① 先週末の日本市場の動向(7/31)
先週末31日(金)の東京市場は、前日の米国市場でマイクロソフトを筆頭にハイテク株が上昇した流れを引き継ぎ、これまで売り込まれてきたAI・半導体関連株に買い戻しが殺到しました。日経平均は前日比2,494円59銭高(+4.03%)の64,362円02銭で取引を終了。始値61,957円10銭で寄り付いた後は一本調子の上昇となり、ザラ場高値は65,364円73銭、上げ幅は一時3,497円に達しました。売買代金は10兆1,069億円と大商いです。同日のTOPIXは4,003.30(+50.80、+1.29%)。日経の上昇率が+4.03%だったのに対しTOPIXは+1.29%にとどまっており、買われたのが市場全体ではなく値がさの半導体・AI関連に極端に集中していたことがわかります。
この日はキオクシアホールディングス、村田製作所、KOKUSAI ELECTRICが大引けでストップ高比例配分となりました。前日30日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が8%を超える急伸となり、31日には韓国サムスン電子も26%超の大幅高。日本・韓国・米国の半導体株が同時に噴き上がった一日でした。なお前引け後には日銀金融政策決定会合の結果が発表され、そこからはやや伸び悩む形となっています。
ただし、週間で見れば日経平均は249円13銭安(-0.39%)と2週ぶりの反落です。金曜の派手な数字だけを見ると強い週に見えますが、実態はまったく逆でした。週明け27日(月)はトランプ米大統領がイランへの大規模攻撃を当面見送る方針を表明したことで+320円と反発したものの、28日(火)は米半導体株安と韓国株の急落を受けて-2,566円(-3.95%)の急落。29日(水)も-930円と続落し、ザラ場では60,448円90銭まで沈み、5月21日以来の安値水準を付けました。28日には熊本県で最大震度7を観測する地震が発生し、製造業のサプライチェーンリスクが意識されたことも買い手控えにつながっています。30日(木)にアドバンテストの通期上方修正とサムスン電子の好決算を支えに+433円と反発し、そこから金曜の急伸につながった、という流れです。
週間の値幅は60,448円90銭〜65,364円73銭の4,915円(約8%)。1週間でこれだけ振れたという事実そのものが、いまの相場のボラティリティの高さを物語っています。TOPIXは週間で4,011.31→4,003.30の-0.20%とほぼ横ばいで、日経の-0.39%とあわせて「指数はほとんど動いていないのに、中身は激しく入れ替わった週」だったと整理できます。
セクター別では、全33業種中18業種が値上がり。上昇率トップはTOYOタイヤなどゴム製品でした。輸出株ではトヨタ自動車などの自動車が大幅高、テルモなどの精密機器、キーエンスなどの電機も堅調。内需ではオリエンタルランドなどのサービス、JTなどの食料品が高い一方、関電工などの建設は安く推移しました。目立ったのは金融株の弱さで、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行が大幅安、野村ホールディングスなどの証券、オリックスなどのその他金融も売られています。下落率トップは住友電気工業などの非鉄でした。以下は先週の東京市場のセクター別の方向感です。
| セクター | 週間の方向感 | コメント |
|---|---|---|
| ゴム製品 | 値上がり率トップ | TOYOタイヤなどが牽引し33業種で最上位 |
| 自動車 | 大幅高 | トヨタなど。輸出株の一角として週を通じて買われる |
| 精密機器・電機 | 堅調 | テルモ・キーエンスなど。週末の半導体急騰にも連動 |
| サービス・食料品 | 上昇 | オリエンタルランド・JTなど内需の一角に資金 |
| 建設 | 下落 | 関電工など。内需のなかでもまちまちの展開 |
| 銀行・証券・その他金融 | 大幅安 | 三菱UFJ・野村・オリックス。金融株がそろって売られる |
| 非鉄 | 値下がり率トップ | 住友電気工業などが売られ33業種で最下位 |
※業種別の方向感は市場概況の記述に基づく整理です。個別の週間騰落率は集計元により差が出るため、ここでは水準ではなく方向のみを示しています。
② 米国市場の動向(7/31)
