3営業日で「雲の上」「雲の中」「雲の下」を通過しました。日経平均は2,134円31銭安の6万5,326円42銭で大幅続落し、終値は一目均衡表の雲の下限(6万5,879円96銭)を553円54銭下回って、雲の下に抜けました。17日に確認した733円の雲上抜けは、2営業日で「だまし」と判定されたことになります。そして昨日と決定的に違うのは、市場の裾野です。18日は値下がり50.3%で「指数だけの下げ」でしたが、本日は値下がり1,155銘柄・全体の74%、東証33業種のうち上昇はわずか2業種——今度は本物の全面安でした。ソフトバンクグループ1銘柄で指数を約485円押し下げ、終値は25日移動平均も割り込み、52週高値からは10.31%安と「調整局面」の目安に入りました。材料は前日の米SOX指数4.98%安、世界的な長期金利上昇、そしてSBGの1兆円規模の社債発行観測。昨日残っていた「裾野はまだ半分」という支えは、本日消えました。
本日の相場概況
8月19日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落し、前営業日比2,134円31銭(3.16%)安の6万5,326円42銭で取引を終えました。下げ幅は一時2,300円を超え、18日の1,759円52銭安を上回る下げとなっています。17日終値6万9,220円25銭からの2営業日で、3,893円83銭(5.63%)を失った計算です。
まず、前回の記事の結論から検証しましょう。18日の記事で私たちは「終値6万7,460円73銭は雲上限6万8,487円22銭を1,026円49銭下回り、17日の上抜けはわずか1営業日で否定された」と書きました。そのうえで「6万8,487円(雲上限)より上か、6万7,082円(転換線)より下かで状況認識を分ける」と整理し、転換線を割り込めば「次の支持は6万5,900円近辺まで1,200円ほど空く」と指摘していました。本日の終値6万5,326円42銭は、その6万5,900円近辺すら下回りました。想定した「下値の空白地帯」を、市場は1日で通過したことになります。
日足の形は、18日以上に一方通行でした。寄り付きは6万6,812円27銭で、前営業日終値を648円46銭下回るギャップダウン。高値は6万6,833円51銭で、始値をわずか21円24銭上回っただけです。つまり本日の高値は寄り付き直後につけたもので、実質的な「寄り天」でした。始値から終値までの実体は1,485円85銭の大陰線、安値6万5,133円98銭までの下ヒゲは192円44銭。日中値幅は1,699円53銭で、18日の1,724円24銭とほぼ同水準です。2営業日連続で1,700円級の値幅——ボラティリティの高い状態が定着しつつあります。
一日の流れを見ると、下げの大半は前場で完成しています。前引けは1,736円48銭(2.57%)安の6万5,724円25銭で、前場だけで6万6,000円を割り込み、一時6万5,300円台まで水準を切り下げる場面がありました。後場の下げは397円83銭で、下げ幅の81.4%が前場、18.6%が後場という配分です。18日は前場64%・後場36%でしたから、売りがより朝方に集中した形になります。終盤にかけては安値圏で推移し、本日も引け際の押し目買いは目立ちませんでした。
そして本日の本質は、18日に残っていた「指数だけの下げ」という性格が消えたことにあります。TOPIXは127.91ポイント(3.09%)安の4,012.31で大幅続落しました。18日の下落率1.05%に対し、本日は3.09%——日経平均の3.16%とほぼ並んでいます。始値4,107.74、高値4,107.74、安値4,005.45で、TOPIXもまた高値が始値と同値の完全な寄り天でした。日中値幅は102.29ポイント(2.49%)。NT倍率は前日の16.29倍から16.28倍へ0.01ポイントの低下にとどまり、18日に0.25ポイント低下した局面とは対照的に、日経平均とTOPIXが同じ速さで下げたことを示しています。
騰落銘柄数が、この変化を最も明確に語ります。東証プライムの値上がりは362銘柄、値下がりは1,155銘柄、変わらずは39銘柄(合計1,556銘柄)。値下がりは全体の74%に達しました。18日は値下がり783銘柄・50.3%で、値上がり722銘柄との差はわずか61銘柄でしたから、1営業日で値下がり銘柄が372銘柄増え、値上がり銘柄は360銘柄減ったことになります。日経225構成銘柄でも値上がり45・値下がり179・変わらず1と、8割が下落。東証33業種のうち上昇したのは医薬品と海運業の2業種だけで、31業種が下落しました。18日の記事で「市場の裾野はまだ半分しか崩れていない」と書いた支えは、本日はっきりと崩れました。
