【7月15日】日経平均は1,008円上昇!ASML好決算でAI半導体に買い集中

2026年7月15日(水) 東京市場クローズ
日経平均 68,751円51銭
+1,008円01銭 (+1.49%)

蘭ASMLホールディングスの好決算を受けてAI・半導体関連株に買いが集中し、日経平均は大幅続伸。プライム市場の値上がり銘柄は1,152と全体の7割超に達し、久々に裾野の広い上昇となりました。一方で前日の米IBM急落を受けたITサービス株には売りが波及し、「AIの勝ち組・負け組」の選別が一段と鮮明になっています。

本日の相場概況

15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続伸し、終値は前日比1,008円01銭(1.49%)高の6万8,751円51銭で取引を終えました。前日の米国市場でハイテク株が上昇した流れを引き継ぎ、寄り付きから買い先行でスタート。前場のうちに一時1,000円を超える上げ幅となり、その後も終日プラス圏を維持したまま高値圏で引けています。TOPIX(東証株価指数)も49.14ポイント(1.22%)高の4,088.12と続伸しました。

相場を主導したのはオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングスの決算です。同社の4〜6月期決算は市場予想を上回り、7〜9月期の売上高見通しも市場予想を超過。さらに2026年12月期通期の売上高ガイダンス上限を従来の400億ユーロから450億ユーロへ引き上げたことが、AI向け半導体投資の持続性を裏付ける材料として受け止められました。日本の半導体製造装置・部材メーカーはASMLのサプライチェーンに深く組み込まれているため、この上方修正は東京市場にとって直接的な追い風となります。

値上がり銘柄数は1,152、値下がりは371、変わらずは35と、プライム市場全体の約74%が上昇する全面高に近い展開でした。もっとも東証プライムの売買代金は概算で約9兆5,600億円と、前日の10兆7,628億円から減少しています。上げ幅1,000円という数字の派手さに比べると、市場参加者のエネルギー自体はやや後退している点は留意が必要でしょう。

主要マーケット指標

指標 直近値 前日比
日経平均株価 68,751.51 +1,008.01 (+1.49%)
TOPIX 4,088.12 +49.14 (+1.22%)
ドル/円 (15日17時) 162円27〜28銭 3営業日ぶり円反発
S&P 500 (14日) 7,543.59 +0.38%
ナスダック総合 (14日) 26,107.01 +0.90%
NYダウ (14日) 52,508.27 +9.63 (+0.02%)
WTI原油先物 79.70ドル +0.45%
金先物 4,061.70ドル -0.20%
米10年債利回り 約4.62% 高止まり
VIX指数 (14日) 16.50 -3.85%
東証プライム売買代金 約9兆5,600億円 前日比で減少

マクロ・地政学:CPI下振れと中東リスクの綱引き

今回の上昇の下地を作ったのは、14日に発表された米6月消費者物価指数(CPI)です。前年同月比の上昇率は3.5%と市場予想の3.8%を下回り、前月比では2020年以来のマイナスに転じました。インフレの高止まりが続く中でのこの下振れは、市場が織り込んでいた早期利上げ観測を後退させ、米長期金利の低下を通じてハイテク株の買い戻しを促しました。

ここで確認しておきたいのは、現在のFRBが「利下げ」ではなく「利上げ」の可能性を議論する局面にあるという点です。FRBは2026年通年のインフレ見通しの中央値を2.7%から3.6%へ大幅に引き上げ、ドットチャートが示すFF金利見通しの中央値も3.4%から3.8%へ上方修正し、「より長期にわたる高金利」を明確にシグナルしています。ケビン・ウォルシュFRB議長は14日の半期議会証言でもタカ派的な姿勢を崩しませんでした。今回のCPI下振れは、あくまで「追加利上げが急がれる状況ではなくなった」という消去法的な安心材料であり、金融緩和への転換を意味するものではないことは冷静に押さえておくべきでしょう。米10年債利回りは依然として4.62%前後の高水準で推移しています。

一方、逆方向に働いているのが中東情勢です。米軍によるテヘランへの追加攻撃と、ホルムズ海峡近海のイラン港湾に対する米国の海上封鎖再開を受け、原油市場では供給途絶への警戒が再燃しました。WTI原油先物(8月限)は一時81.27ドルまで急伸する場面があり、直近では79.70ドル(+0.45%)前後で推移しています。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の要衝であり、ここが本格的に機能不全に陥れば、せっかく下振れしたインフレ指標が再び反転しかねません。「CPI下振れによる金利低下期待」と「原油高によるインフレ再燃リスク」が真正面からぶつかっている——これが現在の相場の基本構図です。エネルギーを100%近く輸入に頼る日本にとって、原油高は交易条件の悪化を通じて企業収益を直撃するため、他人事ではありません。

