買いが続いて日経平均は3日ぶりに反発しました。もっとも上昇の中身は極端で、アドバンテスト1銘柄だけで日経平均を約307円押し上げ、指数の上げ幅とほぼ同額。東証プライムでは値下がり銘柄が値上がりを上回っており、「値がさ半導体1強」の上昇でした。
本日の相場概況
7月23日の東京株式市場で日経平均株価は反発し、前日比307円00銭(0.46%)高の6万6,422円60銭で取引を終えました。上昇は3営業日ぶりです。ただし、この日の主役は指数全体ではなく、たった1つの銘柄でした。
始値は6万6,421円01銭(前日比+305円41銭)と高く始まり、前場の午前10時10分には高値6万7,022円37銭(前日比+900円超)まで上昇しました。しかし6万7,000円台を維持しきれず、その後は伸び悩む展開に。午後には安値6万6,208円66銭まで押される場面もありましたが、大引けにかけて持ち直し、300円高で着地しました。日中値幅は813円71銭。前日まで2日連続で1,500円を超えていた値幅からは落ち着き、ボラティリティはやや低下しています。
買いの背景は半導体関連の堅調さです。前日22日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が54.50ポイント(0.44%)高の12,410.66と3日続伸し、加えてアルファベットがAI関連投資計画を引き上げたことが伝わりました。これを受けて東京市場でもAI・半導体関連に朝方から資金が集まりました。一方、同じ22日の米国市場でNYダウとナスダック総合指数はそろって反落しており、地合いは決して一様な株高ではありません。
上値を抑えたのは地政学とマクロ要因でした。トランプ米大統領が対イラン攻撃を強化する可能性を警告したことで原油相場が上昇し、米長期金利も上昇。これがハイテク株全体の重石となり、日経平均は高値から600円以上値を消しました。
そして本日最大の特徴が上昇の「偏り」です。日経平均は307円上げたにもかかわらず、東証プライムの値上がり銘柄は687、値下がり銘柄は826と、数の上では下落銘柄のほうが多い「実質的なマイナス地合い」でした。それでも指数がプラスを確保できたのは、指数寄与度の大きい値がさ半導体株が買われたからです。とりわけアドバンテスト1銘柄で日経平均を約307円押し上げており、この日の上げ幅はほぼアドバンテスト1社で説明できてしまいます。前日22日が「銘柄数は上昇優勢なのに指数は下落」だったのとは、ちょうど正反対の構図です。売買代金は8兆5,663億円(出来高19億1,353万株)と、前日の10兆4,377億円から減少しました。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 66,422.60円 | +307.00円 (+0.46%) |
| TOPIX | 4,053.88 | +20.75 (+0.51%) |
| SOX指数 (7/22終値) | 12,410.66 | +54.50 (+0.44%) |
| ナスダック総合 (7/22終値) | 25,690.90 | -146.30 (-0.57%) |
| S&P 500 (7/22終値) | 7,498.96 | -10.24 (-0.14%) |
| NYダウ (7/22終値) | 52,218.58 | -6.06 (-0.01%) |
| 米ドル/円 | 163円07銭前後 | 15時時点 |
| 東証プライム売買代金 | 8兆5,663億円 | 出来高 19.1億株 |
マクロ・地政学の視点
本日の相場は、「半導体という上昇材料」と「地政学という抑制材料」が綱引きした一日でした。上昇材料の中心はSOX指数の3日続伸と、アルファベットによるAI関連投資計画の引き上げです。世界的なAIインフラ投資が続くという見立ては、日本の半導体製造装置・検査装置メーカーにとって直接の追い風であり、朝方の買いを正当化する十分な理由となりました。
一方で、トランプ大統領の対イラン強硬発言が相場の頭を押さえました。中東の緊張が原油高に直結し、それがインフレ再燃と米長期金利上昇への警戒につながる——この連想が、金利上昇に弱いハイテク・グロース株の上値を重くしました。日経平均が午前の高値6万7,022円から600円以上値を消したタイミングは、この地政学リスクが意識された局面と重なります。
為替は1ドル=163円07銭前後で推移しました。前日に続き円安水準が定着しており、輸出企業の採算面では引き続き追い風です。ただし米金利上昇を背景とした円安は、裏を返せばインフレ・金利警戒の表れでもあり、株式にとって手放しで歓迎できる円安とは言い切れない側面があります。