商いの中身にも、見逃せない変化があります。東証プライムの売買代金は概算10兆1,151億円で、18日の約10兆1,564億円から413億円のわずかな減少——ほぼ横ばいでした。ところが売買高は概算25億1,136万株と、18日の約22億1,462万株から約2億9,674万株(13.4%)増加しています。金額が変わらないのに株数が13%増えた——これは1株あたり単価の低い銘柄にまで売りが広がったことを意味します。18日は「値がさ株を売った」下げ、本日は「幅広く売った」下げ。売買データの側からも、全面安への移行が裏づけられる形です。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 65,326.42円 | -2,134.31円 (-3.16%) 大幅続落 |
| 日経平均 高値 / 安値 | 66,833.51 / 65,133.98 | 始値 66,812.27円 (値幅1,700円・実体1,486円の大陰線) |
| 日経平均 上ヒゲ / 下ヒゲ | 21.24円 / 192.44円 | 高値は始値の21円上・実質的な寄り天 |
| 日経平均 前引け | 65,724.25円 | -1,736.48円。下げの81%が前場・19%が後場 |
| 日経平均 2営業日の下落 | -3,893.83円 (-5.63%) | 17日終値 69,220.25円からの累計 |
| TOPIX | 4,012.31 | -127.91 (-3.09%) 下落率は日経平均とほぼ並ぶ |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,107.74 / 4,005.45 | 始値 4,107.74 (高値=始値の完全な寄り天) |
| NT倍率 | 16.28倍 | 前日16.29倍から0.01ポイント低下 (18日は0.25低下) |
| NYダウ (8/18終値) | 53,343.40 | -116.38 (-0.22%) |
| S&P 500 (8/18終値) | 7,691.76 | -53.30 (-0.69%) |
| ナスダック総合 (8/18終値) | 26,289.71 | -355.20 (-1.33%) |
| SOX指数 (8/18終値) | 11,992.46 | -628.54 (-4.98%) 前日の1.64%高から急反落 |
| 米VIX指数 (8/18終値) | 15.84 | +0.65 (+4.28%) 上昇したが依然15台 |
| 日経平均VI | 32.44 | +1.93 (+6.33%) 一時38.08。米VIXの約2倍の水準 |
| 米ドル/円 | 159円25銭前後 | -0.36銭 (16時21分時点)。株安局面でも円高は限定的 |
| 新発10年国債利回り (8/18確定) | 2.935% | 1996年9月以来 約30年ぶりの高水準。19日も世界的な金利上昇が警戒された |
| 東証プライム 売買代金 | 約10兆1,151億円 | 18日の約10兆1,564億円から413億円減・ほぼ横ばい |
| 東証プライム 売買高 | 約25億1,136万株 | 18日の約22億1,462万株から約2億9,674万株(13.4%)増加 |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 362銘柄 / 1,155銘柄 (変わらず39) | 値下がりは全体の74%。18日は50.3% |
| 日経225構成銘柄 値上がり/値下がり | 45銘柄 / 179銘柄 (変わらず1) | 構成銘柄の約8割が下落 |
| 東証33業種 上昇/下落 | 2業種 / 31業種 | 上昇は医薬品・海運業のみ |
| 最大のマイナス寄与 | ソフトバンクグループ | 1銘柄で日経平均を約485円押し下げ (下げ幅の22.7%) |
| マイナス寄与 上位10銘柄合計 | 約-1,410円 | 下げ幅2,134円の66.1%を10銘柄が説明 |
| 日経平均 25日線からの乖離 | -0.70% | 18日の+2.43%から3.13ポイント悪化・25日線を下回る |
| 日経平均 一目均衡表の雲 | 上限 68,487.22 / 下限 65,879.96 | 終値は下限を553.54円下回り雲の下へ |