セクター・個別銘柄:AI「優勝劣敗」の鮮明化

本日の物色を一言で表すなら「AIインフラの勝ち組買い、AIに代替される側の売り」です。買われたのはアドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアホールディングス、イビデン、レーザーテック、TDKといったAI・半導体関連の中核銘柄群。前日の米SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)上昇とASML決算が直接の買い材料となりました。キオクシア、フジクラ、古河電気工業は朝方から買い気配で始まるなど、AIデータセンター需要に直結する銘柄への資金集中が目立っています。

対照的に売られたのがNEC、富士通といったITサービス株です。背景にあるのは、14日の米国市場でIBMが25%という記録的な急落を演じたこと。同社の2026年4〜6月期決算で、AIインフラを巡る競争激化を受けて顧客企業がIT予算をソフトウエアよりハードウエアに優先配分している実態が明らかになり、「AI負け組」のレッテルが貼られました。この構図は日本のSIer・ITサービス各社にもそのまま当てはまるため、連想売りが波及した格好です。

日経平均が1,008円上昇した日にもかかわらず、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、リクルートホールディングスといった指数寄与度の高い銘柄が下落した点も見逃せません。指数を押し上げたのは半導体セクターに偏った買いであり、値がさ株の一部は逆行安となっています。なお金融セクターでは、米金融大手の好決算が相次いだことを受けて三菱UFJフィナンシャル・グループが連日の年初来高値を更新し、メガバンク選好の姿勢が強まりました。高金利環境の長期化は、銀行にとっては利ざや拡大というプラス材料として働きます。

テクニカル分析:1,008円高でも「25日線の壁」は未突破

トレンドと移動平均線

ここが本日最も重要なポイントです。1,008円という大幅高にもかかわらず、日経平均は25日移動平均線を回復できていません。15日時点の25日移動平均線は69,101.81円。終値68,751.51円との差は約350円で、あと一歩届かなかった計算になります。日経平均は7月8日に25日線を割り込み、11日には25日線に上値を抑えられる展開が続いており、本日もその構図から完全には抜け出せていません。

一方、下値サポートは着実に固めています。6日移動平均線(67,809.73円)、一目均衡表の転換線(68,326.60円)、基準線(67,583.74円)をいずれも終値で上回っており、短期の値位置は改善しました。中長期線を見ると13週移動平均線が65,637.94円、75日移動平均線が63,276.10円、26週移動平均線が60,463.24円、200日移動平均線が55,916.84円と、いずれも現値から大きく下方に位置しています。中長期の上昇トレンド自体は崩れておらず、今回の調整はあくまで上昇トレンド途上の押し目という位置づけが妥当でしょう。

ボリンジャーバンドと支持・抵抗

25日設定のボリンジャーバンドでは、+1σが70,909.80円、+2σが72,717.78円、+3σが74,525.76円。下方は-1σが67,293.83円、-2σが65,485.84円、-3σが63,677.86円です。現値はミッドバンド(25日線)のわずか下、-1σと25日線の間に位置しており、過熱でも売られ過ぎでもないニュートラルなゾーンにあります。ここから上を目指すなら、まず25日線69,101.81円の奪還、次いで心理的節目の69,000円台後半から70,000円の大台、そして+1σの70,909.80円が意識されます。下値については、67,809.73円(6日線)→67,583.74円(基準線)→67,293.83円(-1σ)が三段のサポート帯を形成しており、比較的厚みがあります。

オシレーター系指標

ストキャスティクスは9日設定でFastが33.58(前日26.11)、Slowが26.85(前日21.41)と、いずれも前日から改善しつつも依然として低水準にあります。一般に20〜30が売られ過ぎの目安とされるため、短期的にはまだ反発余地が残されていると読めます。一方、13週設定ではFastが77.34、Slowが82.46と高水準を維持しており、中期的には過熱感が残る状態です。この短期と中期の乖離は、「中期上昇トレンドの中での短期的な押し目からの反発局面」という現在地を的確に示しています。

なお参考値として、Investing.com集計のRSIは44.015、MACDは-56.940と、いずれも売りシグナル圏で推移していました(場中時点の集計値のため、大引け後の数値とは差異が生じます)。RSIが50を下回っているということは、直近の値動きが売り優勢に傾いていたことを意味し、本日の大幅高をもってしてもまだ中立線を回復しきれていない可能性があります。「1,008円高でも指標はまだ強気圏に届いていない」——この事実は、本日の上昇を無条件に楽観視すべきでないことを示唆しています。