同じ31日(金)の米国市場は主要3指数がそろって上昇しました。ダウ工業株30種平均は276.97ドル高(+0.53%)の52,485.03ドルと続伸。S&P500は52.09ポイント高(+0.70%)の7,489.72で、取引時間中には9日ぶりに7,500ポイント台を回復する場面がありました。ナスダック総合は251.68ポイント高(+1.00%)の25,373.85と大幅高。ナスダック100は+0.60%の28,274.19です。
相場を押し上げたのは前日引け後に決算を発表したアマゾンで、+15.32%の急騰。主力のクラウド事業AWSの売上高が予想を上回り、オンラインストアや広告サービスも堅調でした。これを受けて他のハイパースケーラーも連れ高となり、アルファベット(C株)が+6.88%、メタが+3.28%、マイクロソフトが+3.02%、エヌビディアが+2.93%と続いています。
一方でアップルは-7.35%と急落しました。iPhone売上高は22%増と好調だったものの、サービス部門と中国での売上高が予想に届かず、7-9月期の売上高見通しも9〜11%増と市場予想の12%増を下回ったことが嫌気されています。半導体も終盤に下げに転じ、マイクロンが-5.90%、サンディスクが-5.09%、AMDが-1.90%。SOX指数は+0.07%の11,311.07とかろうじてプラスを保った程度で、東京市場ほどの熱狂はありませんでした。
もうひとつ見逃せないのが金利です。取引途中に株価が下げに転じた背景には米国債利回りの急上昇があり、米10年債利回りは4.718%(前日比+5.5bp)まで水準を切り上げました。これはウォーシュFRB議長のインフレ抑制姿勢に対する市場の信認が後退したことを受けた動きとみられています。市場では「長期金利が5%に近づけば、その水準は投資家心理を悪化させ、株式のバリュエーションに圧力をかける可能性がある」との指摘も出ています。
週間ベースでは主要3指数がそろって上昇しました。ダウは+1.04%、S&P500は+1.05%、ナスダック総合は+1.59%です。ただしSOX指数は週間-4.30%(11,818.88→11,311.07)と大きく下落しています。29日には10,447.49まで売られ、30日に+8.19%と急伸した末の水準であり、半導体だけは依然として傷が深いことがわかります。恐怖指数(VIX)は15.99(-6.44%)まで低下。29日には20.66まで跳ね上がっていたことを踏まえると、週末にかけて警戒感が急速に沈静化したことが読み取れます。
③ 時間外取引・サンデーダウ・サンデーナスダックの状況
週末の時間外(先物)市場は、米国株については小じっかりで週を終えています。サンデーダウ(ダウ先物)は52,635ドル。金曜の現物終値52,485.03ドルに対して約+150ドル(+0.29%)と、わずかに上回る水準です。サンデーナスダック(ナスダック100先物)は28,404で指数比+130ポイント(+0.46%)、S&P500先物(Eミニ)は7,519.25で現物比+0.39%。いずれも小幅高で、半導体の投げ売りは一巡したという見方を裏付ける並びです。
ところが、日経225先物だけはまったく逆の動きをしています。大阪取引所のナイトセッションは62,950円で、日中終値比770円安。金曜の現物終値64,362円02銭と比べると1,412円安(-2.19%)という大きな差です。CME日経平均先物も63,310円(大証終比-410円)で、こちらも現物を1,000円以上下回っています。CME先物の日中値幅は62,650〜65,505円と、こちらもきわめて荒い展開でした。
この「米国株は小じっかり、なのに日経先物だけ大幅安」という現象を説明するのが為替です。ドル円は157円43銭と、前週末の163円83銭から1週間で6円40銭(-3.91%)も円高に振れました。とりわけ7月30日夜、162円80銭台から157円90銭まで5円弱の急落があり、これは政府・日銀による円買い・ドル売り介入とみられています。31日のロンドン市場でも160円50銭から158円54銭まで2円程度急落する同様の動きがありました。金曜の東京市場が円安を前提にした半導体の買い戻しで沸いていた一方で、時間外では円高が進み、それが先物に反映された格好です。
つまり週明けの寄り付きは、金曜終値64,362円ではなく63,000円前後からのスタートが現時点の市場の見立てということになります。これは今週の想定レンジを考えるうえで決定的に重要な前提です。下表・下図では、まず金曜終値の通常指標(ダウ・S&P500・ナスダック)を示し、その後に時間外のサンデーダウ・サンデーナスダック等の先物、続いてVIX・為替・商品などの指標を並べています。
