前日に発表された米7月CPIが予想どおりの鈍化となり、SOX指数が2.49%高と急伸。その勢いがそのまま東京に流れ込みました。日経平均は784円53銭高の6万8,308円59銭で3日続伸し、6万8,000円台を回復しています。ただし一日の形は素直ではありません。9時21分に高値6万8,799円71銭を付けた後は上げ幅を削り、上ヒゲは491円、下ヒゲはわずか27円。この高値は一目均衡表の雲上限6万8,843円のわずか43円手前でした。一方TOPIXは14時31分に高値を付けてほぼ高値引け、連日の最高値更新。アドバンテストと東京エレクトロンの2銘柄だけで上げ幅の59%を稼いだ、極端に偏った一日でもありました。
本日の相場概況
8月13日の東京株式市場で日経平均株価は3日続伸し、前営業日比784円53銭(1.16%)高の6万8,308円59銭で取引を終えました。終値での6万8,000円台回復となり、10日の1,363円高、12日の553円高に続いて3営業日の合計上げ幅は2,701円88銭に達しています。
寄り付きから強い一日でした。始値は6万8,033円17銭——前営業日終値6万7,524円06銭を509円11銭上回るギャップアップです。そして本日の安値6万8,006円17銭は寄り付き直後の9時ちょうどに付けたもので、前営業日終値を482円11銭上回る水準にあります。つまりマドを一度も埋めることなく一日を終えたということです。
問題は、そこから先の失速でした。高値6万8,799円71銭を付けたのは9時21分——寄り付きからわずか21分後です。この時点で上げ幅は1,275円65銭に達していました。前引けの段階でも1,085円高の6万8,609円を保っています。しかし大引けは784円53銭高。日中高値から491円12銭を吐き出し、上げ幅は高値時点の61%まで縮小しました。
足型に落とすと、実体275円42銭の陽線に、上ヒゲ491円12銭、下ヒゲ27円00銭という形です。上ヒゲが実体の1.8倍、下ヒゲの18倍——12日が「下ヒゲ258円・上ヒゲ45円」という真逆の足だったことを思えば、わずか1営業日で買い手と売り手の力関係が入れ替わったように見える形です。日中値幅は793円54銭でした。
ただし、日経平均だけを見ていると本日の本質を取り違えます。TOPIXは37.04ポイント(0.89%)高の4,176.04で7日続伸し、12日に続いて連日の最高値更新となりました。しかも高値4,185.68を付けたのは14時31分——大引け1時間前です。終値は高値のわずか9.64ポイント下で、実質的な高値引けでした。日経平均は朝に高値を付けて崩れ、TOPIXは午後に高値を付けて引けた。同じ日の同じ市場で、2つの指数が正反対の一日を過ごしたことになります。
商いは大台を回復しました。東証プライムの売買代金は約10兆206億円で、12日の約9兆4,421億円から約5,785億円増加。10兆円台に乗せたのは久々です。ただし売買高は約24億350万株と、12日の約25億2,278万株から約1億1,928万株減少しました。株数は減ったのに金額は増えた——1株あたりの単価が高い銘柄に売買が集中したことの数字上の証拠です。値上がり銘柄は64.9%、値下がりは32.0%で、12日の63.2%からさらに改善しました。
主要マーケット指標
| 指標 | 数値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 68,308.59円 | +784.53円 (+1.16%) 3日続伸 |
| 日経平均 高値 / 安値 | 68,799.71 / 68,006.17 | 始値 68,033.17円 (値幅794円・上ヒゲ491円) |
| TOPIX | 4,176.04 | +37.04 (+0.89%) 7日続伸・連日の最高値更新 |
| TOPIX 高値 / 安値 | 4,185.68 / 4,149.78 | 始値 4,158.97 (高値は14時31分) |
| NYダウ (8/12終値) | 53,770.27 | -21.58 (-0.04%) |
| S&P 500 (8/12終値) | 7,748.50 | +20.30 (+0.26%) |
| ナスダック総合 (8/12終値) | 26,588.49 | +143.04 (+0.54%) |
| SOX指数 (8/12終値) | 12,399.38 | +300.90 (+2.49%) 主要指数で突出 |