市場心理:楽観と警戒の同居

VIX指数(恐怖指数)は14日時点で16.50と3.85%低下しました。20を下回る水準は市場が平静を保っていることを示しており、CPI下振れが投資家心理の改善に寄与したことがうかがえます。値上がり銘柄が7割超に達した点も、地合いの改善を裏付けるものです。

ただし、心理面には少なくとも三つの留保があります。第一に、売買代金が前日の10兆7,628億円から約9兆5,600億円へ減少していること。上昇局面で商いが細るのは、買いの持続力という点で理想的とは言えません。第二に、IBMショックが示したAI関連の選別リスクです。「AI関連ならすべて買い」という単純な構図はすでに崩れており、同じテーマの中でも勝ち組と負け組が容赦なく峻別される段階に入りました。25%という下落率は、市場が「AIの負け組」に対していかに苛烈であるかを物語っています。第三に、ホルムズ海峡を巡る地政学リスクは解消しておらず、原油高が再燃すればインフレ懸念を通じて株価の重しとなり得ます。

明日以降の注目ポイント

  • TSMCの2026年4〜6月期決算(16日) — 最大の焦点。決算説明会は日本時間16日午後3時に台北で開催予定。第2四半期売上高は前年同期比36%増の396億ドル前後と、4月ガイダンス(390〜402億ドル)の上限付近に着地する見通しです。市場が注視するのは通年売上高成長率ガイダンスが現在の「30%以上」から上方修正されるか、2026年の設備投資予算(現状520〜560億ドル)が引き上げられるか、そしてCoWoS(先端パッケージング)容量の見通しです。ASMLに続いてTSMCも強気の見通しを示せば、AI関連株の再評価が一気に加速する可能性があります。
  • 25日移動平均線69,101.81円の攻防 — 本日届かなかったこの水準を明日終値で奪還できるかどうかが、短期トレンド転換の分水嶺になります。逆に跳ね返されれば、7月8日以降続く「25日線に上値を抑えられる」パターンの継続を意味します。
  • 米6月生産者物価指数(PPI) — CPIに続くインフレ指標。7月末のFOMCに向けた市場の織り込みを左右します。CPI同様に下振れすれば追加利上げ観測はさらに後退しますが、原油高の影響が川上の物価に表れていれば警戒材料となります。
  • ホルムズ海峡と原油価格の動向 — 米国の海上封鎖が長期化すれば、WTIが80ドル台を明確に上抜ける展開も想定されます。原油高はインフレ再燃を通じて金利上昇圧力となり、株式のバリュエーションを直撃します。
  • ドル円162円台の持続力 — 米金利低下観測は円高要因ですが、日米金利差の絶対水準は依然として大きく、円安基調が根本から転換したとは言えません。輸出企業の採算にとっては追い風が続く一方、輸入インフレの側面も併せ持ちます。
  • 売買代金9兆円台の推移 — 上昇が本物なら商いは膨らむはずです。10兆円台を回復せずに指数だけが上がる展開が続くなら、上昇の持続性に疑問符が付きます。

戦略展望

現在の相場は「中長期の上昇トレンドは維持、短期は25日線を挟んだもみ合い」という整理が最も実態に近いと考えられます。200日線(55,916.84円)まで1万3,000円近い距離があることを踏まえれば、トレンド自体を疑う段階ではありません。ただし25日線を明確に上抜けるまでは、短期的な戻り売り圧力が残ると見るのが自然です。

物色面では、IBMショックが突きつけた「AIの優勝劣敗」という現実を直視する必要があります。AIデータセンターへの設備投資に直結する半導体製造装置・部材・電線といった「AIインフラの供給者」と、AIによって既存ビジネスが侵食されかねない「AIの被代替者」とでは、同じ「ハイテク」の括りでも評価が正反対に動きます。テーマで一括りにせず、個社ごとの収益構造をどこまで見極められるかが問われる局面です。

また、FRBが利上げバイアスを維持する高金利環境は、グロース株には逆風である一方、メガバンクをはじめとする金融セクターには追い風となります。本日の三菱UFJの高値更新はその象徴と言えるでしょう。AI関連への集中投資に対するリスク分散という観点からも、金融セクターの位置づけは一考に値します。当面はTSMC決算とPPI、そして中東情勢という三つの変数を見極めながら、25日線の攻防を丁寧に追っていく展開になりそうです。

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