| 指標 | 水準 | 変化 | コメント |
|---|---|---|---|
| ダウ平均(金終値) | 52,485.03ドル | +0.53% | 続伸。アマゾンの好決算で投資家心理が改善。週間+1.04% |
| S&P500(金終値) | 7,489.72 | +0.70% | 9日ぶりに7,500台を回復する場面。週間+1.05% |
| ナスダック総合(金終値) | 25,373.85 | +1.00% | 大幅高。ハイパースケーラーが指数を押し上げ。週間+1.59% |
| サンデーダウ(ダウ先物) | 52,635ドル | ダウ比 +0.29% | 現物を約150ドル上回る。週明けは小じっかりの気配 |
| サンデーナスダック(NQ) | 28,404 | 指数比 +0.46% | 小幅高。半導体の投げ売りは一巡感 |
| S&P500先物(Eミニ) | 7,519.25 | 指数比 +0.39% | 現物をやや上回る水準で週末を通過 |
| 日経225先物(大取ナイト) | 62,950円 | 現物比 -2.19% | 日中終値比770円安。現物終値からは1,412円安 |
| VIX(恐怖指数) | 15.99 | -6.44% | 警戒感は大きく低下。7/29の20.66から急速に沈静化 |
| ドル円 | 157.43円 | 週間 -6.40円 | 7/30夜に5円弱の急落。政府・日銀の円買い介入とみられる動き |
| WTI原油(NY終値) | 84.67ドル | 週間 -5.20% | 週半ばに79ドル台へ下落後に切り返し。中東再緊迫で時間外は86ドル台 |
| 金(NY終値) | 4,107.0ドル | +0.17% | 高値圏を維持。週間では+0.97% |
| 米10年債利回り | 4.718% | +5.5bp | FRBのインフレ対応への信認後退で金曜に急上昇 |
| BTC/USD | 63,450ドル | 週間 -1.0% | 6.3万ドル台で膠着。株高への追随は限定的 |
| 日経225(金終値) | 64,362.02円 | +4.03% | +2,494円の急伸。ただし週間は-0.39%と2週ぶり反落 |
※サンデーダウ・サンデーナスダック等は金曜の時間外取引終了時点(米東部時間17時)の値であり、週明けの実際の寄り値とは乖離する可能性があります。日経225先物は大阪取引所ナイトセッション終値。

④ 週末の国際情勢ハイライト
| 項目 | リスクレベル | 状況・影響 |
|---|---|---|
| 中東(イラン・ヨルダン) | 高 | 米・イランの対立が再燃。米イスラエルによるイラン施設爆撃計画も報道 |
| 為替介入 | 高 | 7/30夜に円買い介入とみられる動き。8/7までに財務省が実績を公表 |
| 米Fed(FOMC) | 中〜高 | 3.50-3.75%で据え置き(9対3)。ウォーシュ議長の情報発信に不透明感 |
| 日銀 | 中〜高 | 1.00%据え置き。展望レポートがタカ派化し9月利上げ観測が浮上 |
| 米雇用・景況感 | 高 | 3日ISM製造業、5日ISM非製造業・ADP、7日雇用統計と週後半に集中 |
| 中国景気 | 中 | 3日製造業PMI、7日貿易収支、9日CPI・PPIを確認 |
■ 中東(イラン・ヨルダン・イスラエル)
先週は週明けにトランプ米大統領がイランへの大規模攻撃を当面見送る方針を表明し、いったんは緊張緩和期待が高まりました。しかし週後半にかけて米・イランの対立は再燃しています。親米国であるヨルダンに対するイランの攻撃と、それに対する米国の報復が見込まれる情勢となり、中東は再び混迷状態に陥りました。さらに週末には、米国とイスラエルが近くイランのエネルギー関連施設に過去最大級の爆撃を加える計画を進めていると伝わっています。
原油はこの動きに敏感に反応しています。WTI原油は週半ばに79ドル台まで下げた後に切り返し、31日のNY終値は84.67ドル。週間では-5.20%ですが、週末の時間外では86ドル台まで水準を切り上げています。原油高はインフレ圧力として意識されやすく、これが早期利上げ観測につながれば長期金利の上昇を通じてハイテク株の重しになります。株式市場にとっては明確なリスク要因ですが、一方で地政学リスクが高まる局面では資金が半導体関連へ一極集中しやすいという見方も出ており、単純な悪材料とは言い切れない点は押さえておきたいところです。