| 米ドル/円 | 159円38銭前後 | 高値159.49 / 安値159.17 の狭いレンジ |
| 東証プライム 売買代金 | 約10兆206億円 | 12日の約9兆4,421億円から約5,785億円増加 |
| 東証プライム 売買高 | 約24億350万株 | 12日の約25億2,278万株から約1億1,928万株減少 |
| 東証プライム 値上がり/値下がり | 64.9% / 32.0% | 12日は63.2% / 34.1% |
| 上昇率トップ業種 | 銀行業 767.50 | +2.87% (2日連続で上位) |
| 上昇率2〜5位業種 | ガラス土石+1.86% / 電気機器+1.84% / 金属製品+1.73% / 機械+1.66% | 素材・設備投資関連が並ぶ |
| 下落率トップ業種 | ゴム製品 6,404.80 | -1.79% (2日連続で下落率トップ) |
| 下落率2〜5位業種 | 鉄鋼-1.14% / その他製品-0.64% / 輸送用機器-0.58% / 鉱業-0.53% | 下げ幅は限定的 |
| 米VIX指数 (8/12終値) | 14.55 | -0.73 (-4.78%) 8月最低水準 |
| NT倍率 | 16.36倍 | 前日16.31倍から0.05ポイント上昇 |
| 日経平均 52週高値からの距離 | -4,523.14円 (-6.21%) | 52週高値 72,831.73 (6/22)。12日は-7.29% |
| 7月29日安値からの戻り | +7,859.69円 (+13.00%) | 直近安値 60,448.90 (7/29) |
マクロ・地政学の視点
本日の相場を作ったのは、12日の日本時間夜に発表された米7月消費者物価指数(CPI)です。12日の東京市場は「結果待ちで前場が重い」一日でしたが、その未消化材料が本日、まとめて織り込まれました。
結果はほぼ完璧に予想どおりでした。総合指数は前月比0.1%上昇(予想0.1%)、前年同月比3.4%上昇(予想3.4%、前回3.5%)。コア指数は前月比0.2%上昇(予想0.2%)、前年同月比2.5%上昇(予想2.5%、前回2.6%)です。コアの前年比2.5%は2021年3月以来の低い伸びにあたります。
ここで注意したいのが、市場が後退させたのは「利下げ観測」ではなく「利上げ観測」だという点です。足元の米国ではインフレ再燃なら追加利上げもありうるという警戒が相場の重石になっていました。燃料高の一服で伸びが小幅に縮小し、しかもコアが2021年以来の低さまで落ちたことで、その警戒が一段と薄れたのが本日の出発点です。雇用の伸びも鈍化しており、9月のFOMCではインフレ抑制と雇用の下振れリスクを天秤にかける余地が広がったという受け止めが広がっています。
米国市場の反応は明確に半導体偏重でした。NYダウは21ドル58セント(0.04%)安の5万3,770ドル27セントとほぼ変わらず、S&P500は20.30ポイント(0.26%)高の7,748.50、ナスダック総合は143.04ポイント(0.54%)高の2万6,588.49。指数レベルでは穏やかな上昇にすぎません。ところがSOX指数は300.90ポイント(2.49%)高の1万2,399.38と、他指数の4倍から60倍の上昇率で駆け上がりました。金利感応度が最も高いセクターが、金利警戒の後退を最も素直に買った形です。
この「半導体だけが突出する」構図は、12日の東京市場でも同じでした。ただし12日は米3指数が下落するなかSOXだけが0.87%高という状況であり、本日は米国全体が上昇したうえでSOXがさらに突出しています。土台が違うぶん、東京での反応も大きくなりました。
そして業種別で目を引くのが、上昇率トップが2日連続で銀行業だったことです。本日は2.87%高で、12日も2.87%高でした。三菱UFJフィナンシャル・グループが2.86%高の3,709円、三井住友フィナンシャルグループが1.63%高の6,969円。米インフレ鈍化は本来なら金利低下要因であり、銀行株には向かい風のはずです。それでも銀行が買われ続けているという事実は、本日の銀行高が米金利ではなく国内要因(日銀の政策正常化観測や株主還元)で動いている可能性を示唆します。米金利観と国内金利観が別々に働いている——これが現在の日本株の複雑さです。