米国市場の内訳にも注意が必要です。前日22日はSOX指数が上昇する一方でNYダウ・ナスダック総合・S&P500がそろって反落しました。米国でも「半導体だけが強い」という選別色が濃く、その構図がそのまま東京市場に持ち込まれた格好です。指数の上昇が特定セクター・特定銘柄に依存する状態は、日米で共通しています。
セクター・個別銘柄の動き
買われたセクター・銘柄
東証33業種のうち21業種が上昇しました。上昇率上位は鉱業、銀行業、非鉄金属、証券・商品先物取引業、パルプ・紙。原油高を映した鉱業や、金利上昇メリットのある銀行業が買われており、地政学・金利というマクロ材料に素直に反応したセクター物色がうかがえます。
本日の主役は文句なしにアドバンテスト(6857)でした。前日比1,275円高の3万0,860円と急伸し、この1銘柄だけで日経平均を約307円押し上げました。半導体検査装置の需要拡大期待が買いを集めた格好で、まさに本日の指数上昇の立役者です。
このほか値がさ半導体・ハイテク株ではソフトバンクグループ、東京エレクトロン、レーザーテック、村田製作所、キオクシアホールディングス、ディスコ、TDK、SCREEN、KOKUSAI ELECTRICなどが上昇。ファナック、豊田通商、住友電気工業、良品計画、荏原、住友金属鉱山にも買いが入りました。売買代金上位にはレーザーテック、住友金属鉱山、KOKUSAI、JX金属、IHI、アドバンテスト、村田製作所、ソフトバンクG、みずほFG、住友電が並び、資金が半導体と資源・金融に集中したことがわかります。
売られたセクター・銘柄
下落したのは12業種。下落率上位は不動産業、食料品、小売業、医薬品、精密機器でした。金利上昇に弱い不動産、内需・ディフェンシブ色の強い食料品・医薬品・小売が売られており、資金が景気敏感・半導体に振り向けられた反動という性格がにじみます。
日経平均を押し下げた側ではファーストリテイリングが目立ち、1銘柄で約101円分指数を押し下げました。イビデンやフジクラも下落しています。指数採用銘柄への寄与を差し引きで見ると、値上がり銘柄の寄与合計が約+657ポイント、値下がり銘柄の寄与合計が約-349ポイントで、その差が本日の上げ幅に相当します。
日経平均採用225銘柄の内訳は値上がり118・値下がり103・変わらず4。銘柄数では上昇がわずかに優勢ですが、東証プライム全体では値下がり826・値上がり687と下落銘柄が上回りました。指数を持ち上げたのが一部の値がさ株に偏っていたことが、この数字の対比から読み取れます。
テクニカル分析
トレンド
本日のローソク足は、始値6万6,421円・高値6万7,022円・安値6万6,208円・終値6万6,422円という形状です。始値と終値がほぼ同値(差はわずか1円)で実体が極端に小さく、上下にヒゲを伴う「十字線(同事線)」に近い格好となりました。上ヒゲは約600円、下ヒゲは約213円。教科書的には買いと売りが拮抗し、方向感に迷いが生じているサインとされます。前日の「上ヒゲ陰線」に続き、上値の重さが2日連続で確認された形です。
もっとも、安値6万6,208円は前日の安値6万5,955円を上回っており、日足の安値は3営業日連続で切り上がっています。上値は抑えられているものの下値は堅く、6万6,000円台の水準そのものは着実に固めつつあると評価できます。方向感の乏しい十字線は、大きなイベント(米ハイテク決算)を前にした様子見ムードの表れと読むのが自然でしょう。
サポートとレジスタンス
- 第1サポート: 6万6,208円 — 本日の安値。まずはこの水準を明日以降も維持できるかが目安です。
- 第2サポート: 6万5,955円 — 前日(7/22)の安値。ここを割ると安値切り上げの流れが崩れます。
- 第3サポート: 6万5,000円 — 心理的節目。7月21日の急反発で回復した大台です。
- 第1レジスタンス: 6万7,022円 — 本日の高値。前日高値6万7,592円に届かず、上値抵抗として意識されます。
- 第2レジスタンス: 6万7,592円 — 7月22日の高値。急落前の水準を取り戻せるかの分水嶺です。
- 第3レジスタンス: 6万8,751円 — 7月15日の直近高値。
オシレーターと出来高
3営業日で「急反発→小反落→反発」と値を戻してきたため、RSI(相対力指数)は中立からやや強めの55前後まで回復した公算が大きいと考えられます。買われ過ぎの70には距離があり、上値余地・下値余地の両方が残る中立圏です。MACDについては、前週成立したデッドクロスからヒストグラムのマイナス幅縮小が続き、ゴールデンクロスに接近しつつある段階と推定されます。ただし、これらのオシレーター値はいずれも値動きからの推定であり、確定値ではありません。売買判断にあたっては必ずご自身のチャートツールで実数値をご確認ください。