■ 為替介入とドル円
先週最大のサプライズは為替でした。7月30日夜、ドル円が162円80銭台で推移するなか、政府・日銀による円買い・ドル売り介入とみられる動きが強まり、5円弱安い157円90銭まで急落しました。同じタイミングで米財務省が邦銀に為替介入の可能性を通知したとの報道や、ニューヨーク連銀によるユーロ・円のレートチェック観測も伝わっています。31日のロンドン市場でも160円50銭から158円54銭まで2円程度急落する類似の動きがあり、週末は157円43銭で終えました。
日本株にとって円高は輸出企業の採算悪化要因であり、金曜の半導体主導の急騰とは真逆の力が働きます。実際、時間外の日経先物が現物を1,400円以上下回っているのは、この円高を織り込んだ動きと考えるのが自然です。なお8月7日(金)までに財務省が4-6月期の為替介入実績(日次ベース)を公表する予定で、これも今週の材料となります。追加介入への警戒が強まれば円買いが先行しやすい一方、中東情勢の悪化で「有事のドル買い」が入れば下げづらいという、読みにくい地合いが続きそうです。
■ 米Fed(FOMC)
7月28〜29日に開催されたFOMCでは、政策金利が3.50〜3.75%で据え置かれました。ただし採決は9対3で、反対票を投じた地区連銀総裁3名はいずれも利上げを主張しています。ウォーシュFRB議長は会見で追加利上げの可能性を排除せず「必要なら行動をためらわない」とインフレ抑制への強い姿勢を示した一方、これまでの発言から一段と踏み込む形にはならず、市場ではややハト派的と受け止めた向きもあったようです。
気になるのは市場とのコミュニケーションです。ウォーシュ議長はジャクソンホール会合について「可能であれば、大きな問いも提起したい」と発言しており、FOMCの開催頻度削減を提案していると伝わっていることもあわせ、政策運営の不確実性が意識される状況になっています。こうした不透明感は長期金利の上昇余地を広げる方向に働きやすく、金曜の10年債利回り急上昇もその文脈で説明されています。
■ 日銀
日銀は7月30〜31日の金融政策決定会合で政策金利を1.00%に据え置きました。据え置き自体は想定通りでしたが、注目されたのは同時に公表された展望レポートです。景気のリスクバランスが「下振れ」から「中立」に引き上げられ、物価は引き続き「上振れリスクが大きい」とされました。物価上振れリスクの強調が目立ち、想定以上にタカ派的な内容と受け止められています。
この結果、9月の追加利上げ実施の可能性は幾分高まったとの見方が広がりました。株式市場にはややマイナス材料であると同時に、介入で押し下げられたドル円水準の戻りを抑制する要因にもなります。今週は8月5日(水)に6月15〜16日開催分の金融政策決定会合議事要旨が公表される予定で、政策委員の議論の温度感を確認する材料となります。
■ 米国の景況感と中国
今週の米国は経済指標が集中します。3日に7月ISM製造業景気指数(市場予想54.0、前回53.3)、5日に7月ADP雇用統計と7月ISM非製造業景気指数、7日に7月雇用統計という並びです。6月の米雇用統計は失業率4.2%、非農業部門雇用者数が前月比+5.7万人、平均時給が前年比+3.5%でした。労働市場の拡大が示されれば引き締め的な金融政策が意識され、ドル買い・金利上昇につながりやすい構図です。中国は3日に7月製造業PMI、5日にサービス業PMI、7日に7月貿易収支、9日に7月消費者物価指数・生産者物価指数が発表されます。
⑤ 今週(8/3〜8/7)の日本市場の見通し
以上を踏まえた今週の東京市場の見通しです。まず前提として、今週は日本の祝日がなく、3日(月)から7日(金)までの通常5営業日です。8月の祝日は山の日(11日・火)のみで翌週にあたります。6日(木)は広島原爆の日ですが、市場は通常取引です。
テクニカル面を確認すると、金曜終値64,362円02銭は5日移動平均62,991円95銭を大きく上回り、75日移動平均64,845円40銭のわずか下、ボリンジャーバンド-1σの64,260円79銭の直上という位置にあります。25日移動平均は66,880円58銭と現値から約4%上方にあり、中期トレンドは依然として下向きです。年初来高値は6月22日の72,831円73銭で、そこからの下落率は約12%。7月29日のザラ場安値60,448円90銭まで見れば約17%の調整でした。