為替はほとんど動きませんでした。ドル円は159円38銭前後で、日中の高値159円49銭、安値159円17銭という32銭幅の狭いレンジです。CPIという最大級の指標を通過した直後にこの膠着は、結果が完全に予想どおりで、為替市場が動く材料にならなかったことを意味します。160円という節目が目前にあり、そこには当局の介入警戒が横たわっている点も、上値を抑えている要因でしょう。
市場心理を測る米VIX指数は8月12日終値で14.55と、11日の15.28から0.73ポイント(4.78%)低下しました。8月に入ってからの最低水準です。警戒水準の20を大きく下回り、15の節目も割り込んだ——CPI通過で当面の不確実性が一つ消えたことを、ボラティリティ市場は素直に映しています。もっともVIXが低いということは、悪材料への耐性が薄いということでもある点は、常に頭の片隅に置いておく必要があります。
セクター・個別銘柄の動き
買われたセクター・銘柄
業種別の上昇率トップは銀行業の2.87%高(767.50)、以下ガラス・土石製品1.86%高(2,427.17)、電気機器1.84%高(8,891.04)、金属製品1.73%高(2,111.95)、機械1.66%高(5,138.15)と続きました。金融・素材・設備投資関連が上位を占める構図です。
日経平均への寄与は、異様なまでに一極集中しました。アドバンテストが4.02%高の3万5,940円(前日比+1,390円)で、単独で日経平均を約335円49銭押し上げています。本日の上げ幅784円53銭の43%を1銘柄で稼いだ計算です。次いで東京エレクトロンが2.13%高の5万9,470円(+1,240円)で約124円70銭の寄与。この2銘柄だけで約460円19銭——上げ幅の59%に達します。
3位以下はイビデン(5.27%高の2万1,560円、+72円41銭寄与)、村田製作所(10.25%高の8,311円、+62円19銭寄与)、TDK(3.89%高の3,235円、+60円84銭寄与)。プラス寄与上位5銘柄の合計は約655円63銭で、上げ幅の84%を占めました。12日の64%から集中度は一気に高まっています。
個別の値動きで最も鮮烈だったのは村田製作所の10.25%高でしょう。773円高の8,311円という、時価総額上位銘柄としては極めて大きな一日の変動です。同じくTOPPANホールディングスが10.78%高の5,448円(+530円)と2桁上昇。太陽誘電も6.53%高の1万935円(+670円)と、12日の7.51%高に続いて連日の大幅高です。電子部品セクターに資金が集中したことがはっきり見て取れます。
半導体製造装置も総じて堅調でした。ディスコが4.56%高の6万5,830円(+2,870円)、レーザーテックが3.87%高の4万490円(+1,510円)。12日はレーザーテックが1.54%安、ディスコがほぼ変わらずでしたから、本日は出遅れ組にも買いが回ったことになります。キオクシアホールディングスは3.87%高の5万1,800円(+1,930円)と、こちらも連日の上昇です。キオクシア、フジクラ、太陽誘電が売買代金の上位を占めており、売買代金10兆円のかなりの部分がAIインフラ関連に吸い込まれたのが本日の実態でした。
大型株ではソフトバンクグループが1.00%高の5,575円、リクルートホールディングスが0.78%高の1万6,790円と、上げ幅こそ小さいものの上値を切り上げています。リクルートは10日のストップ高、12日の3.06%高に続いて3営業日連続の上昇となりました。
売られたセクター・銘柄
下落率のトップはゴム製品の1.79%安(6,404.80)で、12日に続いて2日連続の下落率トップです。以下鉄鋼1.14%安(826.20)、その他製品0.64%安(6,512.09)、輸送用機器0.58%安(4,850.58)、鉱業0.53%安(1,089.91)。下落率トップでも1.79%安にとどまり、5位は0.53%安——売り圧力そのものは本日も限定的でした。
指数の押し下げ役はファーストリテイリングです。0.90%安の7万7,350円(-700円)で、日経平均を約56円32銭押し下げました。下落率自体は1%にも届きませんが、株価水準が突出して高いためインパクトが大きくなります。12日も53円90銭のマイナス寄与でしたから、2日連続で最大の重石となった格好です。