| 日経平均 52週高値からの距離 | -7,505.31円 (-10.31%) | 52週高値 72,831.73 (6/22)。10%安の調整局面の目安に到達 |
| 7月29日安値からの戻り | +4,877.52円 (+8.07%) | 直近安値 60,448.90 (7/29)。18日の+11.60%から縮小 |
マクロ・地政学の視点
本日の下げには4つの材料が重なりました。米半導体株安、世界的な長期金利上昇、個別企業の資金調達観測、そして中東情勢です。順に見ていきます。
第一が前日の米半導体株の急落です。18日の米国市場でSOX指数は628.54ポイント(4.98%)安の1万1,992.46と急落しました。17日は203.95ポイント(1.64%)高だったのですから、わずか1営業日で逆行高が帳消しどころか、3倍の下げに転じたことになります。18日の記事で「米半導体が1.64%上げた翌日に、日本の半導体が指数を1,759円押し下げた」「本日の売りは米半導体セクターへの評価変更ではなく、国内金利という別の要因で起きた」と書きましたが、本日はその「米半導体セクターへの評価変更」のほうが、実際に起きてしまった形です。主要3指数もそろって下落し、ナスダック総合は355.20ポイント(1.33%)安、S&P500は53.30ポイント(0.69%)安、NYダウは116.38ドル(0.22%)安。下落率が半導体>ナスダック>S&P500>ダウの順にきれいに並んでいるのが特徴で、売られたのは市場全体ではなく、成長期待の高い銘柄群だったことがわかります。
第二が、世界的な長期金利の上昇です。18日の米国市場では、世界的な長期債利回りの上昇を警戒して寄り付き後に下落する展開でした。社債発行の活発化も一部で債券売り圧力となり、ハイテク中心に売られたと伝えられています。日本側では新発10年国債利回りが18日に2.935%で引け、1996年9月以来 約30年ぶりの高水準にあります(19日の確定値は本稿執筆時点で未公表)。18日の記事で「金利は日銀の政策と財政に紐づく構造的な材料で、一過性で戻る性質のものではない」と書いた見方は、本日の値動きでいっそう裏づけられました。18日は「金利上昇で高PER半導体を売り、原油高で資源・商社・海運を買う」という付け替えでしたが、本日はその買い手が消え、売りだけが残りました。
金利上昇が高PER銘柄を直撃する理屈は、18日の記事で説明したとおりです。長期金利は将来の利益を現在価値に割り引く際の分母にあたり、遠い将来の利益に価値の大半を置く銘柄ほど、金利上昇で現在価値が削られます。本日はその圧力が半導体だけでなく、銀行・機械・非鉄金属といった景気敏感業種にも広がりました。金利上昇は銀行にとって本来は収益改善要因ですが、景気後退懸念が上回ると売られる——市場が金利上昇を「収益機会」ではなく「景気への逆風」として読み替え始めたとすれば、これは局面の質が変わったサインです。
第三が、本日固有の材料であるソフトバンクグループの資金調達観測です。AI関連株に逆風が吹くなか、1兆円規模の社債発行観測が同社株の下げを助長したと伝えられました。SBG株は603円(10.34%)安の5,227円と急落し、1銘柄で日経平均を約485円押し下げています。本日の下げ幅2,134円31銭の22.7%を、この1社が作りました。社債発行は本来、企業の資金調達手段にすぎません。しかし金利が約30年ぶりの高水準にある局面では、大型の起債は「高い金利を払ってでも資金が要る」というメッセージとして受け取られやすく、同時に債券市場の需給を圧迫する要因にもなります。金利上昇と個別企業の資金調達が、ここで結びついた格好です。
第四が中東情勢です。トランプ大統領がイランと協議や対話をしておらず、その予定もないと断固とした姿勢を示したと伝えられ、戦闘終結に向けた交渉を巡る不透明感が強まりました。海外市場で原油先物価格が高止まりして推移していることも、警戒材料として意識されています。18日の記事では「中東リスクは全面安の材料ではなく、セクターを選別する材料として作用した」と書きました。実際、本日も上昇した2業種のうち1つは海運業で、商船三井が値を上げています。ただし18日に上昇率上位だった鉱業や石油・石炭製品は、本日は上昇業種に残れませんでした。選別買いの受け皿が、医薬品と海運の2業種にまで狭まった——これが本日の全面安の実態です。