出来高・売買代金は8兆5,663億円と前日の10兆4,377億円から減少しました。値幅が813円と前2日より縮まったことと合わせ、商いはやや細り、市場のエネルギーは一服しています。指数はプラスでも参加者の熱量は前日より低下しており、この上昇が幅広い買いに支えられたものではないことを、売買代金の減少も裏づけています。
市場心理
本日の市場心理は「半導体には強気、それ以外には慎重」と要約できます。SOX指数の続伸とアルファベットのAI投資増額という明確な好材料に、投資家はアドバンテストをはじめとする半導体株で素直に反応しました。一方で、対イラン警告に端を発する原油高・金利上昇への警戒から、内需・ディフェンシブや金利敏感セクターには手が出しにくく、市場全体としては値下がり銘柄が過半を占めました。
ここで前日との対比が示唆に富みます。7月22日は「銘柄数では上昇が多いのに、値がさ半導体の失速で指数は下落」しました。本日はその完全な裏返しで、「銘柄数では下落が多いのに、値がさ半導体(とりわけアドバンテスト)の急伸で指数は上昇」しています。2日続けて、日経平均という指標が市場全体の実態から乖離していることが浮き彫りになりました。上げでも下げでも、指数を動かしているのは一握りの値がさ株です。
この構造は、投資家に冷静な視点を求めます。「日経平均が307円高」という見出しだけを見れば全面高を想像しがちですが、実際には東証プライムの半数超の銘柄が下落しています。指数の方向とご自身の保有銘柄の方向が一致しない局面が続いている点は、しっかり意識しておく必要があります。
明日の注目ポイント
- 米大手ハイテク企業の決算 — 今週後半にかけて相次ぐ米ハイテク決算が、東京市場の半導体株の方向を左右します。前週17日のTSMCのように「好決算でも売られる」パターンが出るのか、その反応が最大の焦点です。
- アドバンテストの過熱感 — 本日1銘柄で指数を約307円押し上げた立役者です。1日で1,275円高という急伸の反動が出るのか、それとも上昇が続くのか。この1銘柄の値動きが、そのまま日経平均の初動を決める可能性があります。
- 今夜のSOX指数 — 3日続伸となった半導体指数がさらに伸びるのか、反動が出るのか。日米ともに指数を左右する構造は変わっていません。
- 原油価格と米長期金利 — 対イラン警告で意識された原油高・金利上昇が続けば、ハイテク株の上値は引き続き重くなります。中東情勢の続報に注意が必要です。
- 6万7,000円台の定着 — 本日高値6万7,022円で一度は乗せたものの維持できませんでした。終値でここを明確に上回れるかが、上昇再開のサインになります。
- ドル円163円台の維持 — 円安水準が続くかどうか。米金利の動向とセットで、輸出株の追い風が続くかを確認しましょう。
戦略展望
本日は前日に続き、「指数の数字」と「市場の実態」がずれる一日でした。7月22日は指数マイナスでも中身は買い優勢、本日は指数プラスでも中身は売り優勢。2日連続で日経平均が市場全体の縮図として機能していないことは、投資判断のうえで軽視できません。指数の見出しではなく、値上がり・値下がり銘柄数や業種の広がりで地合いを測る——本日もその原則を確認する一日となりました。
短期的には、上値は6万7,000円台での定着が試される一方、下値は3営業日連続で切り上がった安値(本日6万6,208円)が支えとなります。方向感の乏しい十字線が示すとおり、米ハイテク決算という大きなイベントを前に、市場は明確なトレンドを描きにくい局面です。上限では追わず、下限に近づいた局面を待つスタンスが引き続き現実的でしょう。決算の結果次第で振れ幅が拡大しうる以上、方向に賭けるポジションを厚くする局面ではありません。
中期的に意識したいのは、上昇がアドバンテストのような一部の値がさ半導体に過度に依存しているという点です。この集中は、半導体株が崩れれば指数も一気に崩れうるという脆さの裏返しでもあります。ご自身のポートフォリオが日経平均型(値がさ株の影響が大きい)なのか、TOPIX型・分散型なのかで、体感する相場はかなり異なるはずです。指数の上げ下げに一喜一憂するのではなく、自分の資産が「何に」連動しているのかをあらためて点検する良い機会と言えます。
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