2番目の重石はファナックの3.20%安の6,505円(-215円)で、約36円04銭のマイナス寄与。機械業種が1.66%高と上昇率4位だったなかでの逆行安です。以下コナミグループ(1.96%安の2万1,235円、-14円25銭寄与)、バンダイナムコホールディングス(2.05%安の5,252円、-11円06銭寄与)、ソニーグループ(1.65%安の3,700円、-10円39銭寄与)と続きました。
マイナス寄与上位5銘柄の合計は約128円06銭にとどまります。プラス上位5銘柄の655円63銭に対して5分の1以下です。売りは弱く、買いが極端に一部へ偏った——本日の需給を一言で言えばこうなります。
売られた銘柄の顔ぶれには一貫性があります。コナミG、バンダイナムコHD、ソニーGはいずれもゲーム・エンタメ関連です。「その他製品」業種が0.64%安となったのも、この一群が押し下げたためでしょう。半導体・電子部品に資金が集中した反動で、内需・エンタメから資金が抜けたという循環がはっきり出ています。
主力の一角ではトヨタ自動車が0.48%安の2,985円と小幅安で、輸送用機器業種の0.58%安と歩調を合わせました。フジクラも0.69%安の5,760円と反落しています。フジクラは売買代金上位に顔を出しながら株価は下落しており、高値圏での利益確定売りをこなす局面に入っている可能性があります。12日に3.94%高で買われた銘柄が翌日は売られた、という事実はAIインフラ関連の中でも物色対象が日替わりで回転していることを示しています。
テクニカル分析
トレンド
本日の日足は実体275円42銭の陽線ですが、上ヒゲ491円12銭、下ヒゲ27円00銭という、上値の重さを強く印象づける形になりました。日中値幅793円54銭のうち、実体が占める割合は35%にすぎません。12日は「下ヒゲ258円・上ヒゲ45円」でしたから、1営業日で足型が完全に反転したことになります。
もっとも、悲観するには早い理由もあります。本日の安値6万8,006円17銭は、前営業日終値6万7,524円06銭を482円11銭上回っています。マドを空けて始まり、一度もそれを埋めずに引けた——下値では買いが待ち構えていたことの証拠です。上ヒゲは「上値の重さ」を、未埋めのマドは「下値の堅さ」を、それぞれ同時に示しているのが本日の日足です。
移動平均線はすべて上向きで、終値はそのすべての上にあります。5日移動平均線6万6,818円57銭を1,490円02銭(2.23%)上回り、25日移動平均線6万5,771円28銭を2,537円31銭(3.86%)上回り、13週相当(65日)移動平均線6万6,375円77銭を1,932円82銭(2.91%)上回り、75日移動平均線6万5,643円23銭を2,665円36銭(4.06%)上回り、200日移動平均線5万7,699円38銭を1万609円21銭(18.39%)上回っています。12日に成立した5日線と25日線のゴールデンクロスは、5日線が401円63銭上昇したことで一段と明瞭になりました。
そして本日、最も重要なテクニカル上の出来事は一目均衡表の雲上限への接近です。雲上限(先行スパンA)は6万8,842円80銭、本日の高値は6万8,799円71銭——その差はわずか43円09銭でした。朝の急伸は雲上限のほぼ真下で止められ、そこから491円押し戻されたということです。終値6万8,308円59銭は雲上限の534円21銭下にあり、雲下限(先行スパンB)6万5,726円60銭からは2,581円99銭上。依然として雲の中という位置づけは変わっていません。転換線6万5,373円97銭、基準線6万5,203円20銭はいずれも遥か下方です。
中期の位置も確認しておきます。7月29日の直近安値6万448円90銭からは7,859円69銭(13.00%)の戻りで、ちょうど2週間で13%上昇したことになります。52週高値7万2,831円73銭(6月22日)までは4,523円14銭(6.21%)。12日時点の7.29%から1.08ポイント縮まりました。
サポートとレジスタンス
以下の水準は、確定日足から算出した8月13日終値時点の計算値です。
- 第1サポート: 6万8,006円 — 本日の安値。終値の303円下です。ここを割り込むと、本日空けた482円のマドを埋めに行く動きになります。マドの下端は前営業日終値の6万7,524円です。
- 第2サポート: 6万7,777円 — 25日ボリンジャーバンド+1σ。終値の532円下です。本日、終値ベースで初めてこの線を上抜けました。ここを維持できるかが、統計的な強気圏にとどまれるかの分かれ目になります。