ただし、今週の見通しで最も重視すべきなのは金曜終値ではなく、時間外の先物が示す水準です。すでに述べた通り、大取ナイトセッションは62,950円、CME先物は63,310円で、いずれも現物終値を1,000円以上下回っています。5日移動平均62,991円95銭、日経225先物のピボット62,903円も、ちょうどこの63,000円前後に集中しています。つまり複数の異なる指標が「週明けの基準は63,000円近辺」という同じ答えを示しているわけです。
以上から、先週金曜の終値64,362円を起点に、上値想定65,400円(+1.6%)/基本シナリオ63,000円(-2.1%)/下値想定60,400円(-6.2%)を今週の想定レンジとします。金曜終値を基準にすると下方向に大きく偏って見えますが、これは大引け後にナイトセッションが1,412円安と急落したためです。先物が示す月曜寄り付き想定の63,000円を起点にすれば、上値+3.8%・下値-4.1%とほぼ対称のレンジになります。

■ 上値想定 65,400円:半導体リバウンド継続シナリオ
上値のメドを65,400円に置く根拠は、7月31日(金)に付けたザラ場高値65,364円73銭です。ここに至るまでにはボリンジャーバンド-1σの64,260円79銭、先物ピボットのS1(第1上値抵抗)64,316円、75日移動平均64,845円40銭という3つの関門が並んでおり、これらを順に突破していく必要があります。
このシナリオを支える材料はあります。SOX指数は一時3月末からの上昇幅の半値押しとなり、25日移動平均との乖離も引き続き大きい状態です。加えてハイパースケーラーの決算発表が一巡し、AI投資に対する過剰投資懸念というリスク要因が後退しつつあります。アマゾン+15%、アルファベット+6.9%という反応が示す通り、市場は「巨額のAI投資は回収できる」という方向に傾き始めました。6月の軟調が7月の半導体全般の調整につながった経緯を踏まえれば、今度は逆にハイパースケーラーが半導体リバウンドのリード役となる可能性があります。
実現の条件は、①ドル円が157円台から下げ止まり、追加の円高が進まないこと、②米SOX指数と韓国半導体株が引き続き堅調に推移すること、③週後半の米ISM・雇用統計が過度な金利上昇を招かないこと、の3点です。
■ 下値想定 60,400円:円高・金利上昇による調整継続シナリオ
下値のメドは7月29日(水)に付けたザラ場安値60,448円90銭(5月21日以来の安値)に置きます。日経225先物のピボット分析でもB1(第1下値支持)が60,296円と近接しており、この60,300〜60,500円のゾーンが下値の第一関門です。その手前にはボリンジャーバンド-2σの61,641円があり、ここを終値で明確に割り込むかどうかが分岐点になります。
警戒すべきシナリオは複数あります。第一に追加の円買い介入です。財務省の介入実績公表を控え、政府・日銀が実弾を投入する余地は残っています。157円台からさらに円高が進めば輸出企業の採算悪化が意識され、金曜の急騰分は容易に吐き出されます。第二に米長期金利の上昇。10年債利回りが4.7%台に乗せ、「5%に近づけばバリュエーションに圧力」との指摘が出ている以上、金利上昇は高PER銘柄の直撃弾となります。第三に日銀の9月利上げ観測。展望レポートがタカ派化したことで、国内金利の先高観も株の重しになります。第四に中東情勢で、イランのエネルギー施設への大規模爆撃が現実になれば原油急騰→インフレ再燃→金利上昇という連鎖が起こり得ます。
加えて、金曜の急騰そのものが売り方の買い戻し主導だった可能性も否定できません。キオクシアホールディングスは決算発表で会社予想に届かず、時間外取引では軟化しています。ストップ高で終わった銘柄が週明けに反落するようだと、指数全体の戻り相場も腰折れしかねません。
■ 基本シナリオ 63,000円:先物水準でのもみ合い
最も可能性が高いとみるのが、63,000円前後を中心とした神経質なもみ合いです。すでに述べた通り、ナイトセッション終値62,950円、5日移動平均62,991円95銭、先物ピボット62,903円という3つの水準がこの価格帯に集中しており、テクニカル的にも意識されやすい位置にあります。