為替は、株安の割に落ち着いていました。米ドル/円は16時21分時点で159円25銭前後、前日比0.36銭の円高にとどまっています。日経平均が3.16%下げた日に、円の上昇が0.2%程度——典型的なリスクオフで見られる急激な円買いは起きていません。18日は159円74銭前後で円安方向でしたから、方向は反転しましたが、幅は限定的です。本日の株安が「円を買って逃げる」種類のリスク回避ではなかったことを、為替の側から確認できます。
最後に、ボラティリティ指標の日米差に注目しておきます。米VIX指数は18日終値で15.84、前日比0.65ポイント(4.28%)の上昇にとどまりました。一方日経平均VIは19日に32.44と、前日比1.93ポイント(6.33%)上昇し、取引時間中には一時38.08まで上昇しています。日経平均VIは米VIXの約2倍の水準にあり、30を超える水準は平常時のレンジ(20〜30程度)を上回ります。米国市場が織り込んでいる不安より、日本市場が織り込んでいる不安のほうが明確に大きい——本日の下げには、米国発の材料に加えて日本固有のリスク(長期金利・財政・日銀)が上乗せされていることを、この差が示しています。
セクター・個別銘柄の動き
売られたセクター・銘柄
本日は東証33業種のうち31業種が下落する全面安でした。下落率上位に並んだのは非鉄金属、ガラス・土石製品、機械で、売りは半導体関連にとどまらず、銀行・機械・非鉄金属など景気敏感業種にも広がったと報じられています。18日の下落上位が電気機器・非鉄金属・金属製品だったことと比べると、売りの対象が「高PER株」から「景気敏感株全般」へ広がったのが本日の特徴です。
主役はソフトバンクグループでした。603円(10.34%)安の5,227円まで売られ、1銘柄で日経平均を約485円13銭押し下げ——本日の下げ幅の22.7%を作りました。18日にはプラス寄与ではなく「大きく水準を切り下げた」銘柄として報じられており、2営業日続けて売られたことになります。1兆円規模の社債発行観測が下げを助長しました。
マイナス寄与2位以下はアドバンテスト(840円安・約202円74銭の押し下げ)、東京エレクトロン(1,720円安・約172円97銭)、キオクシアホールディングス(7,200円安・約168円95銭)、フジクラ(574円安・約115円45銭)、イビデン(1,160円安・約77円77銭)、TDK(133円安・約66円88銭)と続きます。上位10銘柄の寄与度合計は約1,410円で、本日の下げ幅2,134円31銭の66.1%を占めました。
下落率で目立ったのは古河電気工業です。598円(13.69%)安の3,770円で値下がり率トップとなりました。キオクシアホールディングスも12.60%安、フジクラは9.72%安。キオクシアは17日にプライム市場全体の約32%にあたる売買代金を集めて15%高と急騰した銘柄で、18日にマイナス寄与上位へ回り、本日は12%を超える下落——17日の急騰から2営業日で構図が完全に反転しました。18日の記事で「1銘柄に市場の3分の1近い資金が集中した翌日に、その銘柄が反転するのは、集中の裏側にあるリスクを示している」と書いた指摘が、そのまま続いた形です。
このほか三菱UFJフィナンシャル・グループなどメガバンクが揃って安く、三菱重工業も深押しとなりました。エンプラス、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが急落し、ラサ工業、日本電波工業なども下値を探っています。金融・防衛・小売・素材と、業種の枠を越えて売られた点に、本日の全面安の性格がよく表れています。
買われたセクター・銘柄
上昇したのは医薬品と海運業の2業種だけです。18日は前場時点で海運業・鉱業・石油・石炭製品が上昇率上位でしたから、買われる範囲は1営業日でさらに狭まりました。
プラス寄与のトップはメルカリで、277円高の4,750円、1銘柄で日経平均を約9円29銭押し上げました。コナミグループ(140円高・約4円69銭)、アステラス製薬(26.5円高・約4円44銭)、キッコーマン(24円高・約4円02銭)、中外製薬(38円高・約3円82銭)、トレンドマイクロ(98円高・約3円29銭)、エムスリーが続いています。ただし値上がり銘柄45の寄与度合計は+63円55銭にすぎず、値下がり銘柄179の寄与度合計-2,197円86銭に対して、わずか2.9%。買いは指数をほとんど支えられませんでした。