- 第3サポート: 6万6,819円〜6万6,376円 — 5日移動平均線と13週相当(65日)移動平均線の帯です。終値の1,490円〜1,933円下。3営業日で2,700円上げた後の押し目としては、最初に意識される中期の支持帯になります。
- 第4サポート: 6万5,771円〜6万5,727円 — 25日移動平均線と一目均衡表の雲下限が44円幅で重なる帯です。終値の2,537円〜2,582円下。ここを終値で割り込めば、12日のゴールデンクロスは失敗と評価されます。
- 第1レジスタンス: 6万8,799円〜6万8,843円 — 本日の高値と一目均衡表の雲上限が43円幅で重なる、本日最大の壁です。終値の491円〜534円上。ここを終値で上抜けて初めて「雲を上に抜けた」と言えます。本日はこの帯に触れて跳ね返されたため、翌営業日以降の攻防が最大の焦点です。
- 第2レジスタンス: 6万9,782円 — 25日ボリンジャーバンド+2σ。終値の1,474円上です。雲上限を抜けた場合の次の目標になりますが、+2σは統計的には行き過ぎの領域でもあります。
- 第3レジスタンス: 7万円 — 心理的節目。終値の1,692円上です。その先には52週高値7万2,831円73銭(6月22日)が控えます。
オシレーターと移動平均
MACDは-22.87、シグナルは-551.92で、ヒストグラムは+529.05。前営業日の+426.86から102.19拡大し、8月6日のゴールデンクロス以降、5営業日連続で幅を広げています。注目すべきはMACD本体で、-257.32から-22.87へ234.45改善し、ゼロラインまで残り22.87ポイントまで迫りました。翌営業日にわずかでも上昇すれば、MACDはプラス圏に浮上します。「底打ち後の回復途上」から「トレンド転換の確認」へ移る一歩手前という位置です。
RSI(14日・単純)は56.24で、前営業日の54.81から1.43ポイント上昇しました。ワイルダー式では58.16です。買われ過ぎとされる70にはまだ14ポイント近い距離があり、中期では明確な過熱とは言えません。一方でRSI(9日)は85.61と、前営業日の85.03からさらに上昇。短期では完全な過熱圏です。期間の取り方で正反対の景色が見える状態は、12日から続いています。
ストキャスティクスには変化の兆しが出ました。ファースト%K(9日)は92.83で、前営業日の99.31から6.48ポイント低下しています。スロー%K(ファースト%D)は97.19、スロー%Dは95.05と、こちらはまだ上昇中です。すべてが買われ過ぎの目安80を大きく超えている点に変わりはありませんが、最も反応の速いファースト%Kが先に頭を下げた——上ヒゲ491円という日足の形と整合的な動きです。短期の一服は、すでに一日の中では始まっていたと読むこともできます。
NT倍率(日経平均÷TOPIX)は16.36倍で、前営業日の16.31倍から0.05ポイント上昇しました。日経平均の上昇率1.16%がTOPIXの0.89%を上回ったことの反映です。12日は逆にNT倍率が低下していましたから、2営業日連続で日経平均とTOPIXの主従が入れ替わっていることになります。アドバンテスト・東エレクという値がさ半導体2銘柄が日経平均を押し上げ、銀行を含む幅広い銘柄がTOPIXを支えた——2つの指数が別々のエンジンで動いているのが現在の相場です。
ボリンジャーバンドでは、25日ベースの中心線が6万5,771円28銭、+1σが6万7,776円72銭、+2σが6万9,782円15銭、-1σが6万3,765円85銭です(標準偏差2,005円44銭)。本日終値6万8,308円59銭は+1σを531円87銭上回りました。12日は+1σの248円下でしたから、1営業日で+1σを明確に上抜けたことになります。+2σまでは1,473円56銭。統計的には強気圏に入ったが、行き過ぎの領域にはまだ達していないという位置づけです。
なお、本項の移動平均線・一目均衡表・ボリンジャーバンド・RSI・ストキャスティクス・MACDの各数値は、確定日足から当サイトが算出した計算値です。オシレーター類および一目均衡表は算出方法(平滑化の手法や先行スパンのずらし方)によってチャートツールごとに表示値が異なる場合があり、推定であり確定値ではありません。売買判断にあたっては必ずご自身のチャートツールで実数値をご確認ください。
市場心理