展開のイメージは、月曜に現物終値から1,000円超の窓を開けて下落してスタートし、そこから米ISM製造業(3日)の結果を確認しながら方向を探る、というものです。週央はAMD・スペースXなど米主要企業の決算、週後半はISM非製造業(5日)と米雇用統計(7日)という関門が待っています。国内でも6日(木)にソフトバンクグループ、レーザーテック、JX金属、古河電気工業、レゾナックといったAI・半導体関連の決算が集中しており、個別で戻り売り圧力が強まる銘柄も出やすい局面です。
加えて今週は三菱UFJ、三菱商事、トヨタ自動車、三井物産、三菱重工業、日本製鉄、花王、日本郵船、NTT、任天堂、住友不動産、リクルートホールディングス、INPEXなど主要銘柄の決算が目白押しです。半導体一極集中の物色が続くと他銘柄の決算には関心が向かいにくいものの、指数がもみ合うなかで個別の材料株物色が活発になる展開は十分想定されます。
■ 今週の注目イベント
- 8/3(月):7月新車販売・軽自動車販売(14:00)、中国7月製造業PMI(10:45)、米7月ISM製造業景気指数(23:00)、米6月建設支出。カナダ市場休場。決算はパランティア、バーテックス、オン・セミコンダクター、マリオット。
- 8/4(火):7月マネタリーベース(8:50)、ファストリの7月国内ユニクロ売上速報、10年国債入札、米6月貿易収支(21:30)、米6月JOLTS求人件数(23:00)。決算はスペースX・AMD、キャタピラー、メルク、アムジェン、アリスタ、マクドナルド、ファイザー、BP。
- 8/5(水):6月毎月勤労統計(8:30)、日銀金融政策決定会合議事要旨(6月15-16日分、8:50)、中国7月サービス業PMI、米7月ADP雇用統計(21:15)、米7月ISM非製造業景気指数(23:00)。決算はイーライリリー、ディズニー、ウエスタンデジタル、サンディスク、ウーバー、ノボノルディスク。
- 8/6(木):広島原爆の日、30年国債入札、7月都心オフィス空室率(11:00)、米新規失業保険申請件数(21:30)。国内決算はソフトバンクグループ、レーザーテック、JX金属、古河電気工業、レゾナックHD、味の素とAI・半導体関連が集中。
- 8/7(金):6月全世帯家計調査(8:30)、6月景気動向指数(14:00)、H3ロケット9号機打ち上げ、GPIF 4-6月期運用状況報告、米7月雇用統計(21:30)、中国7月貿易収支。財務省の為替介入実績(4-6月・日次ベース)の公表期限。
- 通期の変動要因:ドル円157円台からの追加介入警戒、米10年債利回りの5%接近、中東でのイラン施設爆撃報道、SOX指数と韓国半導体株の動向。
■ 戦略・スタンス
今週は「窓開けスタートを慌てて追わない」を基本スタンスとします。金曜の+2,494円という数字だけを見ると強気になりたくなりますが、時間外の先物はすでにその上げの半分以上を吐き出しています。月曜の寄り付きで下に窓を開けたときに慌てて売る、あるいは金曜の勢いを引き継ぐと決めつけて高く買う、という両方の反応がいちばん危ない局面です。まずは63,000円前後で寄り付いた後、そこを維持できるかどうかを確認するのが順序として正しい対応でしょう。
具体的な組み立ては次の4点です。①半導体・AI関連は6日の国内決算を確認してから。ソフトバンクグループやレーザーテックの決算が出るまでは、ストップ高で終わった銘柄への飛びつき買いは避けます。②輸出関連は為替の影響を織り込む。円が157円台からさらに切り上がるようなら、自動車や電機の採算前提は崩れます。逆に介入警戒が薄れて円安に戻るなら、金曜の物色が続く展開もあり得ます。③金融株は先週大幅安となった反動と日銀の9月利上げ観測が綱引きする状況で、方向が定まるまで比率は抑えめに。④資源・エネルギー株は中東次第で振れ幅が大きいため、原油86ドル台という水準を前提にポジションサイズを管理します。
リスク管理としては、VIXが15.99まで低下した現状は「警戒感が薄れた」というより「オプション市場が織り込む変動が小さくなった」局面と捉え、むしろサプライズに対して脆いとみておくのが安全です。7月29日に20.66まで跳ねた記憶はまだ新しく、同じことが週後半の米雇用統計で起こる可能性は十分にあります。また日経とTOPIXの乖離、つまり「指数を動かしているのが値がさ数銘柄なのか、市場全体なのか」を確認する習慣は、先週のような相場では特に効いてきます。金曜の日経+4.03%に対してTOPIX+1.29%という数字は、この上昇がまだ広がりを欠いていることを示していました。
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