顔ぶれを見ると、プラス寄与上位に第一三共、塩野義製薬、武田薬品工業、エーザイと医薬品が4銘柄並び、資生堂、キッコーマンといった内需・ディフェンシブも入っています。18日に「リスク回避局面でディフェンシブに資金が戻る、教科書どおりの動き」と書いた流れが、本日はさらに鮮明になった形です。商船三井が値を上げ、弁護士ドットコムが急騰して値上がり率トップ、リンクアンドモチベーション、松屋、藤田観光、ツバキ・ナカシマ、セイコーグループなども買われました。ストップ高は5銘柄、ストップ安は1銘柄で、個別材料での物色そのものは生きていることがわかります。
整理すると、本日のセクター構図は「ディフェンシブと海運だけが残り、それ以外はすべて売られた」という、典型的なリスクオフの形でした。18日は「市場全体から資金が抜けたのではなく、市場の中で移動した」と書きましたが、本日は受け皿が2業種にまで縮み、実質的に資金が退避したと見るのが実態に近いでしょう。
テクニカル分析
トレンド
本日の下げで、短期に加えて中期のトレンド指標も崩れました。5日移動平均は6万7,805円96銭で、終値6万5,326円42銭はこれを2,479円54銭(3.66%)下回っています。18日に784円76銭下回った状態から、乖離が3倍以上に拡大しました。
より重いのは25日移動平均割れです。25日移動平均は6万5,785円59銭(推定であり確定値ではありません)で、終値はこれを459円17銭下回りました。25日線からの乖離率は-0.70%——18日の+2.43%から3.13ポイントの悪化です。18日の記事では「25日線までの距離は1,598円48銭あり、中期の下値支持まで1,500円前後の余裕がある」と書きましたが、その余裕は1日で使い切られました。75日移動平均も6万6,062円03銭で、終値は735円61銭下回っています。
残っているのは200日移動平均だけです。200日線は5万8,076円03銭(推定)で、終値はこれをなお7,250円39銭上回っています。長期の上昇トレンドそのものは維持されている——本日の下げを評価するうえで、この点は押さえておくべきでしょう。ただし52週高値7万2,831円73銭(6月22日)からの下落率は10.31%に達し、一般に「調整局面」と呼ばれる10%安の目安に到達しました。18日時点の-7.37%から、2.94ポイント拡大しています。
サポート・レジスタンス
本日の最大の変化は、やはり一目均衡表の雲の下抜けです。本日時点の雲は上限6万8,487円22銭、下限6万5,879円96銭(推定であり確定値ではありません)。終値6万5,326円42銭は、雲の下限を553円54銭下回りました。17日は雲の上、18日は雲の中、そして本日は雲の下——3営業日で一目均衡表の3つの局面をすべて通過したことになります。
一目均衡表の解釈では、終値が雲を下抜けた状態は弱気シグナルとされます。18日の記事で「17日に得た雲の上=強気というシグナルは、本日いったん取り消された」と書きましたが、本日はそれが弱気側へ振れました。翌営業日の雲は上限6万8,445円73銭、下限6万5,879円96銭と推定され、下限は動きません。戻す場合、まず6万5,879円96銭を終値で回復できるかが最初の関門になります。
他の一目指標を見ると、転換線は6万7,129円87銭で、終値はこれを1,803円45銭下回りました。18日に378円85銭上回って「まだ守られている」と書いた線は、本日明確に割り込んでいます。一方基準線は6万5,028円57銭(推定)で、終値はこれを297円85銭上回っています。本日守られた唯一のトレンド線が基準線——ここが最後の砦という位置関係です。
下値のメドを整理すると、(1)本日安値6万5,133円98銭、(2)基準線6万5,028円57銭、(3)8月5日安値6万4,555円52銭、(4)8月4日終値6万3,957円53銭・8月3日終値6万3,754円90銭の水準という順です。本日安値と基準線は105円41銭差でほぼ重なっており、6万5,000円近辺が当面の分水嶺になります。ここを割り込むと、次のまとまった支持は6万3,700〜6万4,600円と、1,000円以上下に空いています。
上値では、(1)8月7日終値6万5,606円71銭、(2)8月6日終値6万5,683円26銭、(3)25日線6万5,785円59銭、(4)雲下限6万5,879円96銭が6万5,600〜6万5,900円のわずか273円の幅に4つ集中しています。戻りの最初の関門は、この厚い帯です。その上には75日線6万6,062円03銭、本日始値6万6,812円27銭、転換線6万7,129円87銭が控えます。
オシレーター