本日の市場心理を一言で表すなら「朝に全部やってしまった日」です。
米CPIという最大の関門を無難に通過し、SOX指数が2.49%高。東京市場は509円のギャップアップで始まり、21分後には1,275円高まで駆け上がりました。買いたい人は、寄り付きから9時21分までの間にすべて買ったということです。そしてそこから大引けまでの5時間強で、上げ幅の39%が失われました。
この失速をどう読むか。悪材料が出たわけではありません。ドル円は32銭幅の膠着、VIXは8月最低の14.55、値上がり比率は64.9%と前日から改善。相場の地合いそのものは崩れていないのです。にもかかわらず上値が重かった理由として最も説得力があるのは、テクニカルな節目に到達したという説明でしょう。高値6万8,799円は一目均衡表の雲上限6万8,843円のわずか43円手前です。チャートを見ていた参加者が、示し合わせたようにそこで手を止めた——そう考えるのが自然です。
もう一つ、本日の心理を象徴するのが売買代金と売買高の逆行です。売買代金は10兆206億円へ約5,785億円増えた一方、売買高は約1億1,928万株減りました。参加者は増えていないのに、より単価の高い銘柄を売買したということです。アドバンテスト3万5,940円、東京エレクトロン5万9,470円、キオクシア5万1,800円、ディスコ6万5,830円——資金が値がさ半導体に吸い寄せられた数字上の裏付けになります。
その集中度は数字にすると際立ちます。アドバンテスト1銘柄で上げ幅の43%、東京エレクトロンと合わせて59%、上位5銘柄で84%。12日は上位5銘柄で64%でしたから、わずか1営業日で20ポイントも集中が進んだことになります。指数は上がったが、その理由は市場全体ではなく、ごく少数の銘柄にある——これは強さではなく、脆さの指標として読むべきでしょう。
ただし、TOPIXの動きは別の物語を語っています。0.89%高の4,176.04で7日続伸、連日の最高値更新。しかも高値を付けたのは14時31分で、ほぼ高値引けです。日経平均が朝に高値を付けて崩れた同じ日に、TOPIXは午後に高値を付けて引けた。値がさ半導体が失速した後も、銀行を含む幅広い銘柄が買われ続けていたことを意味します。日経平均の上ヒゲだけを見て「失速した相場」と結論づけるのは早計です。
本日、記憶しておくべき数字を挙げるなら「43円」でしょう。本日の高値と一目均衡表の雲上限との距離です。3営業日で2,700円上げた相場が、最後の43円を越えられなかった。この43円を越えられるかどうかが、7月末からの上昇が「戻り」で終わるのか「トレンド転換」になるのかを決めます。
翌営業日の注目ポイント
- 雲上限6万8,843円を上抜けるか — 本日の最大の焦点です。高値6万8,799円71銭で43円09銭手前まで迫って跳ね返されました。終値でここを上抜ければ、一目均衡表上は雲を抜けたことになり、中期のトレンド転換シグナルとなります。逆に本日の高値を超えられずに日を重ねると、上ヒゲが「戻り天井」の目印として意識され始めます。
- MACDのゼロライン浮上 — MACD本体は-22.87で、ゼロラインまで残り22.87ポイントです。翌営業日にわずかな上昇でもプラス圏に浮上します。ヒストグラムは5営業日連続で拡大中であり、モメンタムは依然として上向きです。
- 本日空けた482円のマドを埋めるか — 安値6万8,006円17銭が前営業日終値6万7,524円06銭を482円11銭上回っており、マドは未埋めです。6万8,006円を割り込むとマド埋めの動きが意識されます。SQ絡みの需給で朝方に振れやすい点と合わせて注意が必要です。
- 値がさ半導体への集中が続くか — アドバンテスト1銘柄で上げ幅の43%、上位5銘柄で84%という極端な偏りです。この構造は、主導株がひとたび売られると指数が一気に崩れる脆さを抱えています。アドバンテストは4.02%高、ディスコは4.56%高、キオクシアは3.87%高と短期の上昇率が大きく、利益確定売りが出やすい水準でもあります。
- TOPIXが最高値圏を維持できるか — 連日の最高値更新で、ほぼ高値引けです。翌営業日も4,176を上回って推移できれば、上昇の主体が値がさ株だけではないことの確認になります。銀行業が2日連続で上昇率トップという点も、TOPIXを支える柱として注目です。