RSI(14日)は46.1と推定され、18日の53.5から7.4ポイント低下しました。RSI(9日)は43.3で、18日の55.0から11.7ポイントの低下です。2営業日で5.63%下げてなお、RSIはいずれも40台——売られ過ぎの目安である30には届いていません。7月末から8月中旬にかけて上昇が続いた分の貯金が、まだ残っている状態です。裏を返せば「売られ過ぎだから反発する」と主張できる水準ではないということでもあります。なおこれらのRSIは推定であり確定値ではありません。
MACDは257.7、シグナル線は-36.4と推定され、その差(ヒストグラム)は+294.1。MACDがシグナルを上回る状態は、かろうじて維持されています。ただし18日のMACD418.8・ヒストグラム+528.7から、1営業日でヒストグラムが234.6縮小しました。18日の記事で「この状態があと数日続けばデッドクロスが視野に入る」と書きましたが、縮小ペースはむしろ加速しています。現在のペースが続けば、数営業日でデッドクロスが成立する計算です。
位置関係も確認しておきます。52週高値7万2,831円73銭からの距離は7,505円31銭(10.31%)。一方7月29日の直近安値6万448円90銭からの戻りは、なお4,877円52銭(8.07%)あります。18日時点の+11.60%から3.53ポイント縮小しましたが、7月末の急落からの回復局面そのものは、まだ半分以上残っているという評価になります。
市場心理
本日の市場心理は、18日から明確に段階が変わりました。18日の記事では「恐怖ではなく、利益確定と資金の付け替え」と結論づけ、その根拠として(1)値下がり銘柄が50.3%にとどまった、(2)米VIXが15.82と低位、(3)株安の日に円が買われなかったという3点を挙げました。本日、このうち1つ目が完全に崩れました。
値下がり銘柄は全体の74%に達しています。18日の記事で「本格的なリスクオフなら、値下がりは70〜80%に達します」と書いた、その水準にちょうど入りました。東証33業種のうち31業種が下落し、日経225構成銘柄の8割が下げた——これはもう「指数だけの下げ」ではありません。
ただし残り2つの根拠は、本日も生きています。米VIXは18日終値で15.84と、4.28%上昇したものの依然15台で、パニックの目安とされる20を超えていません。ドル円も159円25銭と、前日から0.36銭の円高にとどまり、安全通貨への急激な逃避は起きていません。「日本株は全面安になったが、グローバルなリスク回避はまだ起きていない」——これが本日の正確な状態です。
その一方で、日本市場固有の警戒感は明確に高まりました。日経平均VIは32.44と、平常時のレンジ(20〜30程度)を上抜け、取引時間中には一時38.08まで上昇しています。米VIX15.84との差は約2倍。投資家が今後1か月に想定している変動の大きさは、米国株より日本株のほうが際立って大きいということです。
値動きの質にも、警戒すべき点があります。高値が始値をわずか21円上回っただけの寄り天で、終値は安値の192円上。18日に続いて、戻りらしい戻りのないまま安値圏で引けました。2営業日連続で押し目買いが不在という事実は、「下がったら買う」という行動が市場から一時的に退場していることを示唆します。
一方で、投げ売りの兆候も見当たりません。売買代金は10兆1,151億円と、18日の10兆1,564億円からほぼ横ばい。下げ幅が1.21倍になったのに、資金の出入りの総量は増えていないのです。本格的な狼狽売りが出る局面では、売買代金は跳ね上がります。ストップ安がわずか1銘柄にとどまった点も同じ方向を示します。買い手が引っ込んだことで値が下に流れた下げであって、投げ売りが殺到した下げではない——ここが現時点での見立てです。薄い買いの上を滑り落ちる相場は、材料次第で戻りも速い反面、下も速いという両面を持ちます。
翌営業日の注目ポイント
翌営業日は8月20日(木)で、通常どおりの取引日です。連休や休場の予定はありません。注目点を4つ挙げます。
第一に、基準線6万5,028円57銭と本日安値6万5,133円98銭を守れるか。これが最大の焦点です。この2つは105円差でほぼ重なり、6万5,000円という節目とも近接しています。終値でここを割り込むと、一目均衡表のトレンド線がすべて上に来る状態となり、次のまとまった支持は6万3,700〜6万4,600円まで1,000円以上空きます。逆にここで下げ止まれば、雲の下抜けは「行き過ぎ」として修正される余地があります。
第二に、6万5,600〜6万5,900円の帯を取り返せるか。8月7日終値・8月6日終値・25日線・雲下限が273円の幅に4つ集中する厚い帯です。終値でこの帯の上を回復できれば、本日の下げは行き過ぎだったという評価に傾きます。本日終値からは553円〜613円の距離で、1日で埋められない幅ではありません。ただし雲下限は当面6万5,879円96銭から動かないため、壁が下りてくる助けは期待できません。
第三に、19日の米国市場、とりわけSOX指数の動きです。18日のSOX指数は4.98%安で、これが本日の東京市場を直撃しました。17日+1.64%→18日-4.98%と振れ幅が大きく、翌日の日本の半導体株を直接左右します。米長期債利回りの動向と原油価格も併せて確認したいところです。
第四に、ソフトバンクグループの動向です。本日1銘柄で下げ幅の22.7%を作ったという事実は、裏を返せばこの銘柄が戻せば指数も戻るということでもあります。1兆円規模の社債発行観測に関する続報、そして国内長期金利の水準が鍵になるでしょう。18日の記事でアドバンテストについて「1銘柄で約376円動いた事実は、裏を返せばこの銘柄が戻せば指数も戻るということ」と書きましたが、本日その主役はソフトバンクグループに交代しました。3営業日続けて、たった1銘柄が指数の説明変数になっています。
戦略展望
本日の2,134円安をどう位置づけるか。18日時点の「上昇局面のなかの調整」という評価は、本日で修正が必要になりました。順に確認します。
崩れた指標を並べると、5日線・25日線・75日線・転換線・雲(下限)——短期から中期までのほぼすべてです。18日の記事で「崩れたのは5日線と雲上限という短期の指標だけ」と書いた状態からは、明確に一段階進みました。52週高値からの下落率10.31%は、一般に調整局面と呼ばれる水準にあたります。
それでも残っている支えは3つあります。第一に基準線6万5,028円57銭を297円85銭上回って引けたこと。第二に200日線5万8,076円03銭を7,250円39銭上回り、長期トレンドは無傷であること。第三にMACDがシグナルを294.1上回る状態を維持していること。7月29日安値からの戻りも、なお8.07%残っています。「短中期は崩れたが、長期はまだ壊れていない」というのが、数字に照らした現在地です。
ただし楽観に傾きすぎるべきでない理由も3つあります。
ひとつは下げの広がりです。18日は値下がり50.3%で「指数だけの下げ」でしたが、本日は74%・31業種安。18日の下げは原因銘柄が戻れば指数も戻る性質を持っていましたが、本日の下げは市場全体の値付けが下がったものです。回復には、より広い範囲の買い戻しが要ります。
ふたつめは金利の構造性で、これは18日から変わっていません。約30年ぶりの長期金利水準は、株式のバリュエーションの前提そのものを動かします。本日はそこに「大型起債が債券需給を圧迫する」という新しい経路が加わりました。SBGの1兆円規模の社債発行観測が同社株を10%下げたという事実は、金利上昇局面では資金調達そのものが株価のリスク要因になりうることを示しています。
みっつめはオシレーターの余地です。RSI(14日)46.1・RSI(9日)43.3は、いずれも売られ過ぎの30には遠い水準です。「売られ過ぎだから反発」という論拠は、現時点では使えません。2営業日で5.63%下げてなおRSIが40台にとどまるのは、直前の上昇が大きかったからであり、その貯金が尽きるまで下げが続く余地は残っているということです。
局面の整理としては、6万5,900円(雲下限)より上か、6万5,000円(基準線・本日安値)より下かで状況認識を分ける、というのが素直な組み立てです。その間の約880円が、当面の攻防ゾーンになります。上を回復すれば「雲下抜けはだまし」、下を割れば「調整の第2波」——17日の強気シグナルが2営業日で否定されたばかりですから、本日の弱気シグナルもまた、確定するまでは仮のものとして扱うのが妥当でしょう。3営業日で雲の上・中・下をすべて通過した相場に、確定したトレンドを読み込むのは早計です。
なお本記事の数値は、当日確定分については公表値を、テクニカル指標については当サイトの計算による推定値を用いています。推定値は確定値ではありません。投資判断にあたっては、必ずご自身のチャートツールと最新の情報でご確認ください。
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