- ボリンジャーバンド+1σを維持できるか — 終値6万8,308円59銭は+1σの6万7,776円72銭を531円87銭上回りました。+1σの上に居座れるかどうかが、統計的な強気圏にとどまれるかの判定になります。
- 短期の過熱シグナル — RSI(9日)は85.61、ストキャスティクスのスロー%Dは95.05と過熱圏です。ただしファースト%Kは99.31から92.83へ低下しており、短期の調整はすでに一日の中で始まっている可能性があります。RSI(14日)は56.24と中立圏で、中期の余地は残っています。
- ドル円159円台と160円の壁 — 本日は159円17銭〜159円49銭という32銭幅で膠着しました。CPIを通過しても動かなかったということは、次の材料が出るまでこのレンジが続く可能性を示します。160円接近時は介入警戒が高まる水準です。
戦略展望
本日の相場は、数字だけを見れば文句のつけようがありません。日経平均は784円高で3日続伸、6万8,000円台を回復。TOPIXは連日の最高値更新。売買代金は10兆円台を回復し、値上がり比率は64.9%と前日からさらに改善しました。VIXは8月最低の14.55で、警戒感も薄い。指標のほぼすべてが強気を示しています。
それでも本日を「手放しで良い日」と評価できないのは、上値の止まり方が明確すぎたからです。9時21分の高値6万8,799円71銭は、一目均衡表の雲上限6万8,843円の43円手前。そこから大引けまでに491円押し戻され、上ヒゲは実体の1.8倍になりました。悪材料もないのに、テクニカルな壁の手前で止められた——この事実は、市場参加者が「ここから先は別の判断がいる」と考えていることを意味します。
したがって、当面の判断基準はきわめてシンプルです。6万8,843円を終値で上抜けるかどうか。抜ければ7月29日以来の上昇は「戻り」から「トレンド転換」へ格上げされ、次の目標はボリンジャーバンド+2σの6万9,782円、そして7万円の心理的節目になります。抜けられなければ、本日の高値が戻り天井として機能し、+1σの6万7,777円、5日線の6万6,819円へと押し目を探る展開が想定されます。
もう一つ、投資家として意識しておくべきは本日の上昇の「質」です。アドバンテスト1銘柄で上げ幅の43%、上位5銘柄で84%。12日の64%から集中度は大きく高まりました。12日の記事では「寄与の集中度がやや緩んだ」ことを前向きに評価しましたが、本日その改善は逆転しています。指数が上がったからといって、自分の持ち株が上がったとは限らない典型的な相場です。売買代金が増えたのに売買高が減ったという事実も、資金が一部の値がさ株に吸い寄せられたことを裏づけています。
ただし、TOPIXの連日最高値更新という事実は、この懸念を部分的に打ち消します。値がさ半導体が失速した午後にTOPIXが高値を更新したのですから、買われていたのは半導体だけではありません。銀行業が2日連続で上昇率トップという点も重要です。米インフレ鈍化という本来なら銀行に不利な材料が出た日に、銀行が上昇率トップだった——日本の金利観が米国の金利観から独立して動き始めている可能性を示唆します。
リスク側で最も注意すべきは、翌営業日がSQ算出日かつお盆期間中だという点です。先物・オプションの決済に絡んだ需給で朝方の指数が実勢から離れやすく、しかも参加者が薄い。普段なら吸収される規模の売買が、大きな値動きを生む環境です。寄り付きの数字だけで相場観を変えないことが、この時期の実務的な自衛策になります。
そして、忘れてはならないのがVIXの低さです。14.55という8月最低水準は、市場が当面の不確実性を消化しきったことを意味すると同時に、予期せぬ悪材料に対する緩衝材がないことも意味します。CPIという最大の関門を通過した今、次の大きな材料は9月のFOMCです。それまでの約1カ月は、材料難のなかで需給とテクニカルが相場を動かす期間になりやすいでしょう。
最後に、いつもの確認です。本日、日経平均は1.16%、TOPIXは0.89%上昇しました。値上がり銘柄は全体の64.9%で、3営業日連続の改善です。ただし上げ幅の84%は5銘柄が作りました。「日経平均が784円上がった」という見出しと、あなたの資産が実際にどれだけ増えたかの間には、おそらく大きな開きがあります。指数の数字ではなく、自分の資産の実際の変動率で相場を測る。相場が3日続伸していても、この習慣は変わりません。
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